スポーツの場面における蹴る動作は、投げる動作と同様に、カラダをねじる回旋動作が必要となります。ねじりの動作から股関節を伝って、最終的に足先から出力するのが蹴る動作です。体幹をしっかり強化しながら、対角線の動きやクロスモーションがスムーズにできるように動作の質を高めていきましょう。
第10回 回旋動作での力発揮
~蹴るためのビルドアップトレーニング~
スポーツの場面における蹴る動作は、投げる動作と同様に、カラダをねじる回旋動作が必要となります。ねじりの動作から股関節を伝って、最終的に足先から出力するのが蹴る動作です。体幹をしっかり強化しながら、対角線の動きやクロスモーションがスムーズにできるように動作の質を高めていきましょう。
【投げるためのビルドアップトレーニング】
競技場面でのトレーニング効果の一例
☑サッカー、フットサルなどのキックの向上
☑空手、キックボクシングなど蹴りの動作
☑クロスモーションの動きを高める
☑ランニング競技の競技力向上
☑片脚立位のバランスアップ
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ダイアゴナルエルボーニー&ダイアゴナルハンドトゥータッチ
[回数目安:左右各10回]
両手足を伸ばして大の字に寝た姿勢がスタートポジション。腹筋の要領で状態を起こしながら対角線の肘と膝をつける。スタートポジションに戻り、今度は対角線のつま先を手でタッチする。同じ方向を10回繰り返す。同じ動作を単体で続けておこなっても良いですが、エルボーニーとハンドトゥータッチを交互におこなうことで動きにアクセントがつきます。軌道が大きくなる分、ハンドトゥータッチのほうが負荷は大きくなります。手と足(膝)は直線上に合わせるのがポイント。股関節を内旋させて膝が外に開かないようにしましょう。
ありがちなNG例
■膝が外に開く
■カラダが浮いてしまう
NG例としてありがちなのは、肘と膝をつける際に股関節を内旋できずに膝が外に開いてしまうこと。股関節のインナーマッスルの動員する意味でもしっかり内旋するようにしてください。また、上体を起こす際に極端に頭が上がって傾いたり、床についている側の手足が浮いてしまうのもNGです。姿勢をキープしながらおこなうようにしましょう。
ポイント
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90-90ヒップローテーション
[回数目安:内旋・外旋それぞれ10回]
脚を前後にする形で座ります。このとき、前の脚、後ろの脚ともに膝の角度が90度になるようにします。そして前脚に体重をかけます。前脚をおさえるのは動作に移るときにカラダの反動を使わないようにするためです。
膝を持ち上げて股関節の外旋
足首から先を持ち上げて股関節の内旋
スタートポジションをつくり、前脚を押さえて重心の位置を固定して動作中にブレが出ないようにします。この姿勢からまずは後ろ脚の膝だけを持ち上げて股関節を外旋させます。続いては後ろ脚の足首から先を持ち上げて股関節を内旋させます。後ろ脚を持ち上げる際、カラダが前後に動いてしまうと、効果を得られないので、重心を固定して股関節だけを動かすようにしましょう。もしも脚が動かないという人は、上げたい方向に力を入れるだけでも筋肉には刺激が入るのでOKです。
レベルアップ! 手で脚を固定せずにおこなう
このトレーニングの強度を上げたいときは、手で脚を固定せず、腕に力を入れて背筋を伸ばした状態でおこないましょう。姿勢支持のために体幹の筋力を働かせなければいけないので、より強度が上がります。カラダの中心線を垂直に保つことを意識して重心がブレないようにしましょう。
ポイント
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ダイアゴナルスクワット
[回数目安:左右各10回]
足を肩幅より少し広めに開いて立ち、手を組んで斜め上に上げたところがスタートポジション。カラダは横方向にねじらないように軸をしっかりつくる。腕を対角線に下ろし、脚の外側までしっかり引き込んで、腕を振り戻してスタートポジション方向へ出力する。対角線をしっかり腕が通って動くようにすることが大事です。手の動きだけに注意がいきスクワット動作がおろそかにならないよう、腕を引き込んだ際の軸足のローディングを意識してください。同じ方向に10回やった後、反対方向も10回やりましょう。注意点は通常のスクワットと同じで、背中が丸まったり、膝が内側に入り過ぎたりしないようにしましょう。
バリエーション! 片脚立位でおこなう
同様の動きを片脚立位でおこないます。基本的な動作は同じで上げた腕を対角線に下ろしてから戻します。片脚立ちになることで筋力的負荷が増して、実際のキック動作に近い動きになります。フラつかないように、ローディング、アンローディングの動作を繰り返しましょう。難易度を上げたいときはメディシンボールなどを持っておこなうと良いでしょう。
ポイント
トレーナーからのアドバイス
スポーツの場面においては、自分のカラダを思い通りに動かせるようになることが重要です。関節の可動域、可動性をコントロールできるようになれば、パフォーマンスアップ、ケガの予防につながるからです。また、いつもできることができなかったり、痛みを感じたりと、自分のカラダと対話し、コンディションの良し悪しに気づくことも大切なことです。
全10回にわたり「ポテンシャルを引き出すパフォーマンスアップのためのトレーニング」を紹介してきました。各回、パーツや動作の種類をわけてメニューを組み立てています。ご自身の課題改善や苦手の克服にぜひとも役立ててもらえればと思います。
西山 朋 さん
帝京平成大学健康医療スポーツ学部助教。これまで東京ヤクルトスワローズのアスレティックトレーナー、男子ソフトボール日本代表、7 人制ラグビー日本代表、オール三菱ライオンズなどのトレーナーを歴任。
前回の記事はこちら
ポテンシャルを引き出す パフォーマンスアップのためのトレーニング
⑨回旋動作での力発揮 ~投げるためのビルドアップトレーニング~