カラダづくりの根幹となる食事を改善。コンディショニングのための食習慣を身につけよう!【栄養のプロに聞いた】

アスリートのパフォーマンスに直結する「食事」。一般の人よりも運動量が多いアスリートは、コンディションやトレーニング内容を考慮しながら、自分に見合った栄養やエネルギーを摂る必要があります。そこで、無理なく続けられるコンディショニングのための食習慣を管理栄養士の柴崎真木さんとみていきます。

栄養摂取だけじゃない!コンディショニングにおける食事の重要性とは

「健康で丈夫なカラダがベース」健康管理に対する意識

一般的に「適度な運動は健康にいい」と言われますが、アスリートの場合、運動量が適度な水準を超えていて、むしろカラダの状態が変わりやすい傾向があります。そのため「風邪をひきやすい」「免疫力が低下しやすい」状況にあり、一般の人よりも注意することが必要。だからこそ、競技を続けるために、食事で健康で丈夫なカラダをつくっていきましょう。

「一般の人とはどう違う?」アスリートにとっての食事の役割

カラダが資本であるアスリートにとって、「食事」はとても重要な役割を担っています。日々の食事がパフォーマンスに直結することはいうまでもありません。さらに、食事の質によって「運動(トレーニング)」や「休養(睡眠)」の質も左右されます。とはいえ、ただ単に「栄養摂取」だけすれば良いというものでもありません。「あれを食べなきゃ」「これは食べてはいけない」など食事がストレスになっては 本末転倒です。「食べる楽しみ」を大切にし、「食材のおいしさを味わうこと」はメンタル面も含めたコンディショニングにつながります。

学生アスリートの食事 きほんのき

「バランスのいい食事」とは?

「バランスのいい食事がどういうものか」がよく分からない学生アスリートも少なくはないでしょう。一般的にバランスのいい食事の理想形として「一汁三菜」があげられますが、この理想形を毎日準備するのは、とても大変なこと。そこで、「どんな食品を食べるのか(栄養)」、「自分の適正量はどれくらいなのか(エネルギー)」の2つの軸でバランスを整えていきます。

1食で自分に見合ったエネルギーや栄養素を補うことは難しいので、1日単位で「栄養」と「エネルギー」のバランスを整えることも、重要なポイントです。

アスリートの場合、トレーニングや運動量によってエネルギーや栄養素の必要量が日々変動するため、必然的に食べる食事量も調整しなくてはなりません。必要なエネルギー適正量は、体質や運動量により人それぞれ。そのため、エネルギーのバランスがとれているかは、体重変動で確認し、エネルギー量を検討していきましょう。

アスリート・ビジョン#25より抜粋掲載

栄養バランスのポイント

基本は「主食・主菜・副菜・汁物・果物・乳製品」が揃った食事ですが、毎食必ずこの6皿が揃っている必要はありません。料理の品数は少なくても、組み合わせで品目数を多く食べることを心がけて。

エネルギーバランスのポイント

栄養素にこだわりすぎて、あれもこれもと食べようとするとエネルギー量がオーバーし、体重が増えてしまうことも。毎朝、決まった時間に体重を測定し日々チェック。

アスリートにとって三食+補食の役割は?

カラダづくりに欠かせない食事は、トレーニングの質と量に見合った内容でなければなりません。ただ、一度の食事で食べられる量には限度があり、カラダが一度に吸収できる量にも限りがあります。そのため、朝昼夕の「三食」で、必要なエネルギーと栄養を摂取します。活動量に応じて、三食で摂りきれない分は「補食」で補います。消費エネルギーが多いアスリートこそ「補食」をうまく活用するなど、効率よく吸収できる食事を考える必要があります。

食事や栄養管理に必要な習慣は?

