試合直前なのに“イマイチ調子があがらない”ありませんか?食事は実力発揮のための着火剤。ベストコンディションで試合に臨むためには、食事のコントロールは必要不可欠です。特に試合期の食事マネジメントでは「量」、「質」、「タイミング」がカギ。自分のカラダ、そして競技に合わせた食事術で、悔いなくシーズンを戦い抜こう!
食事マネジメント第1のカギ「量」
活動量に見合った食事量を摂りエネルギー不足や増量を回避!
どんなにバランスのよい食事を摂っていても、エネルギー量が足りなければ、本末転倒。つまり、最優先事項は「量」。試合期はどうしても緊張感が高まり、食欲不振や消化不良を起こし、エネルギー不足のリスクが高まります。まずは「エネルギーの収支バランス」に意識を持つことが大事です。
一方、試合期に入ると練習メニューも変わり、強度も下がるため、必要なエネルギー量は少なくなります。なかには、「試合前だから心配」と必要以上に食べ過ぎてしまう場合も。思わぬ体重増加がコンディショニングの仇となるので注意が必要です。
COLUMN:
心身のコンディションにも関わる 試合期の食事マネジメント
急場しのぎはご法度!
また、試合直前になり「何を食べれば?」と気にする人もいますが、食は急場しのぎで効果を発揮する“ 魔法の薬” ではありません。むしろ、食べ慣れない食品を摂ることで、調子を崩すこともあります。日々の練習を積み上げてこそ力が発揮できるように、食事も日々の積み重ねが大切。本番を迎える前に、普段から、「何を(質)どのぐらい(量)、どのタイミングで食べたら調子が良いか」を試しておきましょう。
食事マネジメント第2のカギ「質」
試合直前(2日前~前日)は炭水化物中心の食事へシフト
試合期は食事に占める3大栄養素「炭水化物」「たんぱく質」「脂質」の比率を調整します。通常は炭水化物50 ~ 60%、たんぱく質15 ~ 20%、残りの25~30%を脂質から摂りますが、試合の2~3日前から炭水化物(糖質)中心の食事へとシフト。目安は競技特性により異なりますが、エネルギー効率のよい炭水化物を5%ほど増やし、脂質の割合を減らします。厳密に計算するのが難しくても、常に摂取割合を意識しながら、食材や調理方法を選ぶことが大切です。
試合期、調整期(テーパー期)はトレーニング量をセーブするため、練習期と比較しても、食事量(エネルギー)も調整する必要がある。試合前は、高炭水化物・低脂質の食事にシフトしよう。
COLUMN: 遠征先でのメニュー調整
宿泊施設では選手個々で食事内容のコントロールが比較的難しくなります。宿泊先が決まったらチームのマネージャーは、献立のリクエストが出来るかどうかを問い合わせてみましょう。
☑揚げ物は控えて低脂質のおかずにしてもらう
☑いも類やかぼちゃのおかずを追加してもらう
食事マネジメント第3のカギ「タイミング」
当日はエネルギー源となる「炭水化物」最優先
試合時間から逆算し摂れるタイミングを見極める
エネルギー切れを起こさないためには、炭水化物をどのタイミングでいかに補給するかが重要です。試合のスケジュールや競技規則によって変わりますが、「摂れるタイミングで摂る」ことが絶対的ルール。試合前後の食事や補食はもちろん、ハーフタイムや作戦タイム、選手交代など、タイミングがあればこまめに補給を。
試合期の食事 注意点とポイント
【3日前~前日】食べ方の工夫でエネルギー源を確保
炭水化物をいかに摂るかが成否の分かれ道!
「ご飯のすすむ」トッピングやおかずを用意
納豆といったトッピングがあるとご飯がすすむ。試合前は生卵よりも温玉を。
ビタミンB1で効率よくエネルギーにチェンジ!
炭水化物のみならず、エネルギー代謝に必要なビタミンB1(豚肉・鮭・納豆・豆腐など)も一緒に摂取。
炭水化物ON炭水化物で大幅増量
例えば、ご飯や蕎麦にとろろ芋、うどんにお餅をトッピングするなど、炭水化物の多い食品をプラスオン。
炭水化物のおかずをプラス
いも類やかぼちゃのおかずを1品追加。スーパーやコンビ二のお惣菜は手軽で便利。
和菓子は炭水化物補給の味方
低脂質・高炭水化物の和菓子は補食にも最適。甘い物が時に役立つこともあるのでうまく活用して。
【試合前】特にNG&控えたい食品
緊張により、消化吸収力が抑制され、便秘や下痢などの胃腸系の障害になる可能性も。「安全面」への配慮も試合前の食事ポイント!
【競技別】試合前の炭水化物補給例
カーボローディングとは?
エネルギー源となる炭水化物を意図的に体内に溜め込む食事法。マラソンや駅伝、トライアスロンなど運動の持続時間が1.5 時間以上の競技で主に実施している。試合の2~3日前から、24 時間ごとに体重1㎏あたり10~12gの炭水化物を摂る。エネルギーオーバーにならないよう、おかずの量を減らして調整する。女性の場合は、男性の8 割程度を目安にする。
例/陸上長距離、体重60㎏(男性)の場合
1日に必要な糖質600g(糖質10g/㎏で計算)
例/サッカー、体重75㎏(男性)の場合
1日に必要な糖質600g(糖質8g/㎏で計算)
アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。
※2023年10月16日発行「アスリート・ビジョン#31」掲載/この記事は取材時点での情報です。