オフが明け、新たなシーズンに向けてカラダを仕上げていく「準備期」。この間に土台づくりをしっかり行ってこそ、怒涛の試合期を戦い抜くことができます。トレーニングや基礎練習と併せて食事や生活習慣を整えることで、動けるカラダとブレないコンディションを手に入れましょう!
➤食事と生活習慣から勝てるカラダをつくる「準備期」の過ごし方①
タイプ別!食事・栄養診断
学生アスリートの“お悩み”や“あるある”に栄養のプロがアドバイス
カラダづくりを頑張っているのに結果が出ない…ということはありませんか? 学生アスリートのお悩みとして特に多い3つのケースを例に、管理栄養士が実践的なアドバイスを送ります!
「筋肉量を増やしてカラダを大きくしたい!」

☑なかなかカラダに変化が見えない

体重は、消費エネルギー量よりも、摂取エネルギー量が多ければ増えます。なかなか体重が増えないのは、自分では食べているつもりでも活動量からみた摂取量が足りていないせいかもしれません。例えば、お昼に高カロリーなものを食べても、朝食を抜いていれば、結果として1日に必要なエネルギーと栄養素が不足してしまいます。

食事の回数が決まっていない、欠食があるという人は、まずは1日3食を欠かさずに取るように心がけましょう。さらに補食もうまく活用しながらエネルギーの収支がプラスになるよう調整します。高カロリーなものを無理に食べるよりも、いろんな種類のものをちょこちょこ食べることで、必要なエネルギー量と栄養を補うことができ、効率的な増量を目指せます。

「すぐに疲れるのでスタミナを強化したい!」

☑朝からだるくて、動きだすまで時間がかかる

運動時にすぐ疲れる場合、活動するために必要なエネルギーを十分に摂れていないかもしれません。食事制限などで炭水化物を減らしている人は特に注意! 活動量に見合ったエネルギーを確保するためにも、まずは主食である炭水化物をしっかり食べることが重要です。
さらに、エネルギーが足りないまま運動すると、カラダの中のタンパク質が消費されることで疲れを感じやすくなります。そのため、練習前におにぎりやサンドイッチなどの補食を摂ることもバテ対策として有効です。
一方で、慢性的に疲労感がある、朝起きられなくて日中も眠い、冷え性などの症状がある人は貧血の可能性もあります。

血液をつくるためには、鉄とたんぱく質が必要です。サプリメントだけで全てを補うのは難しいため、牛肉やレバー、サバなどを積極的に食べるようにしましょう。

「オフ中に増えた体重を落としたい」

☑食事制限の反動で暴飲暴食をしてしまう

食事量よりも、効率的にカロリーを減らす工夫を。脂質が多い揚げ物や、ジュースやお菓子などの甘い物、余分なものからカットするのが基本。食事量を減らし過ぎると、カラダに必要なたんぱく質やビタミン・ミネラルまで不足し、コンディション悪化につながるので要注意!
さらに、減量時の落とし穴が「ちょこちょこ食べ」。空腹時にチョコやグミなどをつい口に入れていませんか? 低カロリーな食事でもひれ肉や野菜など噛み応えのあるものをしっかり食べることで満足感が得られ「ちょこちょこ食べ」防止につながります。
また、減量は計画性が大事。1週間に体重の1%以上(例:50kg の場合は0.5kg 以上)落とすとカラダに負荷がかかります。即効性を求めるのではなく、試合期から逆算して少しずつ理想の体組成に近づける意識を。たとえば、週に1回、量を決めて好きなものを食べる「ご褒美day」をつくるなど、ストレスを溜めずに続ける工夫をしましょう。
COLUMN:女性アスリートと減量
女性アスリートは特に、摂取エネルギーを極端に減らしてカラダに負担がかかると、様々な不調が表れやすくなります。1日に必要なエネルギー量より1,000kcal 以上減らすようなハードな減量を繰り返すと、カラダが「エネルギー不足」と認識して省エネモードにスイッチ。その結果、基礎代謝が下がって痩せにくい体質になってしまうのです。食事を減らしても痩せない人は、一度、管理栄養士に相談して減量計画を見直す必要があります。
また、エネルギー不足や過度なストレスは月経が止まる原因にも。無月経になると、骨の代謝に関係する「エストロゲン」という女性ホルモンが減少し、骨粗しょう症や疲労骨折の発症リスクが高まります。無月経や、ひどい月経痛・PMSなどがある場合は早めに婦人科に相談を。原因や症状は個人差もあるため、専門家に頼ることが解決の近道になります。


アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。
※2025年1月15日発行「アスリート・ビジョン#36」掲載/この記事は取材時点での情報です。