部活も、勉強も、学生生活も!充実した競技生活を送るには【スポーツメンタルのプロに聞いた!】

競技のみならず、競技以外の生活も重視することが求められる学生アスリート。新シーズンに入り「競技だけでなくなぜ学業も大切なのか」「両立させるためにどうすればいいのか」など悩みを抱える人も多いはずです。競技と競技以外の生活もうまく重ね合わせ、より充実した日々をデザインして行きましょう。

学業に励む意味と目的

高校までの学びで得た知識をもとに、大学での学びのなかで本格的に知識や教養を深め、さらには他者との会話や世間に触れ、学生は心身や人格を磨き上げていきます。とくに、大学は社会に出る準備をする場所でもあります。学生アスリートはプロやトップアスリートへの通過点として高みを目指し、努力していくでしょう。

しかしながら、それだけを目的にすると、得られるものは限定的になってしまいます。大学4年間で得られる価値は、競技力の向上だけではありません。それ以外の可能性にも目を向け、向き合っていくことで相乗効果が生まれ、人間的な成長につながるのです。そのことが、ひいては競技力の向上をもたらしてくれます。

スポーツ・ライフ・バランスの大切さ。
「文武不岐」で競技も学業も大切に。

「スポーツ・ライフ・バランス」とは、競技と競技以外の生活とのバランスのことを指していて、アスリートの競技以外の生活側面に焦点を当てる考え方です。競技と学業、競技と仕事など、デュアルキャリアを実現することを目指するものと言えるでしょう。この「スポーツ・ライフ・バランス」こそ、学生アスリートが目指すべき文武不岐。競技に取り組む中で積んだ経験を競技以外にも活かし、競技以外の生活で体験したことを競技にも活かすこの考え方を体現してみてください。

文武不岐って?

「文武両道」というと、学業と競技を別々にがんばることをイメージし「私にはそんな難しいことはできない」と思う方もいるかもしれません。しかし、「文武不岐」は学業と競技はつながっていて、学業が競技に、競技が学業に活かせることが多々あるという考え方です。競技者としてのキャリアを終えた後も見据え、文武不岐で人間力を高めていきましょう。

『味方』と『味方』を増やす

学生アスリートを取り巻くアントラージュと
メンター「味方」の重要性

指導者やスタッフ、部員、友人、家族などアスリートを取り巻く「アントラージュ(関係者)」。競技環境を整備し、パフォーマンスを最大限に発揮できるようにサポートしてくれる味方の存在は、アスリートにとって欠かすことができません。さらに、アントラージュの一つである「メンター(助言者)」の存在も重要です。

メンターを見つけよう!

部の指導者や先輩ではなく、例えば在籍している学部の先輩や教授、他の部の指導者、家族、部活動とは関係のない友人との交流や彼らからの声がけは、一人の人間として成長を促してくれます。このような存在を見つけられるかどうかが、競技とそれ以外の生活のバランスを取るポイントになってきます。

別の視点から物事を知り、「見方」を増やす

みなさんは今、学生アスリートとして競技に励んでいますが、仮にアントラージュの立場になって自分を評価してみたり、自分のことを様々な観点から振り返るなど、他者の視点で自分を観察してみましょう。自分自身でさえも知らなかった新たな自分の気づきにつながります。

学生アスリートのお悩み解決のヒント

学業と競技、アルバイトの両立は難しいでしょうか?
いきなり正解にたどり着こうとするのではなく、まずはそれが出来ている人、それを経験した人を部内外で探し、相談してみましょう。とくに1年生は環境も変わり、慣れるまでに時間が必要です。どれかに偏ることなくバランスを取ることも技術。少しずつやり方を身につけて行きましょう。
学業と競技、どちらかにしか集中できないときはどうるのが良い?
たとえば、勉強するときは少し強引にでもそういう状況に身を置いてみる。大学構内の図書館やカフェに行き、環境を変えて、スイッチの切り替えができる場所をみつけておくとよいかもしれません。
睡眠時間をきちんと確保できません。
朝練習を実施している部も多く、多くの学生が悩んでいる問題かもしれません。睡眠に限らずですが、すべて100%でやろうとするとどうしても疲れてしまう。ときには「ここは50%でもいいかな」と少し力を抜く場面を作ってみてください。

 

荒井 弘和 さん
法政大学文学部心理学科教授。博士(人間科学)。スポーツメンタルトレーニング上級指導士。専門はスポーツ心理学。日本スケート連盟(フィギュア)強化サポートスタッフ。著書『グットコーチになるためのココロエ』(共編、培風館)、『アスリートのメンタルは強いのか?』(編書、晶文社)など。

※2023年4月15日発行「アスリート・ビジョン#29」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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