競技はもとより日常生活でも高いパフォーマンスを発揮するには、コンディショニングが大切です。気持ちを整えるメンタルコーチングや睡眠をしっかりとるための快眠術など、アスリート必見の心とカラダのコンディショニング術を紹介します。
メンタルコーチングのはじめの一歩。
「緊張する」「本番で力が出ない」などアスリートが直面する様々な悩み。「メンタルが弱い」といったラベリングを取り除き、一人ひとりの伸びしろを最大限引き出すのがメンタルコーチングです。
ナショナルチームや数々のトップアスリートのメンタルコーチを務めてきた一般社団法人フィールド・フロー代表の柘植陽一郎さんに、アスリートに実践してほしい「メンタルコーチング」についてお話を伺いしました。
「メンタルコーチング」で自分と対話する
メンタルは「精神的、心に関すること」が一般的な意味で、人によりイメージの幅があります。捉えどころがなく難しそうですが、スポーツメンタルコーチングでは「自分との対話」を通して思考・感情・行動をマネジメントし、競技力の向上と人生の充実を目指します。
自己との対話は、今この瞬間だけでなく未来に実現したいことなど【時間軸】で大きく3つに分けることができます。
① 今この瞬間の意識状態をコントロールする
② 大会などに目標設定しマネジメントをする
③ どのように生きたいか、人生の目的を考える
アスリートに大切なのは、①の本番発揮能力ですが、②③の中長期的な自己との対話を深めることで、①の本番発揮能力も高めることができます。メンタルは「弱い」「強い」と単純に分けられるものではありせん。
強さ・弱さではなく、自分との対話の質を高めること考えれば、取り組みやすいと思います。
「問いかけ」で対話の「質」を高める
自分との対話では、問いかけがポイントです。「状況把握」「目的認識」「自分のできること」を意識し自己対話の質を高め、競技力の向上につなげましょう。
■3つの問いかけで自分と対話する
・いま何が起きているのだろう
・本当はどうなりたいのだろう
・自分ができることはなんだろう
試合本番は「リソースフル」な意識状態であることがベストです。まわりにあるものを活用できると考えられる意識状態をリソースフルといいます。
自分がコントロールできないものに引っ張られず、利用できるものを最大限活用することで、自分との対話をより深めることができるのです。
例えば、試合当日に風が強い荒れた天候の場合、「最悪な日だな」と考えるか「この強い風をどうすれば利用できるか」と考えるかで、競技に臨む意識状態は全く変わってきます。
試合でリソースフルになれるように、普段からアンリソースフルな状態になりそうな時に意識を変える練習をしてみましょう。
例えば急いでいる時に駅でICカードの残高不足で改札を通れず、1つしかない券売機で前の利用者がもたもたしていて、イライラしてきた。そんな時「これはちょうどいい。なぜならば」と口に出して言ってみます。すると、「返信できてないメッセージがあるからこの時間に送ってしまおう。」と何かアイデアがでてくるでしょう。それは「なぜならば」の後の言葉を埋めるように脳が答えを探すからです。これは言葉で思考→行動→感情をリードするテクニックの一つです。
目標に向かって進む力を支える「自己効力感」を高めよう。
目標など対象に「やれる気がする」や「やりたい気持ち」がある状態を、自己効力感が高い状態と言います。この状態を維持はスポーツにおいて大切なことです。そのためにまず「人間一人ひとり違う・違っていいんだ」ということを把握しておきましょう。
どんな人生を歩みたいのか、どんな身体感覚を持っているのか、どの時期に競技力がぐっと高まるのか等一人ひとり違います。周りの選手と比較しすぎずに自分との対話の質を高めるよう心がけてみてください。
そして、自己効力感が下がってしまっていると気がついたら、過去の自身の成功体験を思い出してみてください。小さな成功体験でも良いのでいくつか思い出すことで「自分は結構イケてるかも」「なんかできる気がする」などの小さな気持ちの変化につながるかもしれません。
また、仲間と日々の練習を振り返る際に、できたことにフォーカスを当てて言葉にしてみる、というのもおすすめです。できなかったことに注目する反省ではなく、できたことと伸びしろに注目し、自己効力感が高まる振り返りをしてみてください。