冬のカラダづくりは食事で差をつける!免疫機能を整え、基礎体力を高める【栄養のプロに聞いた】

年が明け、新シーズンに向けて基礎体力を上げ、年間を通して戦えるカラダをつくる準備期に突入しました。一方、季節柄、体調を崩しやすい時期でもあります。そこで、この時期のカラダづくりに必要な食事の摂り方や注意点、おすすめの食材まで特集します!

目次

冬のカラダづくりの心得とは?

健康なカラダなくして結果を出せるカラダはつくれない

土台となるカラダが健康でないと、いくら良い食事を摂り、練習やトレーニングを続けても、その成果をうまく上積みできません。なぜなら、風邪を引いたり、お腹を壊したりしては、当然、カラダは十分に栄養を吸収できないうえ、質のよい練習やトレーニングもできないから。ケガや病気を防ぐだけでなく、カラダの内側にも目を向け、コンディションに気を配りましょう。

免疫機能をキープし体調不良を引き起こす外敵をブロック

冬は風邪やインフルエンザを筆頭に、新型コロナウイルスやノロウイルスなどの疾患が流行しやすい季節。細菌やウイルスなどの外敵からカラダを守るためには、免疫機能を維持することがポイントです。アスリートは鍛えていて丈夫なイメージですが、実は免疫機能が一般の人よりも低下しやすいという側面があります。免疫機能は、適度に運動をしている人が最も高いといわれています。ハードな運動を行い、カラダを酷使して疲労を溜め込んでしまうと免疫機能が低下。その結果、風邪をひいたり下痢になるなど、体調を崩しやすくなります。運動による免疫機能への影響も認識し、 食事、睡眠、休息で疲労を溜めない工夫が必要です。

運動と感染症リスクの関係を表示したJカーブ現象

運動不足でも、過度な運動でも、免疫機能が下がりやすくなる現象を、グラフのカーブから『J カーブ現象』という。時には過度に追い込むアスリートこそ注意が必要だ。

カラダの外側と内側から病原菌をブロック!

免疫機能はカラダを外敵から守ってくれる、いわゆる「バリア機能」。細菌、ウイルスなど の病原菌の侵入をブロックする機能で、主に鼻やのど、腸の粘膜で働きます。ウイルスや細菌は口や鼻の粘膜から体内に侵入しようとしますが、粘膜の免疫機能によって、ウイルス等の活動を抑えます。ところが冬は粘膜が乾燥しやすく、それによってバリア機能が低下するため、粘膜の健康を保つことが重要です。
また、「免疫機能は腸でつくられる」といわれるほど、腸の健康は免疫機能と密接です。腸内環境を整えることでも、健康なカラダづくりにつながります。

免疫機能が低下する原因は日常生活に潜んでいる

細菌やウイルスといった異物の侵入をブロックしたり、侵入した異物を撃退したりすることで、カラダを正常に保つ機能。生まれながらに持つ『自然免疫』と、ワクチン接種や感染することで抗体をつく る『獲得免疫』がある。

<結論>基礎体力&免疫機能を食事から整える!

基礎体力や免疫機能は、エネルギー不足や栄養バランスが崩れることでも低下します。アスリートのカラダは、運動するために必要なエネルギーのほか、筋肉をつくり、免疫細胞をつくるための栄養成分も必要です。その分、一般の人よりも、意識して食事を摂る必要があります。
基本は活動量に見合ったエネルギー量を摂取すること。そして、免疫細胞をつくるたんぱく質や、たんぱく質の合成をサポートするビタミン、ミネラルをバランスよく摂ることが、冬のカラダづくりには重要なのです。

オフから始める 冬のカラダづくりに役立つ食習慣

冬のカラダづくりをバックアップする食材と、心がけたい食習慣をチェック。

1日3食はこうやって摂ろう!

例えば…。

朝食:卵かけご飯、納豆、汁物
☑朝のたんぱく源は「卵」が便利!
☑汁物の具材は乾燥わかめや干し椎茸、冷凍野菜を活用して時短

昼食:学食の日替わり定食
☑主菜は好きなものを選んでOK
☑小鉢や野菜のおかずも揃えて、一汁三菜の定食スタイルに

夕食:ご飯、鍋料理
☑その日の活動量に応じて食べる量を決める
☑翌朝は味噌汁や雑炊にアレンジして味変!

アスリートに必要な栄養素とのその働きを知ろう!

主食:ごはん、パン、麺類、餅、いも類などの穀物

炭水化物:脳やカラダのエネルギーの源になる

主菜:肉、魚、卵、大豆・大豆製品など

ビタミン:カラダの調子を整える
ミネラル:筋肉や神経の伝達に関わる

◎鉄分:血液や免疫細胞を合成し、持久力アップをサポート
……緑黄色野菜、肉(牛肉、レバー)、魚介類(牡蠣)

◎食物繊維:腸内環境を整える
……淡色野菜、緑黄色野菜、いも類、果物、きのこ類、海藻類

◎抗酸化成分:カラダの中の炎症を抑える
……緑黄色野菜、果物、魚介類(鮭、かになど)

理想は一汁三菜 3食しっかり食べる

エネルギー&栄養不足は、免疫機能が低下する要因の一 つ。食事はバランスよく、3食しっかり食べることは基本中の基本です。特に一般の人よりも運動量が多いアスリートは、カラダに多くのエネルギーが必要。1食でも欠食するとガス欠になるため、朝・昼・夕の3食を欠食しないことが重要です。自然とバランスが整いやすいのは、主食+主菜+副菜+汁物を揃えた定食スタイルの献立。理想は一汁三菜(主菜+副菜2品)ですが、具沢山の味噌汁にすれば“一汁二菜”でもバランスが整います。

いろんな具材が入った鍋やスープで手軽に栄養を補給する

冬になると出番が多くなる鍋物は「低脂質で消化がよく、栄養満点!」 最強のアスリート食です。具材を賢く選べば、これ一品で主菜+副菜+汁物の三役を担います。また、カラダを温めることも免疫機能を維持することにつながるため、鍋や具沢山のスープはとてもおすすめ。オフの間に体重が増えてしまった人の、体組成のコントロールにも◎

冬のカラダに必要な食材を賢くチョイス

肉(鶏むね肉、ささみ肉など)

たんぱく質合成に欠かせない鮭、鱈など鍋に合う魚にはビタミ ビタミンB6もセットで摂れる。

魚(鮭、鱈など)

鮭、鱈など鍋に合う魚にはビタミンDが豊富。ビタミンDも免疫機能に関わる栄養素です。

炭水化物(ご飯、うどん、餅など)

大豆製品(豆腐、厚あげ、油あげなど)

緑黄色野菜(にんじん、ほうれん草、春菊、水菜など)

淡色野菜(白菜、きゃべつ、もやしなど)

白菜、きゃべつ、もやしは食物繊維やビタミンCが豊富なうえ、消化しやすい。ビタミンCは水に溶けるが汁物であればあますところなくいただける。

きのこ(しいたけ、しめじ、えのきなど)

発酵食品(塩麹、味噌、キムチなど)

旬の果物「みかん」は補食にピッタリ

安価で持ち運びにも便利なみかんは、糖質のみならず、粘膜を強化するビタミンAやC がたっぷり。特にβ -クリプトキサンンチンという体内でビタミンAに代わる成分が非常に豊富です。

柴崎真木さん(管理栄養士)柴崎真木さん【管理栄養士】
アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。

※2023年1月15日発行「アスリート・ビジョン#28」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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