今年創部101年目を迎えた明治大学体育会山岳部。卒業生には海外での登頂を成功させている人も多く、国内大学で唯一、学生・OBでヒマラヤ8000m峰14座を完登している伝統ある部です。スポーツ経験は関係なく参加でき、可能性が無限に広がっている山岳部の活動を「目の前のことを一生懸命楽しんでもらいたい」と監督。チーム全員で難度の高い山を目指す山岳部のメンバーに話を聞きました。
登山史に名を残すOB多数 100年の志と絆をつなぐ
明治大学体育会山岳部
大正11年(1922年)に創立して以来、現在も活発に活動を続ける。卒業生に植村直己さんなど世界的に著名な登山家も。年間を通じて目的に応じた山行を行う。
厳しい自然と向き合い生きる力を育む/中澤暢美 監督
積雪期の登山でも耐えうる体力養成、それぞれの想いや個々人の強みを尊重しながらも、チーム・仲間としてのコミュニケーションを図っています。山岳部の活動を通して、卒業後の社会でも生きる力を育んでいます。
中澤暢美 監督/明治大学出身。大学入学とともに山登りを本格的に始める。1991年チョモランマ峰カンシュンリッジ(中国チベット自治区)、1992年アムネマチン峰(中国青海省)を登攀。2018年4月より山岳部監督として指導に携わる。
仲間と登る楽しさ
山の厳しい環境を経験し、体力だけでなくメンタル面で大きく成長できました。1人で登る以上に、「誰かと登る」ことはとても楽しいことなので、1年生や初心者の人でも楽しみながら体力や知識・スキルを身につけ、みんなで春の決算山行を達成できる部にしていきたいです。
川嶋すず菜さん 2年生 主将/大町岳陽高校出身。高校時から山岳部兼個人でスポーツクライミングを行い、国体にも出場。本格的に山にかかわりたいと入部。
長期縦走と雪山登山が待ち遠しい
体力的・精神的な辛さと景色のきれいさの両方を体験できるのが登山の魅力だと思います。部活に入ったばかりの今も楽しくて仕方ないので、これからの活動もとても楽しみです。この部の特徴である長期縦走と雪山登山を早く経験したいです。
福澤龍之介さん 1年生 /松本秀峰中等教育学校出身。中学3年から山にのめり込み、高校時代には個人でパーティを組んで登山に親しむ。
挑戦の先にどんな景色が見れるのか
山に登ると、自然が豊かですし、空気も平地とは違うものがあるなと感じました。忍耐力を試されるのも面白いので、まずはしっかりトレーニングをして体力をつけ、より厳しい山に挑戦したいです。
管野幸太さん 1年生 /実践学園高校出身。元サッカー部。サークルでゆるく活動するよりは「どうせなら辛いことを体験したい」と感じ入部。
自然に向きあい自分を鍛えていきたい
勝ち負けではなく、「自分の力で登り切った」という達成感があるのは、他のスポーツでは感じにくい登山のいいところだと思います。山頂で振り返って景色を見た充実感をたくさん感じていきたいです。
大平敏也さん 1年生 /浅野高校出身。元柔道部。卒業後の進路を見据え、体力をつけられてアウトドアに慣れることもできる山岳部に入部。
CLOSE UP/ チームづくり
厳しい環境での緊張感と楽しさを両立
OBを含めて年齢や序列を越えたチームづくり
登山には孤独なイメージがあるかもしれないが、荷物の割り振りや役割分担などチーム力が非常に重要となる。高山や雪山など厳しい環境下では、命の危険にさらされることもあり、緊張感を持つことは欠かせない。その一方、厳しさばかりでは心が折れてしまう。そこで同部の2023年度方針は「山を楽しむためのチームづくり」。チームとして想いを共有し、メリハリをつけた活動を心がける。OBの協力が手厚く、レギュラーと控えといった序列がない点もこの部の魅力だ。現在1、2年生のみのメンバー構成。主将の川嶋さんは数年かけて「部としての海外挑戦」「冬の槍ヶ岳などの難度の高い山への挑戦」を掲げる。
CLOSE UP/ トレーニング
体力トレーニングのみならず
幕営知識・スキルの習得も欠かさない
平日は週2回のトレーニング&ミーティング日を設け、荷物(30kg程度)を持った階段昇降、皇居ラン、自重での筋トレなどに加えて、和泉キャンパス(明大前駅)にあるクライミングウォールを活用したトレーニングも定期的に行う。休日はトレーニングまたは山行に並行して、炊事やテント設営など、幕営知識・スキルの習得も行っている。毎年の集大成である春の決算山行(合宿)に向けて、夏・冬のトレーニング山行や合宿を位置付ける。本年度の決算山行は北アルプス・爺が岳登頂を目指し、「日々のランニングや筋トレでは定量データを取り、感覚だけに頼らない育成をしたい」と中澤監督は話す。
CLOSE UP/ 栄養
荷物の重量とのジレンマを克服する「ペミカン」
少量でも高カロリー、エネルギー源になる食事を
山行中はエネルギーの消耗が避けられないため、炭水化物やたんぱく質はもちろん、ビタミンやミネラル等栄養バランスの取れた食事や水分補給が重要である。だが、食糧を持てば持つほど運ぶ荷物が増えてしまうデメリットもある。そのため、積雪期には高カロリーで腹持ちの良い「ペミカン」という保存食を自作。風味付けなども自分たちで行い、美味しく食べられる工夫を凝らしている。普段の食事でも「登山中食べられなくなることがあるので、日ごろからエネルギーになる炭水化物を多めに食べるようにしている」(川嶋さん)。「ジャンクフードや脂っこいものは口にしない」(管野さん)など、課題意識を持つメンバーも多い。
携帯用の保存食である「ペミカン」は、玉ねぎ・人参・じゃがいも・しいたけ・肉等をラードやバターと絡め固めて作る。合宿前に準備し、山ではカレーやシチューにして食べる
夏期行動中の昼食は牛丼や親子丼が多い。長時間の行動になるため、エネルギーになる炭水化物をしっかり摂る
※2023年7月15日発行「アスリート・ビジョン#30」掲載/この記事は取材時点での情報です。
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