早稲田大学・前田凌吾選手 “うまくなりたい”向上心と“プロセス”を大切に チームを動かす司令塔の挑戦! 失敗を経験するからこそ目指すべき方向性もわかる【バレーボール】

高校時代にはインターハイ第3 位、春高バレーではベスト4の結果を残し、強豪・早稲田大学へ進学した前田凌吾選手。1年時からレギュラーセッターとして活躍しながらも、思うようなプレーが出来ず「負のループにハマっていた時期もあった」といいます。それでも地道なトレーニングの積み重ねや試合に出続けたこと、また、先輩、同級生など周囲の仲間のおかげで少しずつ自信が持てるようになりました。チームの司令塔である前田選手の強さはどこにあるのか、お話を伺いました。

前田凌吾選手のプロフィール

早稲田大学 バレーボール部 前田凌吾

まえだ・りょうご 2003年5月27日大阪府生まれ。ポジションはセッター。小学1年生でバレーボールを始める。中学時代はパンサーズジュニアに在籍し、全日本中学選抜にも選出される。清風高校1年時からレギュラーに抜擢。インターハイ第3位や春高バレーベスト4の経験も。U20日本代表としても活躍。3年生となる今季は早稲田大学バレーボール部の副将を務める。

理論に基づいたトレーニングを
学びたいと早稲田大学へ進学

高校時代のエピソード

―前田選手は高校時代に春高バレーにも出場して活躍していますが、学生時代にご自身のなかでターニングポイントになったと感じる出来事はありますか。
「目標が高くなったきっかけは、中学時代、全国で12人しか選ばれない全日本中学選抜に選ばれて海外遠征に行ったことです。まわりはすごい選手ばかりで、“自分も頑張らないと”と強く感じるようになりました。高校時代の恩師、山口(誠)先生との出会いも大きかったですね。山口先生は現役時代に日本代表として世界と戦っていた経験もあり、いろいろと話してくれ、いつも僕らの目線に立って話を聞いてくれました。高校3年生のときにその先生がご病気になりました。監督不在のなかで戦ったインターハイ大阪予選で優勝し、全国では第3位に。この経験は自信にもなりましたし、今でも忘れられません」

―山口先生からはどんなことを学びましたか。
「高校時代は少し自分勝手なトスを上げることもあったんです。そんな時によく、チームが良くなるためにはどうすればいいか考えてプレーしなければならないと言われました。チームが勝ったらスパイカーのおかげ、負けたらセッターの責任、それぐらいの覚悟や自分を押し殺してでもプレーしないといけない、と」

―早稲田大学への進学を決めた理由は。
「割と僕は感覚でプレーするタイプなんですが、早稲田大学の松井(泰二)先生は確固たる理論に基づいたトレーニングをされるので、それを学びたいと思ったんです。また1年生から試合に出られるチーム、かつ強いチームと考えると早稲田大学でした。中学時代からの同級生が来ることも大きかったですね」

進学後に訪れた試練と苦悩の日々

―実際に早稲田大学でプレーしていかがでしたか。
「1年生のときは、正直、松井先生が話していることをなかなか理解しきれず、試合に出ても何もできなかったですね。バレーを辞めたいと思うほど苦しい時期もありました。プレーが通用しないというわけではなかったんですが、自分の良さを出せなかった。さらに、結果もついてこなかったので、自信をなくした時期もありました。でも、そんな時も先生はあくまでも学生に考えさせる。自分なりに考えて、アイデアを出して実践し、失敗や成功を繰り返して自分のものにしていく。それがチームの強みにもなっています。そうやって少しずつ積み重ねてきたことで、今があると思っています」

―早稲田大学には、日本を代表するスパイカー陣が揃っています。現在プロとして活躍するOB の大塚達宣選手にもトスを上げてきました。
「うちのスパイカー陣は本当に力のある選手が揃っていて、彼らを活かすのも殺すもセッターの僕次第。プレッシャーは大きいですし、実際に1年生の頃にはそれに負けてしまいましたが、今はあの失敗を糧にいい結果につなげられたと感じています。あと、戦術面の理解度は、松井先生の指導のおかげで、一番成長したんじゃないかなと思っています」

