どんなスポーツをやるにしても、パフォーマンスやポテンシャルを引き出すために必要なカラダの動きがあります。効率的にカラダを鍛えられるトレーニングを帝京平成大学の西山朋さんに紹介してもらいます。
第6回 垂直方向への力発揮
~跳ぶためのビルドアップトレーニング~
スポーツで力を発揮するときには、自分の体重を地面に伝えて、そこから反動を利用する必要があります。中でもジャンプなどの垂直方向への力発揮は、重力方向と合致するため、地面の反動利用する動作の最も基礎となります。その垂直方向のカラダの使い方の応用が、前方向や横方向、ねじる動作にもつながっていきます。今回の“跳ぶ”動作を切り分けたトレーニングで、効率的な跳ぶ(垂直方向)の動作を習得していきましょう。
【跳ぶためのビルドアップトレーニング】
競技場面でのトレーニング効果の一例
☑跳躍のパフォーマンスアップ
☑跳躍のための筋力向上
☑跳躍時のボディーバランス向上
☑スプリントなどのスタート
☑対人競技での方向転換能力の向上
☑コンタクトプレーでの強さ
MENU01
フロントブリッジ・ソウ
[回数目安:20回×2~3セット]
肘は肩の真下につき、肩幅より少し広いくらいで、足は肩幅くらいに開きます。このフロントブリッジの姿勢がスタートポジション。頭から踵まで一直線になるようにしましょう。
フロントブリッジの姿勢からつま先を上げるような感じで踵を下ろして、そこから蹴るようにして頭方向へ水平に全身をスライドします。上半身は使わず、足首の動きでカラダを動かします。動かすときも頭から踵までが一直線となった、スタートポジションと同じカラダのラインは保つようにします。
NG
お尻が上がる、お腹が下がる
ありがちなNGはスタートポジションの姿勢が崩れてしまうこと。お尻が上がったり、お腹が下がったりしまうと、垂直方向への力発揮につながりません。
ポイント
MENU02
ドロップスクワット
[回数目安:15回×2~3セット]
足は肩幅より少し広めにして立ち、手を真っすぐ上げて背伸びするような状態がスタートポジション。そこから重力を利用して姿勢を落としながら手をふり下ろしてピタッと止めます。ストップ姿勢は地面に力を伝えて、跳ね返す瞬間の形をつくったところ。ここから次の動作につながってくるので、狙った方向に(=ここでは垂直方向)に力を発揮できる姿勢で終わることが目的となります。股関節で力を溜めこんで、切り返す準備ができていることが大事です。
NG
膝が内側に入る、上体が前に傾く
止まったときに、膝の向きがねじれてしまっていたり、上体が前に傾いてしまったりすると、次の力を発揮できなくなる原因の一つとなり、ケガのリスクにもなるのでNGです。重力方向に溜めた力を発揮するために、重心は真下に移動するようにしましょう。
バリエーション
ドロップスクワット(スプリットスタンス)
[回数目安:15回×2~3セット]
実際のスポーツでは片足スタートという状況が多くあるので、足を前後にすることで、片方の脚でしっかりローディングできるようにします。足を前後するときは、前に足を出すというよりは、後ろ足を引く感じにすると良いでしょう。
ポイント
MENU03
ボックス・ニーアップ
[回数目安:左右10~15回]
踏み台の高さは筋力によりますが、台に足を乗せたときに膝の角度が90度くらいになる高さが目安になります。あくまでも出力する感覚を覚えることが目的なので、下肢の筋力が弱い人は低くしても構いません。乗せた脚の力を使って真上に上がっていくようにします。イスを代用する場合は安定感のあるものを使用してください。また、台がない場合は階段でも応用することができます。
バリエーション
レッグランジ + ニーアップ
[回数目安:左右10~15回]
溜めた力を解放する動きをアンローディングと言います。ボックス・ニーアップとバリエーションのレッグランジ + ニーアップはどちらもアンローディングになります。スタートポジションがローディングの姿勢になっているので、そこから真上に一気に力を伝えることを意識しておこないましょう。
ポイント
MENU01では、跳躍時の体幹固定向上のため、体幹の固定力を鍛えます。MENU02で出力するために必要なローディングで地面に力を伝えて跳ね返す形をつくります。そしてMENU03で溜めた力を出力につなげていくアンローディングという流れで、垂直方向への力発揮を身につけていきましょう。
トレーナーからのアドバイス
重力と反対方向という一番負荷がかかる垂直方向へ、しっかり力を発揮することができれば、前方向や横方向と、よりスポーツの場面に必要な力発揮にもつながってきます。今回紹介した垂直方向への力発揮に続いて、次回は走る動作につながる前方向への力発揮のトレーニングを紹介します。