まずは、規則正しく食事をすることです。学生アスリートは学業に加え、朝夕の練習などで日々のスケジュールが不規則になりがちです。一般的にいわれる理想の食事時間どおりに食事を摂るのが難しくても、自分の生活に合った規則的なペースで食事することを心がけてください。そして、バランスのよい食事を習慣化するために、5大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)+α(抗酸化成分)を1日の食事でまんべんなく摂るよう心がけていきましょう。

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今すぐできる!コンディショニングのための食習慣

アスリート・ビジョン#25より抜粋掲載

Routine 三食をきちんと食べる

まずは何を食べるかよりも、一食抜いたりせず朝昼夕をきちんと食べること。欠食するとカラダの代謝や筋合成のリズムが崩れてしまいます。特に朝食は、カラダを目覚めさせるスイッチであり、夜の熟睡につながる睡眠のスイッチでもあります。朝食を食べない人は、バナナやヨーグルトなどの食べやすいものから始めるなど、まずは朝食を食べる習慣から身につけていきましょう。

Routine 具沢山なものを選ぶ

必要な栄養素を網羅するには「定食型」の食事がオススメです。一汁三菜を用意するのが難しいときは、1品ごとの食品を具沢山にすれば、一汁三菜でなくても、いろいろな栄養素が摂れるようになります。たとえば、パスタを作る時は、入れる具材を増やしてみたり、お弁当やお惣菜を買うときも具沢山のものを選ぶようにしましょう。

Routine 時間をかけてよく噛んで食べる

どんなに栄養価の高いものを食べても、噛まないで飲み込むように食べてしまっては、体内でうまく消化・吸収されません。固形物をよく噛んで食べることで消化が促されるだけでなく、腸内環境が乱れにくくなり、免疫機能の維持にもつながります。また、よく噛むことで満足感が得られ、ストレスが軽減されるともいわれています。普段の食事から時間をかけて、よく噛むことを習慣にしていきましょう。

Routine 自分のカラダと客観的に向き合う

食事や栄養素だけではなく、自分のカラダの状態にも敏感になってください。たとえば、その時のコンディションを10段階で評価してみると、「今日は調子がいいな」「なんだかエネルギーが切れてきたな」など細かく感じ取ることができます。自分のカラダと客観的に向き合う習慣を身につけ、日々の食事内容につなげていくことが大切です。

学生アスリートの食生活あるある

CASE 1 夜遅く食べることが多い。

夜は睡眠の質を確保することを最優先にするため、内臓の負担になる食べ物(消化に時間のかかる脂質や動物性たんぱく質など)はできるだけ避けるようにしましょう。たとえば、運動後に摂りたいたんぱく質は豆腐や納豆などの植物性たんぱく質に置き換えるなど工夫するといいでしょう。夜遅くなる場合の食事は腹八分目までとし、その分を朝食と昼食で補うことを意識することも大切です。

CASE 2 外食が多く、栄養が偏ってしまう。

外食が多くなると、食材のバリエーションが少なくなり、脂質の量が多くなりがちに。なるべく具材が多く使われたメニューや脂質の少なめなものを選ぶ工夫を。メニュー表にカロリーを記載しているお店も増えていますので有効活用できるでしょう。外食では特に緑黄色野菜が不足しがち。難しいときは野菜ジュースなどその料理に含まれていない食材で、意識的に追加してください。

CASE 3 栄養が不足していないか心配。

自炊する際、摂りにくい食材の1つが魚類です。そこで、サバ缶や鮭缶などの缶詰の活用がオススメです。缶詰であれば、下処理や味付けされているものも多くあるので手間いらず。いろいろな食材と合わせやすいです。 卵・納豆・キムチ・乳製品は冷蔵庫に常備しておきたい食材。他にもカット野菜や冷凍野菜は不足しやすいビタミンやミネラルなどを手軽に補う食材として重宝します。

柴崎真木さん(管理栄養士)柴崎真木さん【管理栄養士】
アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。

※2022年4月15日発行「アスリート・ビジョン#25」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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