大切な試合で実力を発揮し、勝利するために日頃からどんなことを意識し、どのようなメンタル状態を作り上げていったらよいのでしょうか。数多くのトップアスリートをサポートしているスポーツメンタルコーチの柘植陽一郎さんにアドバイスをしていただきました。
本番に挑むために日々心を整える
1.競技生活に影響を与えるメンタルの役割
充実した競技生活を送るために重要なのは、アスリートの前に一人の人間として、人生の質を向上させることです。自分は何のためにスポーツをしているのか、モチベーションや目標設定、プランニングを明確にすることで練習の質が高まります。
“メンタル”というと瞬間的な意識のコントロールをイメージされるかもしれませんが、競技力の向上から人生の質の向上まで、あらゆる面において影響を与えているものです。素敵な未来を見据えた目標設定とプランニングを心がけてください。
また、心の状態をコントロールできるとブレない、動じないメンタルが養われ、本番で実力を発揮できることにもつながります。
2.メンタルの強さとは自分との対話の質の高さ
“メンタルが強い”とはどういうことを指すのでしょうか。それは自分との対話の質が高いことを示します。メンタルを強くするための自分との対話に必要なのが、3つの問いかけです。
日常でも試合本番でもコントロールが不可能なものにとらわれるのではなく、利用できるものを最大限活かすことができる意識状態を目指してみましょう。「①状況把握、②目的認識、③自分ができること」を意識して、自分との対話の質を高め、競技力の向上につなげます。
自分への3つの問いかけ
②本当はどうなっていきたいのかを確認する
③自分ができることは何なのかを考える
3.成長を加速させる成長サイクル
試合や練習でチャレンジをして結果が出たとき、振り返りのなかで良かったことや改善点などに気づくことで、あらたな課題やテーマを得ることができます。それがさらなるチャレンジにつながり、成長を加速させるのです。この成長のサイクルを回す上で、なかには自分だけでは気づかないこともあるため、チームメイトと振り返りをしたり、モチベーションを高め合うなど、他者とのコミュニケーションも大切に。眉間にシワを寄せて「反省」するよりも、素敵な未来をイメージしながら「振り返り」をしてみてください。
「うまくいっているか、いないか」の二択だと、「うまくいっていない」にフォーカスを当てがちです。そんなときは、スケーリングで自分を客観的に振り返ってみましょう。たとえば、運動、休養、食事とそれぞれ、自分のパフォーマンスを10点満点で評価してみてください。そこから、できたことや良かったことを挙げてみましょう。さらに、どうすれば1点、2点、点数を上げられるか考えます。そうすることで、今の状態に気づいた上で、次にどんな行動をすればよいのか、具体的にイメージできます。常に100%の理想の自分ではなくても、今の自分からプラス1点できればいいのです。
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「メンタルコーチングのはじめの一歩。」
https://ath-v.com/2021-06-mental/
スポーツメンタルコーチ、一般社団法人フィールド・フロー代表。専門はメンタル、コミュニケーション、チームビルディング。日本と韓国でスポーツメンタルコーチ養成講座を開講し、卒業生は国内外で活躍している。著書に『最強の選手・チームを育てるスポーツメンタルコーチング』、『成長のための答えは、選手の中にある』(共に洋泉社)
※2022年4月15日発行「アスリート・ビジョン#25」掲載/この記事は取材時点での情報です。