夏バテしらずのカラダをつくる食事【栄養のプロに聞いた】

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秋のリーグ戦やインカレに向け、追い込みをかけるサマーシーズン。暑熱対策をしながら、いかに良いコンディションで日々の練習やトレーニングに取り組むかが重要だ。そこで、アスリートがこの時期に陥りやすい夏バテの症状、メカニズムを紐解くとともに、食事による効果的な予防・対策を大特集します。

夏バテしやすい学生アスリート

暑熱環境下でハードに練習・トレーニングを行うアスリートは、一般学生よりも夏バテしやすいと言われています。人間のカラダは、運動中はもちろん、運動後も体温の高い状態が続きます。その上、外気温も高いことが影響し、カラダの熱を下げるための体温調節の機能は常にフル稼働。当然、カラダはオーバーワークの状態になり、これが疲労感につながります。

アスリート・ビジョン#26より一部抜粋

食べる量が減ることで 起きる悪循環

体温調節を行うために、血流の巡りは内臓よりも筋肉を優先。そのため内臓機能が低下し、食欲の減退を誘発。食べる量が減ることで、エネルギーや栄養、水分が不足し、結果、貧血や脱水症状などを引き起こします。夏バテが長引くと、練習内容やパフォーマンスにも影響を及ぼします。早い段階で、きちんと食事をとるための意識づけと環境作りを行うことが大切です。

知らないうちに夏バテになっていた……!?
夏の食生活「3大あるある」傾向と対策

夏は、どんなに鍛えている選手でも突然、コンディションを崩す恐れがありあます。よくあるNG パターンから具体的な対策をチェック!

日常生活のなかで水分をこまめに摂る習慣がない

運動時の水分補給への意識は高い一方、日常生活で水分を摂る習慣のない学生アスリートは多くみられます。体温が高い夏は、目には見えなくとも、体内の水分がどんどん蒸発していきます。日常生活でもこまめに水分補給をしないと、水分不足でカラダがカラカラに。

対策「 日常生活からこまめに水分補給常に体内を 水分で満たそう」

常に体内を水分で満たし、体温調節機能がきちんと働く状態にしておくことも夏バテ予防の一つ。カロリーのない水やお茶などを、日常生活のなかでもこまめに摂りましょう。また、牛乳に含まれるたんぱく質には体水分量を安定させる役割もあるため、夏の水分補給にオススメです。

ジュースなど冷たいものをガブ飲みしていませんか? ゴクゴク飲まずにはいられない状態=水分不足のサイン。いつでもどこでも、水分をちょこちょこ飲む習慣づけを。

ついつい冷たい物と麺類ばかり食べる

「食欲がないから」とそうめん、そば、うどんなど、手軽で、冷たく、のど越しのよい麺類 ばかり食べている人は、当然、栄養が偏ることに。そのうえ、冷たい飲み物を常にがぶ飲み!

対策「 カラダを冷やす冷たい食事&飲料は摂るタイミングと回数を計る」

冷たい物は食べるタイミングを考え、かつ食べ過ぎないことが大切。暑いからといって、のべつ幕なしに冷たい物を摂ると内臓を冷やしてしまい、消化不良の原因に。冷たい飲み物や食べ物は、運動直後など体温が高いときに摂ると、カラダを適度に冷まし、内臓もよく働くようになります。また、のど越しのよい麺類は、よく噛まずに飲み込んでしまうため、消化時に負担がかかり、やはり内臓疲労の原因になるので要注意。

暑さによる疲労感と食欲低下で食事を抜きがち

「朝から食欲がわかない」「練習後は夕食も食べずに寝てしまう」。暑さによる激しい疲労感は、食欲の低下だけでなく、「食事自体が面倒」という気持ちを招きます。しかし、しっかり食べなければエネルギー量も栄養素も不足するのは当然。ますます疲れがとれないという負のループに突入……。

対策「 1日3食で栄養とエネルギーを確保暑くても面倒でも欠食は厳禁!」

欠食や小食は、カラダに必要な栄養とエネルギーが不足し、夏バテによる体調不良や免疫機能の低下、貧血の原因になります。また、パンだけ、丼だけなど、炭水化物オンリーになりがちで、やはり栄養が偏ります。1日3食、主食・主菜・副菜をしっかり食べることは、よいコンディションを維持するための基本。また、実は欠食は脱水症状の原因に。「水分補給はしっかりしていたのに脱水症状を起こした」という選手は朝食を抜くなど欠食の傾向がみられます。

NG習慣を正し、夏バテを防ぐ
実践!夏の食べ方ひと工夫!

