冬のカラダづくりがパフォーマンスを生む!ウエイトコントロール戦略①【栄養のプロに聞いた】

年が明け、多くの競技は短いオフを経て、来シーズンを見据えた準備期に突入。1年をとおして戦うカラダの基礎づくりは、今から春の試合期までに取り組むべき課題の一つだ。そこで、カラダの基礎づくりに欠かせない、ウエイトコントロールを大特集。理想のカラダを実現し、パフォーマンスアップにつなげよう!

正しいウエイトコントロールについて知り、結果を残せる新シーズンを目指す

学生アスリートは、学業との兼ね合いで、練習のスケジュールやトレーニング量が左右されやすいのが特徴です。そのため、1 日の消費エネルギー量の変動が激しく、生活サイクルも不規則になりがち。すると、十分な食事量が摂れない、消化吸収がうまくいかないなどの理由で、実はウエイトコントロールが難しい環境下にいます。それだけに、場当たり的に食事量を増やす・減らすだけでは、理想のカラダは手に入りません。ウエイトコントロールの正しい知識を身につけ、計画的にカラダづくりを行いましょう。

RULE1: 理想のカラダ、達成する期間を明確にする

アスリートがウエイトコントロールを行う目的は、「体重制限」ではなくパフォーマンスの向上やケガの予防にあります。そのために「重さ」ではなく「カラダの中身」を調整します。適切な筋肉量の増加、体脂肪の減少によって、体組成をコントロールし理想のカラダをつくっていきます。

「どんな体格にしたいか」「どれくらい筋量を増やすのか」「体脂肪を何㎏減らしたい」など、目標とする体格や体組成の数値をできるだけ明確に持ちましょう。

RULE2: ウエイトコントロール≠体重コントロール

日々、1〜2㎏の体重の変動で「太った!」「ヤセた!」と一喜一憂するなかれ。体脂肪や筋肉は、急には増減しません。一時的な数値の変動の正体は、水分とグリコーゲン。これらは食事や水分、発汗によって増減しやすく、それが体重に現れます。体重だけに振り回されず、体組成の数値もチェックしましょう。

イメージしてみよう!体脂肪1㎏の増減

RULE3: 今のカラダの状況を見極め、食べるもの、食べ方を選択する

ハードな練習後は消化能力が低下するため、食欲が落ちることも。「筋量をアップしたいから」と無理して食べても、内臓に負担がかかるうえ、消化吸収もうまくいきません。エネルギー不足にならないようしっかり食べることも必要ですが、脂質の少ないものや消化酵素を含むものを選ぶ、よく噛んで食べるなど、体調に合わせた食べ方を選択することも大切です。

RULE4: 体重と体組成の変化を正しく観察する

体重、体組成を正しく計測することは、ウエイトコントロールがうまくいっているかどうかを判断する材料になる。2つのポイントを守り、毎日、体脂肪と除脂肪の量の推移をチェック。

POINT①
体脂肪率はキログラムに換算。体脂肪、除脂肪はそれぞれ何kg あるかを明らかにする。
POINT②
体重は起床して排尿後、何かを口にする前に毎日、同じ服装で計測する。

覚えておこう!体重の内訳

RULE5: 休日も油断せず「規則正しく」を心がける

実は減量・増量ともにつまずきやすいのがオフの日。昼まで寝ていて朝食を抜く、昼食もしっかり摂らないなどで食事量がガクンと落ちる人もいれば、気が緩み好きなものを好きなだけ食べてしまう人も。これを毎週末繰り返しては、ウエイトコントロールはうまくいきません。オフの日も平日と同様のエネルギー収支を保てるよう、心掛けて。

減量時は相対的栄養不足に注意

スポーツ界では長年、極端な減量による『相対的エネルギー不足』が問題になっています。人間 のカラダは厳しい食事制限によってエネルギー不足を起こすと、生命を維持するために他の重要な機能を停止。骨作りに栄養を回さない、筋肉量を減らす、女性の場合は月経を止めるといった 現象を引き起こします。減量中、持久力や集中力が低下した、貧血になった、気分にむらが出る、トレーニングをしてもなかなか筋肉が増えていかない……などの症状を感じたら要注意。

階級制競技の急速減量とは?

階級制競技の選手の中には、計量に向けた急速減量を行う人もいますが、あくまで、計量後に元の体重に戻すことが前提の方法。安全のため3~7日の短期間で行うこと、減量の幅は体重の5 ~8%にとどめることが実行時の条件です。急速減量では、水分や炭水化物、食物繊維の摂取量を制限し、体内の水とグリコーゲンを減らしていきます。長期間実施したり、「やせたいから」と他競技の選手が安易に真似をするのは避けましょう。


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柴崎真木さん(管理栄養士)柴崎真木さん【管理栄養士】
アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。

※2022年1月15日発行「アスリート・ビジョン#24」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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