下半身強化をテーマにトレーニング
けがをしないカラダづくりもポイントに

前田選手のカラダづくり

―今、どんなテーマを掲げてトレーニングに取り組んでいますか。
「今は下半身の強さをテーマにトレーニングに取り組んでいます。バレーボールは上半身でやるスポーツだと思われがちですが、ジャンプにしてもやはり土台になるのは下半身。僕は膝の痛みで練習ができない時期も何度かあったので、けがをしないカラダづくりは課題に挙げていますね。また、バレーボール選手としては決して身長が高くはないので、ジャンプ力やブロック力、体幹がより重要になってくる。今はカラダを一回り大きくしてフィジカルで負けないように鍛えています。また、トレーナーさんからセッターとして必要なアップやトレーニングを学び、取り入れています」

マウスピースを着用して就寝してから
翌朝はすっきりと起床できるように

コンディショニングと競技への向き合い方

―食事などで気をつけていることはありますか?
「やはりトレーニングを行うと筋力のダメージが大きいのでプロテインを摂取したりしていますね。試合期になるとこまめにオレンジジュースも飲みます。寮住まいなのでバランスの取れた食事が提供されるので心配はありませんが、練習前には補食でおにぎりを必ず食べています。マイ炊飯器で1週間に1回、4合のご飯を炊いて、冷凍保存したものを解凍して持参しています。練習中にお腹が空いて集中できないのが嫌で」

―食事以外でコンディション管理のために取り組んでいることはありますか。
「年に2、3度歯科検診を受けています。人間はどうしても寝るときに歯を噛みしめてしまうらしいんです。歯ぎしりをしてそこで歯が欠けてしまったり…‥。そこで寝るときにマウスピースをつけるようになったんですが、頭や首の疲労感も抜けて、朝、すっきりと起きることができるようになりました。マウスピースは自分の歯型に合わせて作ってもらいました。トレーニングでもグッと噛みしめることが多いので、練習中につけている選手もいますが、歯の状態が大分コンディションに関わってくるんだというのはすごく実感していますね。あと、コンディション管理というと、昼寝も欠かせません! 練習に集中するためにも必須ですね! 夕方の練習が始まるギリギリまで寝ています(笑)」

―前田選手が競技に取り組むにあたって、気をつけていることや心掛けていること、モチベーションになっていることは。
「一番大きいのは、“うまくなりたい”という向上心で、成長を実感できたときは本当に楽しいです。モチベーションになっているのは、これまで僕に関わってくれた指導者、同級生たちの存在ですね。しんどかった時期も支えてくれたので」

大学での目標と同世代アスリートへメッセージ

―2023年、大学4冠を達成していますが、今年の目標もやはりそこが大きなテーマになりそうですか。
「チームが結果以上に大切にしているのがプロセスです。松井先生もよくおっしゃるのですが、失敗を経験するからこそ、自分が目指す方向性も分かるし、その過程があるからこそ結果に結びつく。昨年は久しぶりに4冠を達成し、僕自身もセッター賞を取らせていただきましたが、それ以上に、普段継続していることをいかに試合で出し切れるか、表現できるかが大切だと考えています。そういう早稲田の伝統はこれからも繋いでいかなければと思いますね」

―最後に同世代アスリートへのメッセージをお願いします。
「大学時代はいろんなことにチャレンジできる時期だと思うんです。そこで恐れず一歩踏み出すことが大事かなと。たとえ失敗したとしても、そこでどうすればいいか考えればいいだけ。僕も1年生の時にいろんなチャレンジをして失敗も経験しましたし、今もいろんなチャレンジをしているところです。どんな経験も本当に大事になってくるので、お互いに失敗を恐れず何事にも積極的にチャレンジしていきましょう!」

※「アスリート・ビジョン#33」掲載/この記事は取材を行った2024年2月時点での情報です

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