心とカラダのコンディショニング術
大切な試合は楽しい実験!?
本番発揮力をUPさせる方法

競技はもとより日常生活でも高いパフォーマンスを発揮するには、コンディショニングが大切です。気持ちを整えるメンタルコーチングや睡眠をしっかりとるための快眠術など、アスリート必見の心とカラダのコンディショニング術を紹介します。

大切な試合は楽しい実験⁉
本番発揮力をUPさせる方法

秋のリーグ戦やインカレでベストなパフォーマンスをするには、夏の時期にモチベーションを下げずに練習することが大切です。

大切な試合で実力を発揮できるメンタルの状態は、どのようにつくるといいのでしょうか。学生からの質問に、ナショナルチームや数々のトップアスリートのメンタルコーチを務めてきた一般社団法人フィールド・フロー代表の柘植陽一郎さんにアドバイスをもらいます。

お悩み1/メンタルが弱い

Q:コーチや周りからも「メンタルが弱い」と言われ、自分でもそう思います。どうすればいいでしょうか?(テニス部1年)

【メンタルコーチからのアドバイス】

起こること一つひとつに対して具体的な対策を考えることで、「メンタルが弱い」というレッテルは自然と剥がれていきます

コーチや周りの人、自分自身が「メンタルが弱い」というレッテルを貼り続けていてもあまり良いことは起こりません。なぜなら、そうすることで「自分はメンタルが弱い」という思い込みが強くなってしまうからです。

メンタルについては、強いとか弱いとか二極化するのではなく、本当はどうなりたいのか、何かチャレンジできることはあるか、というようにすべてを具体的に考えてみましょう。思考のパターンや行動パターン、そしてパフォーマンスも変わってきます。

お悩み2/すごく緊張する

Q:大切な試合の前にはすごく緊張します。緊張すると思うようにプレーできなくなるのを直したい。(サッカー部2年)

【メンタルコーチからのアドバイス】

試合は様々なチャレンジができる実験の場。自分と対話することでメンタルの質を高める。

緊張は悪者ではありません。緊張は誰にでも起こり得ること。さらに言えば、適度な緊張は高いパフォーマンスを発揮するために必要なものでもあります。大切なのは、緊張が強すぎると感じた時に自分自身と質の高い対話ができるかどうか。

例えば、サッカーの試合で勝敗を決めるPKを蹴る状況の場合。「今、自分は緊張しているね。とはいえ、ここでゴールを決めたいね。よし、シンプルに“焦らずに自分のリズムを大切に”して蹴ろう」というように、今の自分の状態に気づきそれを受け入れた上で自分がコントロールできるものに意識を向けることで、緊張に引きずられなくなります。

さらに、試合を特別なものだと考えず、様々なチャレンジができる楽しい実験の場としてとらえることも大事です。

 

お悩み3/振り返れない

Q:試合が終わっても次にどう活かせばいいかわかりません。何をすればいい?(野球部3年)

【メンタルコーチからのアドバイス】

暗い「反省会」ではなく楽しく真剣に「振り返り会」を行い、活発に意見を交わす。

勝敗に関係なく試合後の振り返りは大事ですが、「反省会」と称し眉間にしわを寄せてダメ出しばかりするのはNG。振り返りの目的は、今より素敵な未来をつくること。せっかくの貴重な実験の場(試合)を経験したのだから、仲間同士楽しく真剣に「振り返り会」をしましょう。

結果の良し悪しに関わらず、良かったところと改善ポイント(伸びしろ)両面を振り返ってみてください。みんなの前で話しにくい場合は、2人組になって今日の試合でできたこと、何が変わればプラスになるのかなど、お互いの意見を否定せず話し合うと自己効力感も高まります。

お悩み4/ミスをする

Q:試合中によくミスをします。気を付けていてもどうしてもミスをして、チームに迷惑をかけてしまいます。(ソフトボール部2年)

【メンタルコーチからのアドバイス】

ミスを減らすために準備しておくことに加え、ミスが起きた時の対象法も決めておく。

まずミスの原因が、技術的問題なのか、コミュニケーションの問題なのか、気持ちの問題なのかを分析して、次の試合に向けて準備することが大前提。

それでもミスは起きるものです。とくに団体競技の場合、仲間への罪悪感でミスを引きずる悪循環に陥りがちです。そうならないために、ミスは当然起こるものとして想定して、仲間と事前にコミュニケーションをとっておきましょう。

例えば、「ミスをしたら声掛けをしてもらう」というように、ミスをしたときの対処法を決めておけば、そこで切り替えのスイッチが入り前向きになれます。

お悩み5/計画できない

Q:練習、勉強、バイトでとにかく忙しい。どうすれば大切な試合にピークを合せられますか?(野球部2年)

【メンタルコーチからのアドバイス】

タイムラインをつくって見える化する。成長サイクルが回れば、自然とピークが合わせられる。

例えば、3カ月後に大切な試合がある場合。試合までの3カ月間のスケジュールを書き出し、それをミニパイロンなどに貼って並べて時間軸を作る。

そこを実際に歩いてみると、「ここで試験があるから、練習を前倒しでやらないと大変になる」とか「ここにバイトを入れたら、追い込む練習ができなくなる」というように、臨場感のあるリハーサルができます。

本番で結果を出すには、ポイントが5つあります。みなさんの悩みが、どのタイミングで取り組むと解決できそうな問題なのかを考えて、他の悩みにもアプローチしてみてください。
<結果を出すためのメンタルのポイント>
① 日頃からの習慣づけ
② 試合1週間前から当日までの調整
③ 試合前にやること
④ 試合中にやること
⑤ 試合後にやること

 

柘植陽一郎(つげ・よういちろう) さん
スポーツメンタルコーチ、一般社団法人フィールド・フロー代表。専門はメンタル、コミュニケーション、チームビルディング。日本と韓国でスポーツメンタルコーチ養成講座を開講し、卒業生は国内外で活躍している。著書に「最強の選手・チームを育てるスポーツメンタルコーチング」、「成長のための答えは、選手の中にある」(共に洋泉社)

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