コラム

緊急特集 UNIVAS設立で大学スポーツはどう変わる?

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大学スポーツの統括組織が発足!

全米大学体育協会(NCAA)を参考にした統括組織、一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS〔ユニバス〕)が2019年3月1日に発足しました。現在、199大学28競技団体(2019年3月7日現在)などが加盟。同協会では、今後、文武両道の奨励のほか、大学スポーツ界におけるガヴァナンス(統治、管理)の確保に力を入れていくそうです。専務理事の池田さんにお話をお聞きしました。

池田敦司さん

大学スポーツ協会(UNIVAS)専務理事。仙台大学体育学部教授、IR 部長。早稲田大学を卒業後、西武百貨店にてマーケティング業務を担当。楽天野球団取締役副社長、クリムゾンフットボールクラブ(ヴィッセル神戸)代表取締役社長を歴任。

学生による任意団体を全体的にまとめていく

●発足の背景

日本では、スポーツの位置づけは教育課程によって微妙に異なります。たとえば、中学、高校の運動部には日本中学校体育連盟(中体連)や全国高等学校体育連盟(高体連)といった統括組織がありますが、大学には全体を束ねるような横断型の組織がありませんでした。大学の運動部は学生らによる任意団体で、ガヴァナンスやリスク管理という面では問題が起きやすい環境でもあります。

そこで、大学のなかでもアスレティックデパートメント(大学体育局)という組織を作ろうという動きがスタートしたのです。大学としてスポーツのとりまとめを行い、かつガヴァナンスを効かせ、大学の中でもスポーツを振興させていく。それを全体的に束ねるのが大学スポーツ協会の役割となります。加盟団体:199 大学28 競技団体3 連携会員 ※ 2019 年3 月7 日現在

UNIVASの役割と取り組む事業

3つの分野のカテゴリーでやるべきテーマを設定。新しいサービスを提供していく。やるべきプログラムが短期的に具現化するものと、じっくり検証し、数年後に花を開かせる中・長期的なものを分けて、今後遂行していく予定です。

1 学業充実

昔から言われている「文武両道」を実現していくことが大きな課題です。学生時代はどうしても日々の練習や試合に集中してしまいがちですが、今後の人生を考えたとき、競技を極めていくことでプロ選手として活躍したり、あるいは実業団選手として活躍できる場合もありますが、競技が生活の糧になる人はほんのひと握り。仮にプロになったとしても現役で輝ける時間は限られています。

だからこそ、スポーツと勉強を両立させる。大学で基礎教育や専門教育を受け、論理的な思考力を身につけることは、就職やビジネス界に出ていくうえで非常に大切なことです。そのためには学生の意識を変え、大学側もフォローの体制を見直さなければなりません。

  • 学業基準の策定に向けた実証・検討
  • 入学前教育プログラムの策定・普及
  • キャリア形成支援プログラムの策定・普及
  • 学業優秀者表彰の創設

2 安心・安全

競技単位で安心・安全のガイドラインが定められている学連もありますが、様々な競技をみてみるとノウハウが共有されてないのが現状です。全体を俯瞰できる大学スポーツ協会としては、運動を行う以上は守らなければならない安心・安全のガイドラインを作り、さらに徹底させていく必要があります。

現在、地方大会では運営上の問題で医療体制が整えられない競技も往々にあると聞いています。知識・情報の拡充や体制の整備などにより事故やケガのリスクを最小化する対応、医療スタッフの派遣、学生からの相談窓口の設定、指導者研修を行うなど、学生たちの安全を守るべくさまざまなプログラムを掲げています。

  • 安全・安心ガイドラインの策定・普及
  • 相談窓口の設定
  • スポーツ医科学の研究
  • 指導者への各種研修の実施
  • 地方大会へのメディカルサービスの提供

3 事業マーケティング

学業充実、安全安心といったサービスを提供するには原資がかかります。その原資は大学スポーツの振興に共感をいただいたスポンサーやパートナー、民間企業のみなさんの力をお借りする形となります。

大学スポーツは学生や大学をはじめ、各ステークホルダーに対して様々なメリットをもたらしますが、運動部の活動に対する大学の関与が限定的であるがゆえに十分に活かし切れていないのが現状です。大学スポーツ全体に世間の注目度があがるように、うまく盛り上げていかなければなりません。

  • 競技横断的大学対抗戦の開催
  • 地域ブロックにおける大会運営への助成
  • 試合映像のインターネット配信
  • スポーツ優秀者表彰制度の創設
  • ビッグデータを活用したサービスの開発

学生アスリートにとってのメリットとは?

安心安全

相談窓口の整備や安全対策の実施。ケガ後の心配をすることなく、競技に専念することができる。

学修環境とキャリア形成

自らの人生を設計し、歩んでいけるキャリアプログラムや学修環境を提供。

競技環境向上

表彰制度などを通じて、学生生活に必要な資金を援助。スポーツや学修に集中できる環境作り。

コミュニティの形成

大学の枠を超え、一般学生やOB・OGとの交流を作るコミュニティ形成の場を提供。

先端技術や知識の提供

大学や民間企業の連携を促進し、OB・OGの知識や経験、最先端技術に触れる機会を提供。

貴重な機会と体験

スポーツを通じた成功体験のみならず、海外体験や社会貢献プログラムなどの機会を提供。

大学スポーツが地方経済の拠点に

© pdm – Fotolia

スポーツに「する」「みる」「ささえる」という3つの要素があります。「する」スポーツは競技そのものや歴史を熟知している学連が中心となってやっていますが、「ささえる」「みる」スポーツの取り組みには、なかなか手が回らない部分もあります。UNIVAS としては、そういった面を中心にバックアップしていきたいと考えております。

アメリカのNCAA では「する」「みる」「ささえる」の3つが、すべて一体となっており、将来的には日本もそうなるかもしれません。しかし、今はUNIVAS と学連、大学が三位一体となって、学生アスリートの基盤を整備し、よりよい環境を作りたいと考えています。

アメリカでは様々なスポーツが各地で盛んに行われていますが、国土が広いため、なかなかプロの試合を見る機会が少なくなります。そこで、ホーム&アウェイで試合が行われるNCAA の大学スポーツを楽しみにされている方が多いのです。各地域の地元住民が、大学の試合を観戦に行くことが日常の風景となっています。まさに大学が地域のコミュニケーション拠点になっているのです。

日本でも、文部科学省が地方大学を地方経済の活性拠点になるべきだと提唱しています。日本の大学もそれが実現できる可能性を秘めていると考えています。

※2019年4月10日発行「アスリート・ビジョン#13」掲載/この記事は取材時点での情報です

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