眠りで今よりもパフォーマンスアップ。良質な眠りを得るための睡眠メカニズム【睡眠のプロに聞いた!】

学生アスリートの悩みの一つに、「布団に入っても眠れない」「睡眠の質が良くない」など、睡眠に関するものが挙げられます。夏の寝苦しさに加え、早く起きて朝練に向かったり夜遅くまで練習したり、不規則なスケジュールで睡眠時間が短くなる人も多いことでしょう。より良い睡眠を確保するためには就寝前の過ごし方が大切です。今回は睡眠のメカニズム、睡眠の質をより向上させる方法を睡眠専門医の白濱龍太郎さんに伺いました。

良質な眠りを得るための睡眠メカニズム

なぜ睡眠は大切なのか?
アスリートと睡眠の関係は?

コンディションがパフォーマンスを左右するアスリートにとって、睡眠は大切にしたい生活習慣です。ところが、アスリートは常に過緊張状態にあり、うまく眠りにつけていないのが実態です。ハードな練習に加えて、学業やバイトなど学生アスリートの多忙な生活パターンも睡眠にとっては良い環境とは言えません。また、リカバリー(疲労回復)の手段の一つとしても睡眠は必要不可欠です。睡眠不足に陥ればケガや故障のリスクが高まり、風邪などもひきやすくなります。メンタル面でも、焦りや不安感が強くなり、精神が不安定になることも。プレー面では集中力や判断力も低下します。パフォーマンス結果は睡眠と表裏一体。裏を返せば、良質な睡眠を得ることで、パフォーマンスにもいい影響を与えると言えるでしょう。

良質な睡眠を得るカギは
「深部体温」と「副交感神経」

運動後は交感神経が活発になり戦闘モードに入っているため、布団に入ってもなかなか眠れないことも多々あります。さらに夏は暑さで寝苦しさも加わります。そのため人は機械のように簡単にスイッチを切り替えられません。「深部体温」と「副交感神経」を整え、戦闘モードから通常モードへ戻し、入眠のための準備が必要です。

深部体温を調整する

お風呂に入って深部体温(脳や内臓など体内の温度)を上げ、筋肉の弛緩を緩めます。入浴後90分くらいで深部体温が下がり始めると眠くなってきます。

副交感神経を優位にする

ストレッチをしたり、音楽を聴いたり、好きな香りを嗅ぐなど、リラックス状態を作り、副交感神経を優位にすることが大切です。

遠征や合宿などは、いつも家で使っている寝具が使えないこともあるので、自分なりの入眠ルーティンを作っておくとよいでしょう。

睡眠の質を高めるストレッチ

寝る前の軽いストレッチは快眠にもつながります。1日の疲れもリセットして、カラダと心をリラックスさせましょう。

首もみ

POINT

浴槽に浸かれるのであれば、その中で行ってもOK。その際は入浴剤などを入れると、より血流が促進され、疲労回復効果を発揮する。

腕回し

足首曲げ

POINT

深呼吸やゆっくりストレッチを行うことは、副交感神経を優位にする助けになる。

夏場は室内を適温に!冷やしすぎるのはNG

夏場の熱帯夜は寝苦しく熟睡が困難になります。ここで紹介した入眠までの準備に加えて、寝る直前までエアコンで室内の温度を少し下げて、快適な環境を整えます。除湿器などを使って温度と湿度をキープし、入眠後にオフになるようタイマーを設定すると良いでしょう。暑いからといって、むやみに冷やしすぎるのはカラダの熱を放熱する機能を妨げるので注意します。

白濱龍太郎さん
睡眠・呼吸メディカルケアクリニックRESM新横浜理事長。筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学終了(医学博士)。慶應義塾大学特任准教授、福井大学客員准教授、日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフなどを歴任。著書に『ぐっすり眠る習慣』、『熟眠法ベスト101』(アスコム)など。

※2023年7月15日発行「アスリート・ビジョン#30」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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