チームで個人で臨む モチベーション維持と高め方【メンタルのプロに聞いた】

新チームが発足し活動がスタート。選手個人やチームの目標を達成するためのモチベーションが高い今の時期から、いかにそれを持続させていくか、動機づけと目標設定、チームづくりのポイントをスポーツメンタルコーチの鈴木颯人さんに聞きました。

持続するモチベーションの原理

アスリートにおいて、モチベーションはパフォーマンスにも大きな影響を与えます。人が何か行動を起こすために、あるいは目標に向かって持続させるために必要なモチベーション。心理学の世界ではモチベーションのことを「動機づけ」と呼びます。モチベーションの維持が難しい人は、大抵の場合「コーチや監督など周りから言われ て」「環境的に仕方なく」気持ちを高めている傾向にあります。そういった外発的動機づけが強くなると長続きしません。

一方、内発的動機づけはスポーツが好き、楽しさ、好奇心が基となっているので、活動自体に価値を見出し、ねばり強く頑張れる継続性にもつながっていきます。

モチベーションの仕組み

「魅力」と「できる」の掛け算

日々の練習にうまく取り組めないときは、自分のスキルが低いのに挑戦レベルが高すぎる場合、逆に自分のスキルが高いのに課題が低すぎる場合がある。挑戦レベルとスキルレベルのちょうどいい具合を探り狙っていこう!

「できそうで、できない」がちょうどいい

競技中に感じた印象からでも、スキルと挑戦のレベルを知ることができる。不安ならスキルが足りないのに挑戦レベルが高い。リラックスしているならスキルは十分だが、挑戦レベルが低いかもしれない。「できそうで、できない!」くらいのレベルを狙っていきたい。フローに入るレベルを見極めよう。

モチベーションを高める方法

WORK①競技を始めたきっかけを思い出す

外発的動機が強く不安定なときは、「どんなところに競技の魅力があるのか?「競技を始めたきっかけは?」など振り返り、自分の原点にある想いや記憶の蘇りから内発的動機を高めることでメンタルも安定します。

競技を始めた昔の場所に行ってみる。足を運べないときは当時の写真を見るのも効果的

WORK②目指す理想の姿「ビジョンボード」を作る

なりたい自分のイメージ写真やイラストを集めてボードに貼っていく。いつでも見れる場所に掲示しておけば、自分のしたいこと目標などが常にイメージしやすくなります。チームで取り組めば指導者も選手の目指す景色を共有できるメリットもありオススメ。

自分が目指している選手のプレーや表彰式の写真。過去の思い出や寄せ書き、手紙なども◎

チームで取り組むメンタルケア

上級生がリードして“ チームの価値観”を明確にする

新チームでの活動が本格化する春シーズン。個人の価値観で行動してチームが空中分解しないよう、「チームがどこを目指しているのか」「チームに求められる行動指針は何なのか」指導者や上級生が中心になりチームの価値観を明確にしておきたい。また、適宜アップデートすることも大切です。


メンバーが忘れないように、大事な試合前や1~2カ月に1回程度のペースで
チームで振り返ると◎。

環境移行期の新入生は いち早く “ 暗黙の了解”を知る

新1年生は、何よりも新しい環境に慣れることが先決。例えば、10時からミーティングがある場合、その10分前に集合するのがチームのルールだった、など。そういったチームの“暗黙の了解”を早く理解しておくことは後々のメンタルにいい影響をもたらす。そこで鍵になるのがコミュニケーション。特にこれから人間関係を形成していく1年生にとっては難しい部分だが、同じ高校出身の先輩や、コミュニケーション上手な先輩など話しやすい人に聞くと良いでしょう。

1日1個、 “ 小さな”成功、感謝、幸せを書き出す

1日1つ、手帳やノートに小さな成功、感謝、幸せを書き出してみましょう。翌日は同じことは書けないのがルール。日々の練習ノートにダメ出しばかり書いてしまう人は、求める成功レベルが高く、小さなことですら満足できていない傾向にあります。日々の小さな成功体験で確実に前に進んでいる感覚を自分に認識させることで自己効力感も高まります。

今の目標にプラスして
結果にふさわしいメンタルを考えよう

目標設定に具体的な数値目標は大切ですが、それに一喜一憂してばかりでも心が安定しません。数値的な目標を立てたら、「目標を達成している自分はどんなメンタルを持っているのか」も考えてみてください。うまく行かなくてイライラしたり、ネガティブな感情になったときはそのメンタルを思い出してみてください。結果とともに目指すメンタルも達成できたか振り返ることは、成長するための足がかりなるはずです。
鈴木颯人さん
Re-Departure 合同会社代表。「心から競技を楽しめる人を増やすこと」を信条に言葉を大切にするスポーツメンタルコーチとして活動中。教え子には世界大会優勝、プロ野球ドラフト会議指名、オリピック出場選手も。『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(KADOKAWA)など著書多数。

※2024年4月15日発行「アスリート・ビジョン#33」掲載/この記事は取材時点での情報です。

併せて読みたい!
個人で、チームで強くなる!課題解決のための目標設定

最新情報をチェックしよう!