メンタルは鍛えられるのか?
インカレやリーグ戦が盛り上がる秋。大切な試合で実力を発揮するためには、カラダだけでなく心にも目を向ける必要があります。どうすれば本番で実力が発揮できるようになるのか、ドクターとして多くのアスリートをサポートしている金井貴夫先生にお聞きしました。
メンタルは誰でも強くなる
「メンタルが弱い」は自己暗示
練習ではできるのに本番になるとできない人は、メンタルが弱いのではなく本番で実力が発揮できないだけのこと。その原因を見つけて適切なトレーニングを行えば、誰もが本番で実力が発揮できるようになります。つまり、世の中にメンタルが弱い人はいません。それは、メンタルが弱いと自分自身で思い込んだり他人から指摘されたりして、自己暗示にかかっているだけなのです。
メンタルとカラダの関係性
自律神経がメンタルをコントロール
本番で実力が発揮できる状況を医学的に説明すると、緊張しすぎずリラックスしすぎず適度な緊張感を維持した状態ということになります。この状態は平常心、無の状態、フロー、ゾーンとも呼び、カラダの調子を整える働きをコントロールする自律神経と密接に関わっています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、この2つの神経のバランスがとれていると、適度な緊張感を維持することができるのです。リラックスしているときの脳波は、12〜13Hzのα波が出ており、ゾーンの状態に入っているときには、それよりも少し周波数の速い、12〜15HzのSMR(Sensory Motor Rhythm)波が出ています。メンタルトレーニングによってこれらをコントロールすることができるのです。
メンタルは鍛えることができる!
メンタルトレーニングで集中力アップ
「メンタルトレーニング」という言葉が示すように、メンタルは筋肉と同様に鍛えることができます。例えば本番前、口角を上げてスマイルを作るだけでも、気持ちが前向きになり集中力がアップします。メンタルトレーニングは、イメージトレーニングや瞑想、呼吸法など多岐にわたり、自分に合った方法を取り入れることで、本番で実力が発揮できるようになります。
イップス外来のご案内
国立精神・神経医療研究センター
国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)の脳神経内科外来にて、奇数水曜日(第1・3・5水曜)の午前中にイップス外来を開設しています。対象は、高校生以上のスポーツ選手・演奏家。プロ、アマは問いませんが、本気で競技・演奏に取り組まれている方、かつ、練習など普段はできるのに試合・本番ではできない方となります。診療日は第1・3(・5)水曜日で、新患は午前中のみ毎回2名限定で完全予約制となります。国立精神・神経医療研究センターの予約方法からご予約ください。
費用は、すべて保険診療の範囲内です。他院からの紹介状のご用意がない場合は、初診時に医療費とは別に選定療養費として¥5000(税抜)が加算されます。
金井貴夫さん
公益財団法人東京都保健医療公社 多摩北部医療センター 精神科医長。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 脳神経内科非常勤医師(イップス外来担当)。機能性脳画像研究、心身医学、スポーツ医学、睡眠医学が専門。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会医科学強化スタッフ、日本自転車競技連盟ナショナルチームドクターとして、Jリーガーや日本自転車競技ナショナルチームなど多くのアスリートのみならず演奏家などが「本番で実力を発揮できるよう」サポートしている。
※2019年10月10日発行「アスリート・ビジョン#15」掲載/この記事は取材時点での情報です
※2021年11月9日 更新 /イップス外来のご案内 /監修者プロフィール