食事はカラダの資本 目的別に考える正しい食事【栄養のプロに聞いた】

オフ期はいわば新シーズンに向けての「ゼロ」地点。年間の食事計画でいえば、目標を定め、プランを立てるタイミングだ。そこで、この時期やるべきことから、目的別の食事ポイント 、そしてカラダづくりに欠かせない栄養素など、一気に紹介しよう。

Q.カラダづくり期にやっておきたいことは?

「昨シーズンの振り返り」と「来シーズンのプランニング」これが、この時期の食事計画に大切な2大作業です。振り返りをせず、ぼんやりしたままこの冬を過ごしてしまうと、ケガをしたり、コンディションが崩れる要因になります。また、プランなしでシーズンインすれば、カラダづくりもままならず試合期を迎えることになりかねません。来シーズンに向けていいスタートを切るためにも、まずは1年間の疲労を心身ともにリセットしてから準備をして行きましょう。

POINT①昨シーズンの振り返りと来シーズンのプランニング

まずは、1年間の成果とコンディションを振り返り、できたことできなかったことを整理。練習や試合内容、体重や体組成の変化、そして食事など、様々な角度から来季に向けた課題を洗い出しましょう。ポイントは、できるだけ具体的に課題を洗い出すこと。すると、来季の目標が明確になります。トレーニングや食事の方向性が定まると、やるべきことも具体的に落とし込めます。

TODO
☑昨シーズンの成功点と反省点を具体的に書き出す
☑好調だったときの体組成や体重をチェック
☑来季のカラダづくりの方向性を考える

POINT②心身をゆるめて休養する

心身をしっかり休めることも大事なことの一つ。ケガや疲労のリカバリーにあてながら、たまには競技から離れて、友人や家族と完全オフを楽しむなど、リラックスの時間も作りましょう。食事の面ではセーブしていた好きな食事も楽しんで。ただし、体重の増減が激しいとベスト体重に戻すまでに時間がかかるので羽目を外し過ぎないよう注意は必要です。

TODO
☑休日やオフの時間を楽しみ、英気を養う
☑好きなものを食べてリラックスする
☑体重の変動はベストから±5%以内に抑える

POINT③生活リズムを整える

特に長期休暇に入り授業がなくなると、夜更かしをしたり、朝食を抜いたりしがち。すると、体内時計が乱れ生活リズムや睡眠時間にも影響がでできます。睡眠不足になると骨や筋肉の成長を促す成長ホルモンが減少するだけでなく、代謝も下がり体脂肪が落ちにくくなります。食事と睡眠を中心に生活リズムを整え、オンオフ問わず、規則正しい生活を心がけましょう。

TODO
☑欠食せず、1日3食きちんと摂る
☑就寝・起床時間、食事の時間を定める
☑朝食は炭水化物とたんぱく質をセットで摂る 

Q.風邪予防など 冬に実践したい食事は?

感染症や風邪の予防と回復、そして免疫機能を高めるサポートをするのが、ビタミンA、C、E、D。緑黄色野菜や果物などは日ごろから積極的に摂りましょう。冬はスープや鍋料理が手軽でおすすめ。食材の栄養素を余すことなく補給できます。また、風邪などで体調を崩したときは、消化機能が低下しているので低脂肪高たんぱくの胃腸にやさしい食事を。

目的別に考える食事ポイントは?

筋力アップ

トレーニングをしているのに筋量が増えない人は、そもそもエネルギー不足になっている恐れあり。トレーニングをしてプロテインを摂っているから安心、ではなく、エネルギー不足にならないよう注意!

◎1日3食、主食をしっかり食べてエネルギーを補給。たんぱく質は動物性・植物性の両方から摂取。
◎乳製品やプロテインなど補食でもたんぱく質を補給。
◎練習量が多く体重が減りやすいときは、摂取エネルギー量をさらにアップ。

持久力アップ

エネルギー源となる炭水化物に加えて、血液の材料となるたんぱく質やミネラルも積極的に摂りましょう。特に鉄を含む食品は限られているため、食品選びから大切です。

◎鉄は、肉なら牛や豚の赤身肉、レバー。魚は内臓ごと食べられるちりめんじゃこ、ししゃもに多い。また納豆や豆腐などの大豆製品もヨシ。
◎練習量が多いときは練習の2~3時間前におにぎりとバナナを、時間のないときはエネルギーゼリー(練習30分前までOK)など、炭水化物を摂ろう。
◎練習後の補食はおにぎり、パンなどの炭水化物と乳製品やプロテインなどのたんぱく質を。

ウエイトコントロール(増量/減量)

減量・増量とも、1日の摂取カロリーを±300kcal とすることを基準にスタート。体重・体組成の推移を毎朝 朝チェックしながら微調整しましょう。体重は一気に増減すると調子を落とします。特に減量の場合は極端に食事量を落とすと省エネ体質になり、かえって太りやすくなるので要注意です。

