心とカラダのコンディショニング術
パフォーマンスに深くかかわる
スポーツにおける「メンタル」と「睡眠」

競技はもとより日常生活でも高いパフォーマンスを発揮するには、コンディショニングが大切です。気持ちを整えるメンタルコーチングや睡眠をしっかりとるための快眠術など、アスリート必見の心とカラダのコンディショニング術を紹介します。

パフォーマンスに深くかかわる
スポーツにおける「メンタル」と「睡眠」

試合になると十分な力を発揮できない。緊張してカラダがイメージ通りに動かない。その原因は練習不足ではなく、メンタルと睡眠が大きく関係しているケースもあります。

メンタルケアと睡眠の重要性は、自分が本来持っている力をきちんと発揮するために理解しておきたいことです。スポーツドクターとして多くのアスリートやチームのメンタルサポートに携わってきた金井貴夫先生に解説いただきます。

パフォーマンスと「メンタル」の関係

「本番で緊張してイメージ通りカラダが動かない」、「失敗を恐れて不安になる」、「予想していない状況になると頭の中が真っ白になる」といった悩みはありませんか。これらのメンタル面の課題が、パフォーマンス発揮を妨げているのです。

身体的にも精神的にも研ぎ澄まされた状態は、自分の力を最大限発揮できる最高の状態です。この状態に入るためには、余計な緊張や不安をなくすことが必要です。メンタルトレーニングを行って、自分本来のプレーができるようメンタルの課題を改善していきましょう。

自分ですぐにできる
メンタルトレーニング法

メンタルトレーニングには様々な手法がありますが、今回は、リラックスするための呼吸法とリラクゼーション法(漸進的筋弛緩法)をご紹介します。寝る前に、これらのリラックス法とイメージトレーニングをセットで行いましょう。

イメージトレーニングは、目標や良いイメージに焦点を当てることが大事です。そしてこれらを「毎日行うこと」がとても重要。安定したパフォーマンスを発揮するトップアスリートほど、ルーティーンが確立されています。

腹式呼吸法

自律神経やメンタルをコントロールするために、呼吸法は有効な手段です。「腹式呼吸」は、主にリラックスしたい時に行う方法で、就寝前行うことで入眠にも効果があります。

そのほかに体幹を鍛えたり、緊張をパワーに変える目的で試合前や競技の直前に行ったりする「逆腹式呼吸(腹圧呼吸)」は、交感神経を優位にして、活動性を高める呼吸です。

漸進的筋弛緩法

ストレスのかかった状態では、無意識のうちに筋肉が緊張しています。意識的に筋肉に力を入れて、緩めるを繰り返すことでリラックスする方法です。

上の図以外にも、首や額、背中、お腹、お尻、脚などにも応用可能です。力を入れている時と、抜いている状態をよく感じることがポイントです。また、入眠困難を抱えた選手は、個人差はありますが1ヶ月程度続けることで、症状が改善する傾向があります。

パフォーマンス強化の鍵は「睡眠」が握る

アスリートに限らず、十分な睡眠がとれていない人は多くいますが、一流のアスリートほど睡眠時間の確保や、就寝環境に気を配っています。それはパフォーマンスに対する睡眠の重要性を理解しているからです。

睡眠は、日々のトレーニングや大会への準備、リカバリー手段として必要不可欠な習慣。しっかり睡眠をとることは、本来の実力を発揮するための大前提と言えます。良質な睡眠には規則正しい生活リズムが基本です。寝る前の習慣や寝具なども見直してみましょう。

自分の睡眠の質をチェック。睡眠を妨げている原因を考えよう。

「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「眠りが浅い」といった症状はありませんか。このような状態は一般的には「睡眠障害」と呼ばれ、集中力が妨げられ、感情も不安定になり、良い結果には結びつきにくいものです。就寝前のSNSチェックは、パフォーマンスを低下させることが、研究から明らかになっています。

また、カフェイン・アルコールによって睡眠が障害されている方も意外に多くみられますので、注意が必要です。良質な睡眠を妨げる行動は、アスリートとして見直していきましょう。

睡眠時間はどれくらい必要か?

睡眠時間は個人差もありますが、平均で7時間前後です。ごく稀に6時間程度の睡眠でも活動できる「ショートスリーパー」もいますが、激しい運動で酷使したカラダを回復しなければならないアスリートは、ショートスリーパーではいけません。

自らの睡眠適正時間を知り、一定のリズムで入眠、起床し、睡眠覚醒のリズムを作ることが何より大切です。まずは、毎日同じ時刻に起床することから始めてみましょう。

金井貴夫(かない・たかお)さん
公益財団法人東京都保健医療公社 多摩北部医療センター 精神科医長。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 脳神経内科非常勤医師(イップス外来担当)。機能性脳画像研究、心身医学、スポーツ医学、睡眠医学が専門。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会医科学強化スタッフ、日本自転車競技連盟ナショナルチームドクターとして、Jリーガーや日本自転車競技ナショナルチームなど多くのアスリートのみならず演奏家などが「本番で実力を発揮できるよう」サポートしている。

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