疲労と活力のバランスを整えて100%パフォーマンスを引き出す!【休養のプロの聞いた】

皆さんは効率よく休養を取れていますか。「睡眠時間は十分なのに、なかなか疲労が抜けない」という人もいるかもしれません。その原因は休養サイクルの乱れにあると考えられます。そんなことにならないよう、しっかり休養を取り活力を養うことが大事です。効果的に休養を取り、活動能力を増進させる方法を、日本リカバリー協会の片野秀樹さんに伺いました。

休養サイクル

活力を加えて理想的なサイクルにする

私たちの生活は現状、①活動(運動や勉強)→②疲労→③休養(睡眠など)という三角形のサイクルで回っています。しかし、これでは常に疲労という負債を抱えていることになり、活力(活動能力)を蓄えることができません。言い換えるなら、携帯電話の電池が常に減っている状態です。

このまま大事な試合を迎えると、注意力が散漫になって試合中に大きなミスをしたり、ケガをする可能性があります。日常的に疲労を抱えている人は、このサイクルを見直してみましょう。③休養のあとに④活力を加えた四角形のサイクルにすることで活力を蓄えた状態で活動できるようになるでしょう。また休養によって活力を蓄えるという、理想的なサイクルができあがります。

オーバートレーニング症候群

ときにはトレーニングを休止して回復に努める

疲労が十分に回復していない状態で運動を続けると、オーバートレーニング症候群に陥る可能性があります。トレーニングを休止してしっかり回復しないといけないのに、それに気づかない。日常のルーティンがあってトレーニングの時間をコントロールできない。あるいはチームで同じ練習をこなさなければならず、 一人だけ「今日は体調がすぐれません」とは言いづらいという人もいるでしょう。

でも、最大限のパフォーマンスを引き出すためには、自分自身としっかり向き合い、ときには「休養を取るべきだ」と判断をする必要があります。または、指導者も練習を休止したり、負荷を軽くするなど配慮しなければいけません。

フィットネス理論

「体力−疲労」がパフォーマンスの量を表す

例えば、トレーニングによって体力が「+10」になったとします。この時に、自分自身の疲労が「−12」だったとする。その場合、出せるパフォーマンスは「−2」です。このように、「体力−疲労」が、自分自身が出せるパフォーマンスの量を表します。それが「フィットネス疲労理論」です。

グラフを見るとわかるように、トレーニングを中止すると体力は時間の経過に伴ってだんだん落ちていきます。逆に疲労はどんどん減少していく。これを「体力−疲労」の法則に当てはめると、もっとも高いパフォーマンスを出せるのが「+2」のときになります。つまり、試合がある日にパフォーマンスを100%出せる状態にしようと思ったら、その日に向けて疲労を少なくしていくことが重要だと言えます。

休養モデル

7つのタイプで効果的に休養を取る

では、どうやったら休養が取れるのでしょうか。もちろん睡眠は絶対に大切です。しかし、眠る時間が短いから休養も取れないかというと、そんなことはありません。他にもこんなにたくさんの休養の仕方があるのです。

ここでは自分の心とカラダに向き合い、うまく休養を取れるようになるための「7つのタイプ」を紹介します。 これらは組み合わせ方次第で何通りも考えられます。大事なのは、「休養は寝ることでしか得られない」と思い込まないこと。趣味や好きなことをベースに自分なりの休養の取り方を見つけてください。

1.休養タイプ

代表格が睡眠です。休憩や仮眠もこれに含まれます。できるだけ活動を休止し、心身をリラックスさせます。消極的休養(パッシブレスト)とも言われます。

2.運動タイプ

ウォーキングやストレッチ、ヨガなど休養を目的とした軽い運動を指します。フレッシュな血液を細胞の一つひとつに送り届け、疲労物質を回収します。いわゆる積極的休養(アクティブレスト)です。

3.栄養タイプ

正月疲れが出はじめた頃に食べる七草粥が典型的な例です。時には消化器系を休ませるために、カロリーを抑えてバランスよく栄養素を摂取することや負担の少ない食事をとることが重要です。

4.親交タイプ

人や社会との交流からも休養は得られます。友人とちょっとした立ち話でも構いません。動物と触れ合ったり、自然の中に身を置くことで活力を養います。

5.娯楽タイプ

読んで字のごとく、好きなことを楽しみます。読書、音楽、山登り、釣りなど何でもOK。一定時間であれば、ゲームも心をリフレッシュさせる効果があります。

6.造形・想像タイプ

日曜大工をしたり絵を描くなど、創作することで心理的な休養を得ます。また、「空を飛んでいる」など何かを想像することによって、ストレスを忘れることができます。瞑想も一つの方法です。

7.転換タイプ

環境を変えることで気分をリセットします。例えば、旅行に出ること。部屋の模様替えをしたり、壁の色を変えたり、洋服を変えるだけでも心の休養になります。

休養ポイント

好きなことで自分なりの休養を見つけよう

休養モデルの7つのタイプを組み合わせることで、総合的、効果的にリフレッシュできます。
例えば、趣味で絵を描くのが好きな人は、【娯楽タイプ】と【造形・想像タイプ】の2つのタイプの休養を取ることができます。さらに絵画クラブに入れば、そこにはたくさんの会員がいるので【親交タイプ】を加えることができるでしょう。山に行って絵を描くことで、山登りという【運動タイプ】も入ってくる。そこでお弁当を食べれば【栄養タイプ】になり遠出すれば【転換タイプ】とも言えます。

片野 秀樹 さん
博士(医学)、日本リカバリー協会代表理事。2021年に「休養」を学問として体系立てた編著書『休養学基礎』(メディカ出版)を刊行。休養学の第一人者として啓発活動を続ける。

※2023年4月15日発行「アスリート・ビジョン#29」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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