+増量の場合
◎エネルギー過剰になると余分な体脂肪がつく。脂質ではなく、できるだけ炭水化物とたんぱく質を増やして摂取カロリーをアップ。
◎寮食や学食中心の人は、ゆで卵や豆腐、肉や魚の缶詰、市販のサラダチキン、豆腐バーなど調理いらずのたんぱく質もプラス1品添える。
-減量の場合
◎まずは「寝る前に食べない」「揚げ物、炒め油の量を減らす」「脂質の少ない肉を選ぶ」が三原則。
◎エネルギー不足を防ぎ、パフォーマンス維持のためにも、1日3食、炭水化物は食べる
+増量・-減量 共通
◎スナック菓子、ジュースなどの食事以外の間食(おやつ)での大幅なカロリー摂取は極力減らそう。

Q.カラダづくりに欠かせない三大栄養素は?

栄養素の中でも、カラダを動かすエネルギー源となるのが「炭水化物」「たんぱく質」「脂質」の3つ。それぞれ役割や1日の必要量などを押さえて、カラダづくりに活かしましょう。

炭水化物:カラダや脳のエネルギー源となる

炭水化物は糖質と食物繊維からなる栄養素で、カラダを動かすために必要なエネルギー源。また、脳を働かせる唯一の栄養素であり、集中力や思考力の維持にも不可欠です。なかでも、食物繊維を多く含む食品は吸収がゆるやかなので、エネルギーが持続。運動時の持久力をサポートします。スポーツドリンクやエネルギーゼリーなど食物繊維の少ない食品は素早くエネルギーに変わるので、運動前後や運動中に摂ると◎。ただし摂り過ぎは体脂肪の蓄積につながるので要注意です。

糖質も食物繊維も多い
ご飯、パン・穀類、麺類、イモ類、果物

糖質が多く、食物繊維が少ない
ジュース、菓子、スポーツドリンク、エネルギーゼリー

1日に必要なエネルギー摂取量は?

エネルギー摂取量は、性別、体格や身体組成、運動量(強度と時間)トレーニング目標などによって変わります。「競技種目別目標エネルギー摂取量」を参考に学生アスリートの場合、男子3500~4000kcal、女子2500~3000kcalを目安に1日の食事を考えてみてください。

エネルギー供給源である主食はご飯を中心に

1日に必要な炭水化物量は、必要エネルギー量の50 ~60%。そのうち7~8割をご飯、パン、うどんなどの主食から、残りをイモ類や果物類から摂るとバランスがよいです。さらに主食の6割以上はご飯にすると◎。たっぷりの水で炊き上げたご飯はエネルギーと水分を一緒に補給できるうえ、たんぱく質の供給源にもなるので、アスリートにピッタリの主食です。

たんぱく質:筋肉や血液、骨などカラダの組織を作る

たんぱく質は、アミノ酸の集合体。主に肉や魚介類のほか、豆・豆製品、牛乳・乳製品に含まれます。筋肉や骨、 血液や皮膚などカラダの材料になることでよく知られていますが、免疫機能の調整にも関わります。また、体内のエネルギーが不足すると、補助的にたんぱく質がエネルギー源として利用されてしまいます。筋肉を必要とするアスリートには特に欠かせない栄養素です。

1日に必要なたんぱく質量は?

アスリートの場合、摂るべきたんぱく質の適正量は体重1㎏あたり1.6 ~2.2gが目安です。たんぱく質は一度にカラダに吸収できる量が決まっていると言われるため、まとめて食べるよりも3~5 時間ごとに、食事や補食でこまめに摂ると効率的です。また、食品ごとに含まれるアミノ酸が異なるため、色々なたんぱく源を組み合わせて摂りましょう。

脂質:エネルギー源や細胞膜の構成成分となる

エネルギー源になるほか、細胞膜やホルモンの材料になる脂質。また、にんじんなどに含まれる脂溶性ビタミンの吸収を高めます。脂肪は植物や魚の油(oil) に多く含まれる不飽和脂肪酸と動物性の脂(fat) に含まれる不飽和脂肪酸に分かれ、魚の油にはn-6 系( リノール酸)、n-3 系(EPA、DHA など)、体内で合成されない必須脂肪酸が含まれています。

1日の摂取基準は?

脂質は炭水化物に続く重要なエネルギー源。少量の脂質で多くのエネルギーを得ることができるため、「脂質=太る」イメージが強く、アスリートは敬遠しがちですが、大切な栄養素の一つです。特に、必須脂肪酸を含む魚は意識して食べてください。動物性の脂にはカラダに蓄積されやすい飽和脂肪酸が多く含まれるので、摂り過ぎに注意。1日の総摂取エネルギーの20 ~30%を目安に食品を上手に選びましょう。

柴崎真木さん(管理栄養士)柴崎真木さん【管理栄養士】
アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。

※2024年1月15日発行「アスリート・ビジョン#32」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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