拓殖大学・不破聖衣来選手 いくつもの悔しさを乗り越え、「走るのが楽しくなった」 。「自分の可能性を広げてくれた」監督と 目指すは2年後のパリ【陸上長距離】

2021年12月、初めて走った10000mで、いきなり日本歴代2位(当時)となる30分45秒21を記録。日本女子陸上界に彗星のごとく現れた拓殖大学の不破聖衣来選手は、“ 陸上界のフワちゃん”と呼ばれ、注目を集めました。しかし、翌年は怪我に見舞われ、目指していた世界選手権への挑戦を断念。それでも食生活の改善などによりコンディションを整え、今はパリ大会を目標 に、毎日練習に励んでいます。そんな彼女に走る楽しさ、陸上にかける想いを聞きました。

不破聖衣来選手のプロフィール

拓殖大学 女子陸上競技部 不破聖衣来

2003年3月25日、群馬県高崎市生まれ。専門は陸上長距離。小学校2年生から姉と一緒にランニングを始める。中学・高校時代から駅伝やクロスカントリーで全国クラスの実力を発揮。2021年拓殖大学へ進学。同年12月10000m で日本歴代2位(当 時)、日本学生新記録を樹立。翌月の全国女子駅伝で13人抜きを記録。

コロナ期間にメンタルや、
走りに対する考え方が変わった

陸上競技を始めたきっかけ

―陸上競技を始めたきっかけを教えてください。
「小学生の時に持久走大会があって、1年生の時に9位だったんです。それがすごく悔しくて、おじいちゃんと一緒に毎朝走っていた姉の練習に参加するようになったのがきっかけです。元々走るのは好きだったし、自分に合っている感じがしたので、中学生になってから陸上部に入って本格的に取り組み始めました。中学1年時の総体で、『県大会までは絶対行けるだろう』と思っていたのが、あと一人というところで落ちてしまいました。それが本当に悔しくて、それから真剣に練習に取り組むようになりましたね。その後、秋の新人戦で初めて県大会優勝を経験し、そこからは“走るのを楽しもう”、“もっと強くなりたい”と考えるようになりました。それ以降は、少しずつ結果が残せるようになっていきました」

―高校時代は3年時に3000m で全国大会6位入賞、5000m で高校ランキング1位の好タイムを記録しました。強くなれた理由を教えてください。
「高校は、1年目で関東2冠など順調でしたが、2年生になってから怪我もあり、約半年ほど思うように走れない時期が続きました。そのあと高校2年から新型コロナウイルスが流行り、大会がなくなってしまったんです。でも、その時は体重も2~3kg 落ちて全然走れていなかったし、怪我のリハビリに専念できたので、逆に自分にとっては良かったかなと思っています。その間にメンタル面が強くなったり、走りに対する捉え方も変わりました。それ以降の良い結果につながったのかなと思っています」

自分の可能性が広げてくれた監督との出会い

―拓殖大学に進学した理由を教えてください。
「いくつか大学から声をかけてもらったのですが、一番の理由は、五十嵐利治監督に『日本一じゃなくて、もっと先の世界を一緒に目指そう』と言っていただいたことです。自分の中で、それまで“世界”というものが明確にイメージできなかったのですが、その言葉を聞いて自分の可能性がすごく広がった気がしました。熱意を感じて、ぜひ一緒にやりたいなと思って進学しました」

―それが昨年2021年12月の10000m の好記録、翌月の全国女子駅伝での13人抜き・区間新記録につながったのですね。
「10000m は初挑戦で未知の世界だったので、走りながら自分のペースを探すような状態でした。あまり実感がないので、注目されるプレッシャーも、今はあまり感じていません。
ただ、人と比べるのではなく、常に自分のパフォーマンスに集中して走ることは、意識していきたいと思っています」

環境の変化に不安を感じた大学生活
でも「忙しくも充実している」

不破選手のコンディショニングについて

―トレーニング時に意識していることを教えてください。
「練習前には、自分の中で動き作りをしてから、練習を始めるようにしています。長距離は長く強い力を発揮する種目なので、体幹トレーニングやカラダの動きを意識した補強系の動きを多く取り入れるようにしています」

―大学に入ってから食事面で苦労されて、自炊も工夫するようになったそうですね。
「大学進学後、貧血で全然走れなくなった時期があったんです。その後、食事指導を受ける中で“食べる量がすごく大事”であると気づきました。今は、しっかり食べられるカラダづくりをしなければいけないなと思うようになりました」

―大学生活環境が変わり、大学生活に不安などありませんでしたか?
「環境の変化や食事を自分で作らなければいけないなど、新しい問題がいくつか出てきて、最初はやっていけるのか不安もありました。でも、徐々にそういう生活にも慣れて、逆に一人で寮に入って家族と離れて暮らすことによって、充実している部分もあると感じています。良い方向に捉えられるようになったと思います」

2022年は右足アキレス腱炎症などで長期離脱があり、9月に復帰、10月末の全日本大学女子駅伝で区間賞を獲得しました。
「今年に入ってからは怪我などで、思うように練習できないことが多くありました。インカレや駅伝では結果を残せましたが、自分の中ではまだ満足に走れていない部分があります。
まだ、万全の状態から比べたら、半分ぐらいの感覚です。でも、これからまだ伸ばしていけるとは思っているので、大会を経験しながら、世界で勝負できる力をつけていきたいと思っています」

―オフの日のリラックス方法を教えてください。
「普段は時間がなくてなかなかできない、手の込んだ料理だったり、工程が多い料理を試したりしていますね。あとは買い物に行ったり、部屋でピアノを弾いたりして過ごしています」

不破選手のある一日のスケジュール

時間の作り方が難しい中でも
好きなことを見つけて打ち込めるのが大切

大学での目標とその先に向けて

―まずはカラダをベストな状態に戻すのが優先ですが、大学での目標を聞かせてください。
「大学在学中の一番の目標は、4年生の時にパリ大会があるので、10000m での出場を目指しています。そこに向けて残りの期間、しっかり練習を積んで、大会で結果を残しながら、調子を合わせていきたいと思っています。そのためにも、まずはこの2年で10000m の日本記録更新を狙いたい。世界選手権にも出場して、一つひとつの大会を経験しながら、成長していきたいです」

―最後に、同世代アスリートに向けてメッセージをお願いします。
「大学生アスリートは競技だけというわけにはいかず、勉強とか色々あって時間の作り方が難しいと思います。その中でも時間を見つけて、自分の好きなことで気分転換しながら競技に打ち込めるようにしていくのがいいかなと思うので、そのバランスの大切さを伝えたいですね」

※「アスリート・ビジョン#28」掲載/この記事は取材を行った2022年11月時点での情報です

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