心の準備で本番に勝つ!メンタル向上術【メンタルのプロに聞いた】

心の準備で本番に勝つ!メンタル向上術

試合期に入り、普段以上に緊張感が高まっている人は多いと思います。この時期の心のセルフマネジメントのカギは「緊張」と「リラックス」のコントロール。本番での実力発揮のために、限りある時間で効率よく準備する方法を、日本代表やプロチームでメンタルトレーニング指導に携わる土屋裕睦さんに聞きました。

準備期間

・不安はそのままにせず、可視化して対処する
・フロー状態を作るための目標設定をする

不安を書き出す

緊張を感じると人はネガティブになりがちです。ネガティブ思考の中で最も代表的なものは「不安」であり、不安は対象がわからない漠然とした感情です。一方で、対象が具体的になったネガティブ感情は「恐れ」といい、恐れの場合は具体的な対処が可能。つまり、「不安を恐れに変える」ことが重要なのです。準備期間にすべきことは、不安の対象を具体的に書き出すこと。ただ箇条書きにするのでも、マインドマップなどの手法を使うのでもいいので、不安を見える化することで対処可能なものに変え、それぞれに対処方法を考えておきましょう。

ネガティブをポジティブに変えるワーク

チームでできる「ネガティブをポジティブに変える練習」の一つに、「解決!○○さん」というワークがあります。チームで1人解決役を決め、「○○さん大変です、●●してしまいました」と不安の種になることを言い、解決役はそれに対して「ちょうどいい、それならこうしよう」とポジティブに解決できる言葉をかけます。解決策が出たら周りが「さすが○○さん」と声をかけて締めます。これはJAPANの合宿でも行っているワーク。遊び心を持って行うことで、楽しい時間になるとともに、他のメンバーのアイデアから学びや気づきを得ることもできます。

COLUMN:
夢中で楽しむフロー状態

競技に集中し没入するフロー状態は特別なおまじないで入るのではなく、適切な難易度と、それに応じたスキルレベルの2つが揃うことが条件。スキルと難易度が偏っていると、不安や退屈を感じてしまいます。結果目標だけでなく「どう勝つか、どういうプレーをするか」のパフォーマンス目標を設定し、難易度を最適化してフローを生み出そう。

試合直前

・受動的リラックスで、集中力を高める
・姿勢を整え、呼吸を整え、心を整える

本番前のリラクセーション

緊張したとき、「落ち着け」と自分に言い聞かせながら深呼吸をしても、なかなか効果がでないことも。そこで有効なのが「漸進的筋弛緩法」と「呼吸法」を組み合わせたリラクセーション。手をぎゅっと握ってゆるめる、肩に力を入れてふっと抜く、息を吸って少し止め、長めに吐くといったことを繰り返します。能動的に「リラックスしよう」と思うのではなく、受動的に「今リラックスしているな」と感じることが重要です。弛緩させた部位に注意を向けることで、集中力も高まります。また、身体感覚が鋭敏になる、イメージを描きやすくなるといった効果もあります。

本番直前に集中力を高めるサイキングアップ

緊張したとき、「落ち着け」と自分に言い聞かせながら深呼吸をしても、なかなか効果がでないことも。そこで有効なのが「漸進的筋弛緩法」と「呼吸法」を組み合わせたリラクセーション。手をぎゅっと握ってゆるめる、肩に力を入れてふっと抜く、息を吸って少し止め、長めに吐くといったことを繰り返します。能動的に「リラックスしよう」と思うのではなく、受動的に「今リラックスしているな」と感じることが重要です。弛緩させた部位に注意を向けることで、集中力も高まります。また、身体感覚が鋭敏になる、イメージを描きやすくなるといった効果もあります。

試合中

・ドキドキをワクワクに変えて楽しむ
・視線を落ち着かせ、集中し直す

心が揺らいだとき「フォーカルポイント」を見る

試合中は緊張を味方にして楽しむことが大切です。ミスをしてしまったとき、冷静さを失ったときなど、心が揺らいだときには「視線」のコントロールが気持ちの切り替えに効果的。人は落ち着きをなくすと視線がキョロキョロと動きます。試合会場にある日の丸国旗を見る、ボールの縫い目を見るといった具合に「フォーカルポイント」を決めておき、集中が乱れたときには視線から集中し直しましょう。

COLUMN:
緊張は悪いものではない

「緊張は悪いもの、ないほうがいいもの」と考えている人が多くいるかもしれませんが、実は緊張は高いパフォーマンスを発揮するために、適度に必要なものです。「いかに緊張を味方につけるか」と考えると良いでしょう。大事なのは緊張の度合いです。緊張しすぎてパフォーマンスが落ちてしまう状態が「あがり」、逆に緊張が足りずパフォーマンスが出ない状態が「さがり」です。その間にあるちょうどよい緊張状態に、リラクセーションやサイキングアップで調整しましょう。高い緊張状態は、「クラッチ」と言われる非常によいパフォーマンスを生み出すこともあります。緊張を楽しみましょう。

土屋裕睦さん
大阪体育大学大学院教授、博士(体育科学)、スポーツメンタルトレーニング上級指導士、公認心理師。日本スポーツ心理学会理事長。日本代表チームやプロスポーツチームにてメンタルトレーニング指導に携わる。剣道七段。

※2023年10月16日発行「アスリート・ビジョン#31」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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