前号では股関節を中心に、力の伝達を効率的にするエクササイズをお届けしました。今号では、アスリートのケガも多い「肩」や「肩甲骨」をメインに、セルフチェックとエクササイズメニューを八王子スポーツ整形外科の西山トレーナーに教えてもらいました。
セルフチェック「横から見た立ち姿勢」
横から見た立ち姿勢をチェック。両肩が前に出ていないか、背中が丸まったり、あごが前に出たりしていないかを見ていこう。理想の姿勢は、壁に頭と背をつけて、あごを引いた状態。壁がなくてもその姿勢を維持できるよう意識して、バランスのいいカラダを目指そう。
耳たぶ→肩峰→大転子(大腿骨)が一直線になっているかどうか。
正しい姿勢で肩甲骨の動きをコントロールする
スポーツにおいて肩甲骨の動きが重要だということは知っている人も多いだろう。肩甲骨の可動域が狭いと、効率的な力の伝導がしにくくなる。しかし、肩甲骨が柔らかいだけではケガにつながる可能性がある。動きを自らコントロールできることが重要だ。そのためには正しい姿勢をとり、他の関節と連動させる必要がある。
効率よく動くためのエクササイズ
1. コブラ [各15回]
うつ伏せになり、両方の手の平をお尻につける。背中側でヒジとヒジを寄せるようにしながら、頭と上体を上げて胸を反る。腰痛を持つ人は無理して反らそうとせず、しっかり胸を張って肩甲骨を寄せることに意識を向けるとよい。
胸を張ることで、胸椎が伸展すると同時に肩甲骨の内側に効いてくる。また、肩関節を外旋させることになるので、インナーマッスルにも刺激が加わる。
2. スキャプラYTW [各15回]
うつ伏せの状態で、腕をY 字になるように開き(目安は約30 度)、胸と頭は地面についたままゆっくりと真上に上げる。肩関節ではなく、肩甲骨を動かすことで腕を挙げる。肩をすくめたり、挙げるときに腕の角度が変わらないよう注意。同様に、腕を真横に開いてT 字、ヒジをWの形に曲げてW 字を描く。
ポイント
肩甲骨周りにある菱形筋を中心に刺激する。腕の形によって刺激される部位が少しずつ変わる。Wのときはヒジから挙げず、腕全体を平行に挙げるのがコツ。
3. エンプティカン(フルカン)[各15回]
チューブの真ん中を両足で踏み、両端を握って小指が上、手の甲が前になるように構える(缶を逆さにするイメージ)。約30 度斜め前に向かってゆっくり挙げていく。フルカンは、エンプティカンと基本動作は同じだが、親指が上、手の平が前にくるようにして行う。
肩甲骨の上側にある棘上筋を刺激する。挙げるときも戻すときもなるべくゆっくり行う。チューブがないときはペットボトルや軽いダンベルで代用するのも◎。
4. プッシュアッププラス [10回程度]
通常の腕立て伏せをし、カラダを持ち上げていくときに腕を上に突き出す。肩甲骨を開き、背中を天井に近づける意識で行うとよい。連続でできない人はヒザをつけて行ってもよい。肩をすくめないように気を付けよう。
ポイント
肩、腕、ヒジの複合的で大きな力を使うことになる。続けていくと、肩甲骨と他の部位との連動した安定性が身につく。
西山朋さん
八王子スポーツ整形外科メディカルフィットネス部門アスレティックトレーナー。帝京平成大学健康医療スポーツ学部助教。これまで東京ヤクルトスワローズのアスレティックトレーナー、男子ソフトボール日本代表、7 人制ラグビー日本代表、オール三菱ライオンズなどのトレーナーを歴任。
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※2021年1月15日発行「アスリート・ビジョン#20」掲載/この記事は取材時点での情報です。