鍛えた筋力は効率よくパフォーマンスにつなげたい。そこで重要となるのが「動作(ムーブメント)」だ。八王子スポーツ整形外科の工藤トレーナーに、スポーツの基本動作を高めるためのトレーニングを紹介してもらう。
今回鍛える動作「走る」
多くのスポーツで必要になる“走る”動作。特に重要なのが股関節です。短距離も長距離も基本となるカラダの使い方は同じで、中臀筋で骨盤を安定させ、大臀筋・ハムストリングス・腸腰筋などを使って股関節を動かします。速く走るためには、地面を蹴る力だけでなく、着地で膝や足首を固め床からの反力を利用することも大事なポイント。ベースとなる床を押す支点づくりとカラダを前に押し出す力、反力の得方を習得していこう。
ヒップハイク
[カラダづくり期20回 or 5秒間キープ×10回][試合期歩きながら20回]
走る動作の支点が安定し、股関節まわりの主要な筋肉が生む力を分散させず、効率よく走力につなげることができる
やり方
両手を肩の高さに上げて立ってスタートポジションをとる。ここから、軸足のお尻(中臀筋)で反対側の骨盤を引き上げる
軸足側のお尻に力を入れ、腕を真っすぐ上に伸ばし胸郭を開く。反対側の骨盤を引き上げつつ体側を締める。軸足でしっかりと地面を踏みしめるイメージを持って行おう
ポイント
軸足側のお尻(中臀筋)を使っている感覚があるかどうかも大事なポイント。反対の骨盤をしっかり上げよう
歩きながら
その場で行うヒップハイクができたら、より走る動作に近い「歩きながらのヒップハイク」もやってみよう。スタートポジションから1歩踏み出し、反対側の骨盤を引き上げ、2歩目で床を踏みしめヒップハイクを行う。これを連続で行う。ウォーミングアップとしても◎
2.シングルレッグ バウンディング
[カラダづくり期10歩×2セット][試合期5歩×2セット]
爆発的に正しく床を押す力と、床からの反力を得る感覚が得られる。負荷が強いのでやりすぎには注意しよう
やり方
1 片脚での連続ジャンプ。まず反対の脚を股関節から持ち上げつつ、片脚でジャンプする
Point/ 脚を持ち上げるときに腸腰筋、大臀筋、ハムストリングスといった後ろの筋肉を意識しよう
2 踏み切った脚の踵をお尻の真下に引きつけるようにして、股関節からしっかりと持ち上げる
Point/特にお尻(大臀筋・中臀筋)が使えると骨盤が安定する。さらに股関節周りの筋肉が生み出す、カラダを前に押し出す力を効率よく使える走りができる
3 引き上げた太ももを回転させるようにして前に持っていく。脚はできるだけ大きく動かそう
Point/ 接地時間はできるだけ短くしよう! 短ければ短いほど、反力を得られている証拠になる
4 足の裏全体か前足部で着地。反力を利用して飛び続ける。着地場所はカラダの真下かやや前方が理想だ。足首は90度にして固めておくと床からの反力を得やすくなる
Point/ 左右同じ歩数で行い、もし進む距離が違えば左右差がある証拠。左右差のチェック、修正も目的のひとつとして行おう
床からの反力を得るトレーニング
床を蹴る力と同様に走るに必要な「床からの反力」。#33「跳ぶ」ムーブメントトレーニングで紹介した「アンクルホップ」は、床からの反力を利用する感覚が身につくトレーニングだ。こちらもやってみよう!
鍛えた筋力を効率よくパフォーマンスにつなげるムーブメント(動作)トレーニング
第1回/跳ぶを鍛えるトレーニング ・ドロップスクワット ・アンクルホップ
八王子スポーツ整形外科メディカルフィットネスセンター所属。日本スポーツ協会アスレティックトレーナー。スポーツ傷害やコンディショニングを中心に、幅広い年齢層へパーソナルトレーニングを行う。そのかたわら、大学ラグビー部や高校野球部にトレーナーとして携わっている。
※2024年7月16日発行「アスリート・ビジョン#34」掲載/この記事は取材時点での情報です。