アスリートのためのメンタルコンディショニングQ&A【スポーツコーチングJapan監修】

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学生アスリートにとって、メンタルはトレーニングや栄養よりも取り組みが難しく、読者アンケートでも多くの悩みが寄せられます。そこで、どうすれば大切な試合で全力を発揮できるメンタルを作れるのか、スポーツコーチングのプロにアドバイスをして頂きました。

【浮き沈み】振り返りノートをつける

日頃の練習でやる気がる日と出ない日があります。試合でも気持ちが揺らいで浮き沈みがあります。どうしたらコントールできますか?

やる気が出る日と出ない日の違いは何かを探る。

A 練習で、やる気が出る日と出ない日の違いは何か。試合で、どんなときに気持ちが揺らぐのか、漠然としている問題を見極めて、具体化することが大切です。そのためにオススメしたいのが、振り返り(練習)ノートをつけることです。結果を出している選手や指導者の多くが、練習ノートをつけています。練習内容と一緒に、そのときの体調や気分、感情面も取り繕わずに書いてみましょう。

文字にすることで、日々のちょっとした変化や違和感を見出すきっかけになり、問題点が具体化します。その問題点を一つひとつ解決していけば、気持ちがコントロールできるようになります」(中村さん)

学生アスリート向け 振り返り[練習]ノート (スポーツコーチングJapan 監修)

書き方と記入例(野球部の練習)を参考にして、自分だけの練習ノートに役立てよう。

書き方 [各項目の説明]

練習前に、予め記入しておく項目

①記入日の日程+当日の項目をチェック
 試合・練習・ミーティングいずれかに丸を付け、その他の項目であれば  
 別途記  
入する(授業やセミナー、視察や見学などなんでもOK)。

②今日のゴール(その日に達成したいこと)を設定

③今日のメニュー・スケジュールを記入

練習後に、記入する項目

④今日のゴールに対する評価や振り返りを記入
 良かった点(GOOD)、反省点(BAD)、次への課題(NEXT)を書き
 出し、自己
分析や技術面の改善につなげます。

⑤メニュー・スケジュールでの気づきを記入
 取り組んだメニューに対してどうだったか、文字にすることで問題点が
 具体化され
ます。

⑥MEMO欄も活用
 その日の体調や気分、感情面なんでも取り繕わず自由に書くことで、
 ちょっとした
変化や違和感を見出すきっかけになります。

いきなり毎日全部を埋めようとするのは大変なので、まずは一つずつでも良いから続けることを意識する。習慣化できれば、中身の精度も上がるので、続けることを優先しよう。

【劣等感】自分の成長に目を向ける

チームの勝利が重要なのに、自分がスタメンに選ばれないと劣等感を抱いてしまいます。仲間の成功を素直に喜べません。

劣等感を抱くのは、常に他者と比較しているから。

A 「モチベーションの源泉は、重要性(自分が重要かどうか)、他者とのつながり、成長、貢献、変化、安心感の6つです。この6つのどれかが満たされていれば、たとえスタメンに選ばれなくてもモチベーションは維持できます。劣等感を抱くのは、常に他者と比較しているからです。他者のことは切り離して、自分の成長に目を向けてみましょう。

この場合の成長は、技術的なものでも精神的なものでも構いません。昨日の自分よりも成長できていると実感できれば、劣等感にとらわれずモチベーションは維持できます。そういう前向きな姿勢が仲間の理解を得られ、その結果チームの絆も強くなります」(藤森さん)

【自信がない】失敗は成長ととらえる

失敗したらどうしようと不安に思い、自信が持てません。落ち込みがちな精神面をどうすればいいでしょうか。

あらかじめ失敗を想定して、チーム環境を整える

A 「失敗をどう定義するかが重要です。失敗を失敗ではなく、成長ととらえてみてください。失敗をするからこそ気付きが生まれ、なぜ失敗したのかを振り返ることで、同じ失敗を繰り返さず成長できるのです。また、『失敗したらどうしよう』と思うのは、周りの目を気にしているからです。とくに団体競技の場合、その失敗に対してチームの選手たちがどう振る舞うかがポイントになります。

チーム内でも「失敗は成長」だということを周知徹底して、失敗したときは全員で振り返り、お互いが対話するようにしましょう。そもそも失敗は必ず起きるもの。あらかじめ失敗を想定して、チーム環境を整えることが大切です」(藤森さん)

【本番に弱い】あえて緊張する状況を練習で作る

とにかく本番に弱い。緊張して練習通りの実力が発揮できません。

切羽詰まった心理状態での練習を積み上げる。

A 「緊張するとなぜパフォーマンスが落ちるかというと、カラダがこわばるからです。そこで試合直前にオススメなのが、カラダのこわばりをとるために深い呼吸を行うことです。緊張すると呼吸が浅くなっているので、深呼吸をして呼吸を普段の状態に戻していきましょう。また、中長期的なサポートとしては、試合と同等に緊張するシチュエーションでの練習が効果的です。

野球で例えると、9回裏の攻撃、ツーアウト2・3塁、1点差で負けているという状況を設定して練習します。このように切羽詰まった心理状態での練習を積み上げていくと、本番で緊張することがなくなります」(中村さん)

【プレッシャー】勝つこと以外の意義を見つける

絶対に勝つというプレッシャーが強く、勝敗の結果が大きなストレスになることがあります。

勝つこと以外の目標を掲げる。

A 「勝利至上主義だと、負けた時点でモチベーションが下がってしまいます。優勝するのは1チーム、もしくは1人です。ほとんどのチーム(人)が負けるという前提で考え、勝つこと以外に意義を見つけると勝敗のストレスから解放されます。例えば、勝利という目標以外に「全力で戦う」という目標を掲げたとします。残念ながら1回戦で負けたとしても、全力で戦えたなら目標達成と考えればいいのです。

また、試合までの過程を言語化したり、「見える化」することもオススメです。自分の努力が明確になり、試合までの時間が有意義だったことに気付き、ポジティブになれます」(藤森さん)


藤森 啓介さん
プロラグビーコーチ。東京都立大学ラグビー部ヘッドコーチ。コーチとして早稲田大学ラグビー蹴球部で大学選手権優勝。その後、教員として素人7割の選手を率いて激戦区大阪府花園予選で準優勝。2019 年、国際基督教大学ラグビー部のコーチとして5年ぶりの公式戦勝利と入替戦へ導く。2020年から東京都立大学ラグビー部ヘッドコーチ。コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapan に所属。共著に「考えて強くなるラグビーのトレーニング」

中村 亘さん
一般社団法人スポーツコーチングJapan 理事。国家資格キャリアコンサルタント。2011年東京農業大学( 体育会硬式野球部) 卒業後、株式会社丸井グループへ入社。 2018 年、「国家資格 キャリアコンサルタント」を取得し退社。独立後はSCJ へ加入し、2019 年10月に理事へ就任。 スポーツコーチング×キャリアについて研究し、プログラム開発や講演なども行っている。

※2021年10月15日発行「アスリート・ビジョン#23」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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