HOW TO 01:
品数は少なくとも栄養満点!
具だくさんの主食+汁物を極める

1日3食、そしてご飯(主食)、たんぱく質のおかず(主菜)、野菜のおかず(副菜)が揃った食事こそが夏バテを予防する食事の基本。練習後は疲れて食欲も減退、さらには自炊が面倒に感じることも。そんなときは、主菜や副菜は主食や汁物と合体。品数は少なくとも栄養価の高い献立に。また出汁のきいた汁物は、発汗により失われる塩分とアミノ酸を効率よく補給できます。

筋肉の素となるたんぱく質はご飯やめん類にトッピング

食欲がない・料理をする気持ちにならないと、そうめんだけ、おにぎりやお茶づけだけなど、炭水化物だけの食事になりがちです。そこで、夏の暑さに負けないカラダづくりに欠かせない「たんぱく質」をプラス。さらに薬味や保存のきく食材をちょい足しすれば、栄養バランスのよい一品に。

野菜、海藻、キノコ類……。ビタミンやミネラルは汁物に投入

副菜となる野菜や海藻、キノコ類は汁物に入れて、具だくさんの味噌汁やスープに。内臓が疲れやすい夏は消化に負担のかかる生野菜は控えめに。汁物なら効率的にビタミンなどの栄養素も補え、胃にも優しく一石二鳥。自炊が面倒な日は、インスタントの味噌汁やスープに、レンジで温めた野菜を入れた即席でもOK。

一食でも抜くと水分不足に!?実は食事も大事な水分の補給源

味噌汁・スープ類だけでなく、水で炊いたりゆでたりするご飯や麺類、野菜や果物にも水分はたっぷり含まれます。人が1日3食から摂れる水分量はなんと、約1リットル。1食でも欠食をすると、スポーツドリンクをたっぷり飲んでいても、カラダに必要な水分量を補えず、脱水や熱中症になる恐れがあるのです。また、野菜や果物には、発汗により排出されるミネラル、日焼けのダメージを抑えるビタミンも含まれ、夏バテ防止に一役買っているのです。

HOW TO 02:
スパイスや調味料で味付けに変化球
香味や酸味の力で食欲増進

香辛料をうまく使うと食欲増進につながります。オススメはカレー粉。カレー・ルーとは異なり、脂質が少なく、肉、魚、野菜と何にでも合います。にんにく、しょうがを加えると、疲労回復をサポートするビタミンB1の吸収率がアップ。酸味のある梅やレモンは、唾液の分泌を促し、消化力を高めてくれます。

HOW TO 03:
食欲低下で体重が落ちてしまう人は
脂質でエネルギー量UP

夏になるとどうしても食欲が落ちてしまい、げっそりやせてしまう……。体重の減少は パフォーマンスの低下に直結する深刻な問 題です。そんな人は油を賢く使って摂取エネルギー量をアップ。オイルや乳製品、ナッツなども、上手に取り入れましょう。

合宿や遠征時の食事は「ちょい足し」でコントロール

合宿や遠征時は揚げ物や丼ものが続き、箸がすすまない、必要な栄養素が摂れない、全員同じ食事なので、自分に足りない食材が摂れない……といった悩みが付き物。携帯にも便利なちょい足し食材を持参し、栄養バランスを自分でコントロールしましょう。

これを持って行くと便利!

ふりかけ:ちりめんじゃこ、桜エビ、ごま、かつおぶし
トッピング:とろろ昆布、わかめ、刻みナッツ
飲み物:豆乳、野菜ジュース

柴崎真木さん(管理栄養士)柴崎真木さん【管理栄養士】
アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。

※2022年7月15日発行「アスリート・ビジョン#26」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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