心とカラダのコンディショニング術
アスリートこそ知っておきたい 日中の運動と睡眠の深い関係

競技はもとより日常生活でも高いパフォーマンスを発揮するには、コンディショニングが大切です。気持ちを整えるメンタルコーチングや睡眠をしっかりとるための快眠術など、アスリート必見の心とカラダのコンディショニング術を紹介します。

アスリートこそ知っておきたい
日中の運動と睡眠の深い関係

「食事」「運動」「休養」は、どれが欠けてもカラダづくりやコンディショニングは成り立ちません。今回は、睡眠を専門に研究する有竹清夏さんに、運動と睡眠の関係を伺いました。休養において特に重要な「睡眠」について理解を深めて、パフォーマンスアップにつなげていきましょう。

日中の運動によって
夜の睡眠の質が上がる

しっかりカラダを動かした日、夜ぐっすり眠れたという体験はありませんか? 運動でカラダを十分に使い、脳の運動野も活発に使うことで、深い睡眠(徐波睡眠/深いノンレム睡眠)の時間が増えると言われています。疲労したカラダと脳を睡眠によって回復させるために眠りに変化が起こるのです。運動するタイミング・時間・強度によって影響は異なりますが、寝付きや熟眠感がよくなること、中途覚醒が減ることなどの研究結果が報告されています。

睡眠は疲労回復だけでなく、
運動を司る脳の最適化も担う

勉強での暗記などは寝る前に覚えると記憶に残りやすいといった話を聞いたことはありませんか。記憶には頭で覚える陳述的記憶とカラダで覚える手続き記憶があります。知識や体験など言語化できるものを長期的に記憶する陳述的記憶は、睡眠をとることで定着しやすいと言われています。手続き記憶は、自転車の乗り方や泳ぎ方などカラダの長期的な記憶です。楽器の演奏やスポーツの動作など日中に繰り返し練習した動作も、その日の睡眠中に脳の神経ネットワークが整理・強化され記憶として定着されています。翌日に上達していることがあるのはそのためです。

仮眠を活用して
睡眠の総量を理想に近づけよう

競技と学業の両立を優先するがために睡眠不足が当たり前になっていませんか。慢性的な睡眠不足では本来の力が発揮できないばかりか、ケガにつながる恐れもあります。睡眠時間が足りていないと感じたら、積極的に仮眠を活用することもオススメです。仮眠を日中何度かに分けてとる方法も、多くの睡眠が必要なアスリートにとっては有効なテクニックです。しかし夕方や夜にたくさんの仮眠とると、夜の睡眠の寝付きが悪くなり就床時刻に響くので注意が必要です。生活サイクルを見直して少しずつ改善していきましょう。

練習で疲れすぎて眠れない…
そんな時は、リラックス&クールダウン

運動時間の長いアスリートは一般的に言われている睡眠時間よりも、より多くの睡眠時間を確保した方が良いと言われています。競技力向上のためにも、自分が最もパフォーマンスを発揮できる睡眠時間を把握し、逆算して就寝時刻を決めるなど、普段から生活のリズムを整えることを心掛けましょう。

先生からのメッセージ

長時間強度の高い運動をした夜は、なかなか寝付けないといった声もよく耳にします。カラダが興奮状態(交感神経が優位)になっていると体温が下がらず入眠しにくい状態になっています。練習時間が遅くても眠れていれば問題ありませんが、もしそうでない方は、入浴や静的なストレッチなどでリラックスし、カラダの熱を放散させると良いでしょう。

有竹清夏(ありたけ・さやか)さん
博士(保健学)。埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科検査技術科学専攻准教授。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、国立保健医療科学院/長寿科学振興財団、日本学術振興会特別研究員としてハーバード大学医学大学院に留学。帰国後、早稲田大学スポーツ科学学術院助教、東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター特任助教を経て、現職。専門分野は臨床生理学、睡眠学、時間生物学。

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