どんなスポーツをやるにしても、パフォーマンスやポテンシャルを引き出すために必要なカラダの動きがあります。効率的にカラダを鍛えられるトレーニングを帝京平成大学の西山朋さんに紹介してもらいます。
第7回 前方向への力発揮
~走るためのビルドアップトレーニング~
スポーツで力を発揮するときには、自分の体重を地面に伝えて、そこから反動を利用します。特に前方向への力発揮は、さまざまスポーツで必要されることの多い「走る」という場面や、コンタクトスポーツで前方向に押す動きなどに必要なものです。スタートダッシュの場面や対人競技の競り合いでの加速など、相手を上回っていくためには、ぜひとも身につけておきたい動作です。今回紹介するトレーニングで、走る(前方向)の動作を習得していきましょう。
【走るためのビルドアップトレーニング】
競技場面でのトレーニング効果の一例
☑「走る」動作のパフォーマンスアップ
☑ローディングとアンローディングの連動
(⇒第6回「垂直方向への力発揮」を参照)
☑瞬発力の向上
☑スプリントなどのスタート
☑対人競技での緩急の向上
☑コンタクトプレーでの強さ
MENU01
マウンテンクライマー
[回数目安:20回×2~3セット]
腕立て伏せの姿勢がスタートポジション。手は肩の真下につき、体幹を固定した状態で太ももの引き上げをできるだけテンポよく速く繰り返していきます。脚、股関節の可動を素早くしましょう。
NG
お尻が上がる
脚を動かすと同時にお尻が上がり、カラダが上下に動いてしまうのが、ありがちなNG例です。脚を素早く動かすことは大事なのですが、脚を動かしながらも良い姿勢を維持して体幹固定力を高めることが狙いなので、床を蹴り上げすぎてカラダがブレないように注意しましょう。
ポイント
MENU02
フロントウォールスクワット
[回数目安:10~15回×2~3セット]
通常のスクワットの姿勢で踵を浮かせて、前の壁を両手で押すような姿勢がスタートポジション。カラダが前傾するので膝が少しつま先よりも前に出ます。そこから壁を押したまま前に起き上がります。通常のスクワットは垂直方向への力発揮となりますが、このトレーニングは壁を押すので力発揮の向きが変わってきます。太もも前、股関節、お腹周りの力を意識して、相撲の立ち合いのようなイメージで起き上がります。
NG
カラダが壁と離れて起き上がる
ありがちなNGは起き上がる際に、壁とカラダが離れてしまうこと。壁をしっかり押せないと力の発揮方向は前方向ではなく垂直方向になります。NG例はスタートポジションより膝が後ろに下がっています。膝から下のポジションは動かさないようにすることが大事です。
バリエーション
片脚パターン
[回数目安:10~15回×2~3セット]
片手を壁について、ついた手の側の脚を一歩出した状態でスクワットの姿勢をつくります。このとき、前に出した脚は少し内側にねじっておきます(内旋)。この姿勢から壁を押して上体を起こしていくと、脚が伸びて股関節は伸展し、同時に脚は外側にねじれます(外旋)。股関節が外旋すると、お尻の筋肉を最大に使うことができます。両足のときは両方が止まっているため、股関節を外旋させることができないので、フロントウォールスクワットを片脚で実施することで、股関節を外旋させる動きを身につけましょう。
ポイント
MENU03
スプリットジャンプ
[回数目安:10~20回]
腰に手を当てて足を前後に一歩分くらい開いた姿勢がスタートポジション。足を前後に開いた姿勢のままジャンプし、しゃがみこんだ姿勢となり、そのままジャンプへという動作を繰り返します。片側の脚(前脚)のローディングとアンローディング、両面のトレーニングとなります。ジャンプするときは前足に加重して(7:3くらい)地面を蹴っていきましょう。
レベルアップ
シザースジャンプ
[回数目安:左右10~15回]
スプリットジャンプから空中で前後の足を入れ替えます。下肢回りの筋出力、ローディングとアンローディングを連続して行うことで、より前方向への出力、ランニング動作に近いものになっていきます。足を入れ替えても姿勢を保つことが大切です。スペースがある場合は、その場での足の入れ替えだけでなく、前に進みながら行うとよりランニング動作に近い動きを習得できます。
ポイント
MENU01では、体幹の安定性を高めつつ、素早く股関節を動かすことを覚えます。MENU 02では前方向に力を発揮するためのカラダの使い方を身につけます。前方向に移動する動作では両足が揃っている場面は少ないので、MENU 03では足を前後に開いた状態で上下方向にジャンプ。レベルアップでは足の入れ替え動作が入るため、走る動作に近い動きを実践することができます。
トレーナーからのアドバイス
スポーツの動きの中でも重要な瞬発力につながる前方向への動きを身につけると、ダッシュする場面や相手をかわす場面に生きてきます。連続動作でローディングとアンローディングをセットできるようになると、最大筋力を発揮できるようになってきます。次回はサイドステップなどの動作につながる横方向への力発揮のトレーニングを紹介します。