甲子園ボウル優勝5回を誇り、数多くの日本代表選手も輩出してきた法政大学アメリカンフットボール部。勝利を目的とするだけではなく、主体性を育み、社会で活躍できる人間に成長することを重要視する理念にひかれ、ここで日本一でなりたいと入部する選手も多い。150名を超える大所帯を組織をまとめあげるチームの運営方法やコンディショニング、栄養管理について、ヘッドコーチ、選手、スタッフの皆さんに聞きました。
理念は「自由と進歩のフットボール」。主体性を重んじ社会で活躍できる人間へ
法政大学アメリカンフットボール部
創部は1935年。関東リーグ戦優勝19回、甲子園ボウル優勝5回。2022年は関東大学リーグ2位。部員数150名超を擁する、法政大学体育会の中でも最大規模を誇る。愛称は大学のスクールカラーを象徴する「オレンジ」。
「自由と進歩」のもとに、個々が成長する/富永一 ヘッドコーチ
「自由と進歩」という法政ORANGEのフィロソフィーのもと、出来る限り学生が中心となって練習や部の運営に取り組んでいるところが我々の強みです。もちろん、試合で勝つことは重要なことですが、個々の成長があった上で最終的に結果がついてくることが理想です。
富永一 ヘッドコーチ/法政大学出身。シーガルズでコーチとしてのキャリアをスタート。ディアーズ、日本代表チームを経て、2022年法政大学アメリカンフットボール部のヘッドコーチに就任した。
自分の考えを部員と共有する
チームの成長や日本一に繋がればと、考えていることは部員に発信するようにしています。主将としてチームを引っ張るのはもちろんですが、役割を周りに任せ、部員が成長できる環境づくりも。そういう意味で、「自分一人で頑張りすぎない」ことを心がけています。
滝沢叡さん 4年生(WR)主将/法政大学第二高校出身。高校時代も主将を務め、チームをまとめた。持ち味は「のびのびとプレーができること」。
積極的に前に出てチームを支える
4年生の幹部や主将からも「自分が主将だというくらいの気持ちで」と言われています。チームや主将を支える立場として、4年生が危機感を抱くほど脅かせられるよう、3年生以下の勢力をあげられるよう、先頭に立って頑張りたいです。
山田晋義さん3年生 (DL)副将 /日本大学鶴ケ丘高校出身。試合中でも「冷静に分析できる」のが武器。対人で圧倒できる強さを構築中。
チームに不可欠な選手を目指す
現在リハビリ中なので、まずはしっかりと足のケガを治して、今年はカラダ作りもテーマにしていきたいと思っています。いずれは同じ高校出身の先輩、星野(凌太朗)さんのように、チームにはなくてはならない存在になりたいですね。
小松桜河さん 2年生 (RB)/日本大学第三高校出身。昨年9月の関東学生TOP8で計3つのタッチダウンを奪い、開幕戦で得点王に。
チームため先輩後輩関係なく発言する
性分的に気になると口に出すタイプなんですが、プレーにおいては先輩後輩関係なく発言することがチームのためになると考えています。いずれはチームの中心となって、日本一に貢献できるような選手になりたいです。
高津佐隼世さん 2年生(WR)/佼成学園高校出身。小学3年生でアメフトを始めた。目標はチームの中心となって日本一に貢献すること。
周りの人と協力し、環境づくりでチームをサポート
選手同様、自分たちもチーム運営の大きなところを担っている一人として、同じ納得感を持ってできる部活動にしたいと考えています。マネージャー業務を通して一番学んだのは、周りの人と協力する大切さです。私たちスタッフも、環境づくりでチームをサポートし、みんなで作り上げて行くこの環境を維持していきたい。そして最後はチームの目標である日本一を達成したいですね。
山縣美優さん 4年生 主務/日本大学第二高校出身。高校まで13年間、チアダンスを続け、全国大会2位の経験も。「今度は支える立で日本一を」と、大学入学と同時にマネージャーに。今年度は主務に。事務的な作業からパイプ役を務めるなど、役割は多岐に渡る。
CLOSE UP/ 栄養
年2~3回の栄養講習で意識づけ、目的に応じた食事アドバイスも
年に2~3回栄養講習を実施し、学業とスポーツ両面でパフォーマンスを発揮するために食事の大切さを浸透させるとともに、自らが適切な栄養管理を行えるようにしている。
「たんぱく質は毎食意識的に摂っています。脂質は減らしすぎず、魚やアーモンドなどから良質なものを摂るようにしている」(山田選手)と栄養への意識は高い。体重増がテーマであれば、「間食を増やしたほうがいとアドバイスされて、練習前後や筋トレ後にこまめに栄養を摂取しています」(小松選手)という。さらに、ウエイトコントロールや筋肉をつけたいなど悩みがある部員は、ニュートリション担当の学生トレーナーが管理するチャットツールに食事の写真を送り、目的に応じたアドバイスをもらっている。
小松選手の補食。おにぎりの中身は、疲労回復に役立つ梅干しと、たんぱく質とDHAが豊富なツナ。果汁100%オレンジジュースも一緒に
山田選手の補食。エネルギーとなるご飯(糖質)、トレーニングで壊れた筋肉の修復に、鶏の胸肉やブロッコリー(たんぱく質)、栄養満点の三つ葉(ビタミンAやC、鉄分、ミネラルなど)を摂っている
CLOSE UP/ トレーニング
激しいコンタクトスポーツだからこそ、鍛えるべき筋肉を徹底的にトレーニング
主体性を持って取り組むのが強みということもあり、練習内容も選手中心に考えている。激しい接触が伴うコンタクトスポーツであることから、チーム全体として週に3~4回のウエイトトレーニングが推奨されている。フィールドでの練習前にマシンなどを使って3時間、なかには週5回実施する部員も。「大学に入ってからウエイトへの意識が高まった」(高津佐選手)と各自その重要性を実感している。また、「寝る前に毎日必ず30~40分ストレッチ」(山田選手)、「練習前は時間に余裕を持ってストレッチしてカラダのメンテナンスに気をつけています」(高津佐選手)と、ケアも入念に行う。ケガをしている部員はメディカル担当のトレーナーと相談しながらリハビリを行っていく。
選手個々が課題を持って取り組んでいるウエイトトレーニング。「体重が増えた」、「筋肉の質が変わった」と、筋トレ効果を実感している
CLOSE UP/ チームづくり
学生主体となって実践するチーム運営、チームの一体感を醸成する環境づくり
チームの戦略に大きく関わるSA(スチューデントアシスタント)、「メディカル」「ストレングス」「ニュートリション」の3部門で成り立つトレーナー、主に広報業務を担うマーケティング、マネージャーなどに役割分担して活動する。各部門のチーフに主将、副主将を加えた8名を中心に、部の運営を円滑に行い、ときには学生とスタッフのパイプ役も担う。「スタッフとコミュニケーションを取りながらすり合わせていかないといけない。役割が細分化されているのは取り柄でもあるけど、甘えにもなる」(滝沢選手)と、チーム一丸を実現するための意識が高い。「自分たちで選択して実践していくことが多いからこそ、やり方に捉われないという意味でも可能性を秘めていると思う」(山縣主務)と、より高みを目指す集団がつくられている。
ミーティングは練習終了後20時頃から行っている。また、今年からは3、4年生を対象にリーダーシップ研修を実施。個人の成長を促し、チームの成長へとつなげていく
※2023年4月15日発行「アスリート・ビジョン#29」掲載/この記事は取材時点での情報です。
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