夏こそスタミナアップ!暑さに負けない食事戦略①【栄養のプロに聞いた】

夏は遠征や合宿など、秋の試合期に向け、追い込みをかけたいシーズン。一方で暑さの影響で持久力が低下しやすく、疲労が残りやすいのも事実だ。トレーニングや練習の質を保つためには、バテないカラダづくりは不可欠。暑い夏を乗り切るために欠かせない、スタミナアップの食事を早速、マスターしよう!

暑さに負けない食事戦略

体温調節と水分補給がスタミナアップのカギ

夏はスタミナ=持久力が低下しやすい時期。その大き調な要因は暑さによる発汗と、それに伴う内臓疲労です。外気温が高く、体温が上がりやすい夏。カラダはこもった熱を発汗によって放散し、体温を調節します。加えて、強度の高い運動を行えば体温がさらに上昇し、自然と発汗量も増大。そのため、1日を通してしっかり水分補給をしないと、脱水のリスクがグンと高まります。

特に、暑さで食欲が低下するという人は要注意。必要な栄養が不足するだけでなく、実は食事から得られる水分量は多いため、脱水を誘発しかねません。夏のスタミナは「たくさん食べればアップする」というわけではありません。内臓への負担は少なくし、かつ必要な水分と栄養素をしっかり摂れる食生活を意識しましょう。

上手な水分補給のすすめ

汗で失われる水分量が体重の2%を超えないよう水分補給はこまめに。運動後にガブ飲みしてしまう場合は、運動中の水分が足りていない証拠。夏の暑さに負けずパフォーマンスを維持するためにも、朝昼夕の食事からも水分補給を意識していくことが大切です。

学生アスリートのスタミナを奪う!
暑さが招く3つのトラブル

1.脱水

体内の水分が不足すると、発汗によって体温を下げる調節機能がうまく働かなくなります。すると、競技パフォーマンスの低下や熱中症のリスクが上昇。さらには集中力の低下、だるさや疲れやすさの要因になります。

2.内臓

体温が上がり発汗すれば、体温調節のため肌の表面に血液が移動し、消化吸収を
担う内臓の血流量が不足します。すると、内臓の動きが悪くなり消化機能が低下し食欲不振に。また冷たいものを摂り過ぎて下痢をしやすくなる人も。

3.免疫

内臓の血液量が減ると腸壁の細胞と細胞の間にすき間が増え、透過性が増大。免疫機能の低下を招き、雑菌が侵入し やすくなります。結果、夏風邪をひいたり、お腹の調子が悪くなるなど体調不良を招いてしまいます。

スタミナアップを実現する
栄養素&食べ方のコツ

スタミナアップ=焼肉という思い込みを捨てよう

「スタミナといえば焼肉だよね!」という思い込みは捨てましょう。脂ののった肉類は消化に負担がかかります。つまり、内臓が疲労し、かえってスタミナ減につながります。ハードな練習後は、できるだけ低脂肪の食事が◎。焼肉を食べるなら練習量の少ない日や休日など、疲労感が少ない日に。

POINT
練習後にお肉をガッツリ食べたいときには、照り焼きチキン、ガーリックチキンソテー、しゃぶしゃぶなどの脂質を抑えた肉料理にすれば、カラダへの負担も軽減されます。

消耗の激しい夏は鉄&ビタミンを積極的に摂る

発汗によりミネラル成分が体外にどんどん排出されると、ヘモグロビン値が下がり、貧血状態に。これも夏場に持久力が低下する要因です。夏場は鉄を含む食品を意識して摂りましょう。また、疲労回復を助け、日焼けによるダメージを予防する抗酸化成分を含む食品もチェック。ビタミンA・C・E(ビタミンエース)
を積極的に摂って。

POINT
ほうれん草、小松菜などの緑黄色野菜は鉄を含むが、体内に吸収しにくい。たんぱく質やビタミンC とセットで摂ることで吸収率がアップ。肉野菜炒めや食後に100%ジュースや果物をプラス。また、納豆・豆腐など、たんぱく質と鉄を両方含む食材もおすすめ。

朝の炭水化物+汁物でトレーニングの質をアップ

夏は睡眠中もかなり汗をかき、脱水状態で朝を迎えます。朝食抜きで練習に出れば、熱中症になる危険性も非常に高くなります。欠食して失った水分量は、練習中、どんなにこまめに水分補給をしても取り戻せません。塩分を含む汁物、そしてエネルギー源となる炭水化物が摂れる朝食を食べることが、結果的にトレーニングの質を高めます。


柴崎真木さん(管理栄養士)柴崎真木さん【管理栄養士】
アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。

※2023年7月15日発行「アスリート・ビジョン#30」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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