秋の全国大会が始まる目前やリーグ戦が続く時期に、陥りたくないのが睡眠不足。睡眠時間を削って練習しても、実力を発揮できません。コンディションに深く関わる睡眠不足の問題を理解し、対策を講じましょう!
(日本睡眠学会) http://www.jssr.jp/
→睡眠のプロに聞いた 「睡眠不足」7つの真相 カラダへの影響と対処【前編】
有竹清夏さん
博士(保健学)。
埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科検査技術科学専攻准教授。
専門分野は臨床生理学、睡眠学、時間生物学。
4.妙にお腹が空いてしまう……睡眠不足で食欲増進
慢性的な睡眠不足が及ぼす深刻な影響のひとつが、食欲の増進です。
食欲をコントロールするホルモンにはグレリン(促進)とレプチン(抑制)がありますが、睡眠が不足するとレプチンの分泌が低下して、食欲を抑制できなくなります。
ウェイトコントロールが重要なアスリートにとって、これは大問題。異常にお腹がすいて炭水化物を欲するようなときは、睡眠不足が関わっているかもしれません。
5.他人ごとではない睡眠時無呼吸症候群
その名の通り、睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」は、アスリートにとっても無縁ではありません。カラダが大きく肥満気味の人がなりやすいといわれますが、痩せ体型でも、顎や骨格の形状が影響して起こる場合があります。
呼吸が繰り返し止まるので、血液中の酸素濃度が下がり、カラダに溜まった乳酸の処理も遅れ、疲労が蓄積されるので、パフォーマンス低下につながります。睡眠の質が低下するため、日中の過度な眠気を自覚することも多くなります。
6.「仮眠タイム」を戦略的に作る!質を高める工夫も!
睡眠不足を解消する手軽な方法が仮眠です。
20 分取るだけでも、取らないよりずいぶん効果的。
例えば、通学時の電車の移動時間を仮眠タイムとするなど、戦略的にスケジュールに組み込みましょう。また時間の量だけではなく、質を高める工夫も必要です。
寝室の灯りは落とす。騒音の影響を受けないようにする。快適な室温・湿度を保つ。
寝苦しいと、どうしても睡眠の質が下がるので、枕やマットなどの寝具にも気を配りましょう。
長時間同じ姿勢を取り続けても背骨のS字湾曲を保てる、硬すぎず柔らかすぎないマットを選んでください。柔らかすぎるマットは背骨が不自然に曲がってしまうので注意。
7.眠れない夜はベッドから出るのも手
大事な試合を控えていると、緊張して眠れないこともあるでしょう。
「どうしても寝なくちゃ!」と思いすぎると余計に眠れず、「今晩また眠れないかも」という予期不安にさいなまれることも。眠れない時は無理に眠ろうとせずに、ベッドから起き上がり、寝室から出てしまいましょう。眠気がやってくるまで寝床から離れて、ゆったりと過ごしてみて下さい。
眠れない状態で布団に入っていることが苦痛でないなら、そのまま目を閉じているうちに眠れることもあります。一晩眠れないくらいはさほど問題ありませんが、不眠が続くようならチームのドクターやトレーナー、あるいは専門機関に相談してみましょう。睡眠クリニックや睡眠外来は全国各地にあるので、受診してみるのも良いでしょう。
※2018年10月5日発行「アスリート・ビジョン#11」掲載/この記事は取材を行った2018年8月時点での情報です