年間トレーニング計画をもとに秋の大会に向けて強化しよう!【NSCA監修】

©areebarbar – stock.adobe.com

春の大会が終わり、秋の大会に向かっていく期間を“ 再強化期”と言います。一度落とした体力を回復させることが重要で、シーズンの集大成に向けて心もカラダもアップデートしていかなければいけません。 しかし、闇雲なトレーニングはかえって怪我のもと。暑い夏を乗り切り、低下したコンディションを上げていく効率的な方法を、ストレングス&コンディショニングコーチの吉田さん(NSCAジャパン)に聞きました。

春の大会を見直して課題を抽出

はじめに春の大会(練習)を振り返り、個々の課題を洗い出します。フィジカルに問題がある選手はフィジカルに重点を置いたトレーニングなど、できることを絞り込んだ上で秋の大会に向けて綿密なスケジュールを立ててください。新しいことをやるというより、精度の向上に重点を置くことがポイントです。

#20号で紹介した「トレーニング計画表(NSCA監修)」は過去号の記事よりDLできます!

過去号の記事もCheck!!
年間トレーニング計画を立てて効率よく鍛えよう

自己分析シートでやるべきこと明確にする

自己分析シートを活用するとより良い内容のトレーニングができます。下記の図のような9マスの中心に「課題」を記入し、隣接する8マスにそれを克服するための「要素」を書き込んでいきます。

目的

目標達成の確率を上げるために、自身のパフォーマンスを分析し、今後のトレーニング内容を整理する。また、課題に対して様々な角度から考えることで、思考やアイデアを広げ行動の方向性や具体的な取り組みを考える。

書き方   例)野球・投手

❶1つの課題に対して1シートで考える。
❷真ん中のマスに課題と目標、期日を記入する。
❸課題達成に向けて関連すると思うことを8つあげる。
❹マスの中には、項目と目的、具体的な行動を記入する。

検討する項目

・トレーニング
・栄養
・リカバリー など
※個人練習での取り組みが入っても良い

リカバリーに努める

体温を下げて早く体力を回復させる

春と秋の間は短く、基礎練習(基礎トレーニング)にそれほど長い時間をかけられません。そこで重要になるのがリカバリーです。できるだけ早く効率的に体力を回復させ、次のトレーニングにつなげます。特に夏場のリカバリーは、早く体温を下げるのがポイントです。

アイスバス

目的

深部体温を下げ、エネルギー消費を下げる。筋のダメージを抑える。副交感神経の再活性化(質の良い睡眠が得られる)

状況

ハードトレーニング、高体温、筋肉の怪我・痛み、打撲(筋のダメージがある時に有効)

方法 [タイミング:トレーニングの直後が有効]

目安の水温は1 5℃以下(理想は10℃)、1 0 分間(※もし一度で1 0 分入れない場合は、アイスバス(2 分)×休憩(室温)を5セット。大事なのは、トータルで1 0 分近く入ること)

ウォームダウン

目的

筋の硬さ、痛み(苦痛)を減少させる。代謝を下げる。関節可動域の向上

状況

呼吸器系や心臓血管系、代謝副産物が高い状態

方法 [タイミング:トレーニングの直後が有効]

ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど(5 〜1 0 分程度)

交代浴(コントラストバス)

目的

血液の循環を良くする。副交感神経の再活性化(質の良い睡眠が得られる)

状況

カラダの疲労感が強い時に有効(注意:怪我や筋のダメージがある時はN G )

方法  [タイミング:トレーニングの直後が有効]

ホットバス(3 8 〜4 0℃、2 分)×アイスバス(15℃以下、理想は10℃、2 分)
を3〜5セット(※トータル1 0 分以上が目安で、最後はアイスバスで終わるようにする)

入浴(ホットバス)

目的

血液循環を良くする。カラダを温める

状況

筋が硬い時(注意:打撲や怪我、筋のダメージがある時はN G )

方法

1 0 〜1 5 分以内(注意:水分補給を忘れないようにする)

ストレッチング&リリース

目的

筋の柔軟性、関節可動域の向上

状況

筋が硬い時や関節可動域が狭い時

方法  [タイミング:練習後など]

静的ストレッチング=反動をつけずに最終姿勢を1 5 〜3 0 秒保持。リリー ス=ポールやボールの上に乗り、体重を利用して上下左右に動かす

暑熱対策

暑熱下のパフォーマンスを向上させる

人間のカラダは熱ストレスに曝されると内部体温が上昇するため、パフォーマンス低下などのデメリットがあります。一方、暑さに慣れることで、体温調節と心臓血管系の負担を減らし、暑熱下のパフォーマンスを向上させることが可能です。研究によると、環境に適するようにカラダが変化する暑熱順化期間は7〜14日間、完全に適応するまで10 〜14日間が必要とされています。

熱ストレスに曝されると

●内部体温が上昇する
●皮膚温度が上昇し、血流量が増加する
●発汗による水分喪失のため中心血液量が減少する
●心拍数が増加する
●最大心拍出量が減少する・パフォーマンスが低下する

暑熱順化を行うと

●内部体温が低下する
●発汗量が増加し、皮膚温度の低下と血流量の減少を助ける
●血漿(けっしょう)量が増加し、中心血液量の維持を助ける
●心拍数が減少する
●最大心拍出量が増加する
●パフォーマンスが向上する

尿の色で脱水をチェック

モニタリングで脱水を防ぐ

夏場は練習の前後に体重を測り、どれくらい脱水しているかを測るようにしてください。また、尿の色で判断することもできます。尿の色が濃いと、それは脱水のサイン。適切に水分を補給するようにしましょう。水だけを飲むと体液が薄まり、かえって脱水が進んでしまう可能性があります。そんな時は、塩分やアミノ酸などの電解質が配合されたスポーツドリンクを飲むようにします。

尿の色で脱水症状をチェック(厚生労働省)

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzenproject/concour/2015/sakuhin5/n006.html

上を目指すために隙をなくそう
目標が高ければ高いほど「隙をなくす」ことが重要です。小さな隙はやがて大きな綻びとなり、いつか大きな失敗や敗戦につながります。トレーニングにおいて、「声を出す時は出す」「越えるべきラインはしっかり越える」など、決められた細かいルールをしっかり守り、チームの規律を高めることで、隙をなくしていきましょう。


吉田直人さん

CSCS、NSCA-CPT、NSCAジャパンマスターコーチ。育成年代からプロ選手まであらゆる競技のアスリートを指導。ジャパンラグビートップリーグのHonda HEAT で5 年間、ヘッドS&C コーチとして従事。その後、HPC のヘッドS&Cコーチをへて、2020 年4 月より事務局長。

※2021年7月15日発行「アスリート・ビジョン#22」掲載/この記事は取材時点での情報です。

最新情報をチェックしよう!