國學院大學・平林清澄選手 欠かせない「練習」「食事」「休養」三つの輪。負けたくない! ひたすら練習に専念。目指すは世界へ【陸上】

2022年1月の箱根駅伝で9区(23.1km)を走り、5人抜きの快走を見せた平林清澄選手。11月の出雲駅伝では國學院大學のアンカーを務めるなど、「スーパールーキー」と称えられました。高校入学時の持ちタイムが「下から2番目」という彼は、いかにしてそこからステップアップしたのか。世界を狙う日本長距離界のホープに話を聞きました。

プロフィール

國學院大學 陸上競技部 平林清澄

2002年12月4日、福井県越前市生まれ。出雲駅伝のテレビ中継で見た土方英和(現:Honda)の走りに感銘を受けて國學院大學へ進学。身長167cm、体重43kgと小柄ながらエネルギッシュな走りを見せ、大学1年時から三大駅伝に出場している。

託した襷がゴールに帰ってくるのが嬉しかった

陸上競技をはじめたきっかけ

―陸上競技を始めたきっかけから教えてください。
「地元の越前市に菊花マラソンというのがあって、小学1年生で初めて出場しました。2km のファミリー部門です。たまたま小学校の創立100周年と同じタイミングで、みんなで選手宣誓をしたことを覚えています」

―その頃から速かったのですか?
「いえ、全然です(笑)。短距離も長距離も、クラスの下から数えたほうが早いくらいでした。中学になると、毎年5月に学校のマラソン大会があったんです。1年生から3年生まで一斉に走るのですが、1年生で5位に入ったことで駅伝の選抜メンバーに選ばれました。学校の代表に選ばれた喜びは忘れられないですね。ターニングポイントは3年生の時。学校のマラソン大会で1位になり、駅伝で1区を走らせてもらいました。その時、自分が託した襷(たすき)がゴールに帰ってくるのがすごく嬉しかった。駅伝っていいなって思いました」

高校でのステップアップ

―しかし、高校入学当初は、20数名いたチームの中でも持ちタイムが下のほうだったそうですね。
「はい。確か、下から2番目でした」

―どのようにして力をつけていったのでしょうか。
「まずは、高校1年で8分台(3000m)を出すことを目標にしました。同じ学年に県内のトップ選手が二人いて、彼らはすでに8分台で走っていたんです。この二人に負けたくなくて、7月の記録会まで練習に専念し、シーズンの前半は一度もレースに出場しませんでした」

―なぜレースに出なかったのですか?
「レースの出場前には調整期間があるんです。コンディションを合わせなければいけないので、その間は絶対に練習を落とさないといけません。落とすということは、練習ができないということ。僕はそれが嫌で、ひたすら練習していました。結果的に7月の記録会で8分台を出すことができたので、練習の成果が出たのだと思います」

大学1年時、三大駅伝での活躍

―高校1年から計画的に練習を進めていたのですね。國學院大學に入ってからも、1年生ながら三大駅伝で活躍します。
「すべてのレースが印象に残っています。最も洗礼を受けたのが出雲駅伝(※6区アンカーとして3位で襷を受け、一人をかわしたものの、ゴール直前で二人に抜かれて4位フィニッシュ)。風がとても強く、10月なのに気温が30度を超えていました。難しいコンディションの中、初めてアンカーを任されたこともあってすごくプレッシャーを感じていたんです。僕の順位が、チームの結果になるわけですから。負けたことはもちろん、4年生にとって最後の出雲駅伝で結果を残せなかったことが悔しかった。アンカーという仕事の重みを感じた大会でした」

―その経験が、全日本大学駅伝(7区3位)、箱根駅伝(9区2位)の活躍につながります。特に箱根は、5人を抜く快走でした。
「あんな抜き方をしたのは初めてだったのでびっくりしました。すごく気持ち良かったです。4年生に恩返しができるのはここしかないと思って走りました」

自分の良さでもある”軽さ”を消さないことが重要

カラダづくりに欠かせない「練習」「食事」「休養」三つの輪

―身長167㎝、体重43㎏とアスリートとしては小柄ですが、ウエイトトレーニングはいつもどれくらいやっていますか?
「僕はまだやっていません。『そこまで到達できていない』と言ったほうが正しいでしょうか。長距離を走るために適したカラダをつくること、柔軟性、バランス、体幹などを優先しています。もちろんウエイトトレーニングで筋肉をつけることも大事ですが、今の段階では、自分の良さでもある“軽さ”を消さないことのほうが重要だと思っています」

―食事で意識していることはありますか?
「朝夕の寮食は、量を多めに時間をかけて食べるようにしています。昼食はコンビニが多いのですが、栄養バランス重視で選んでいます。ある程度は炭水化物も必要で、例えばドリアを食べるなら、おにぎりを1個追加する。たんぱく質を補うために、チーズやゆで卵を追加することもあります。野菜ジュースも欠かしません。『練習』と『食事』と『休養』のバランスが大事で、その三つを結んだ輪を大きくしなければいけないと思っています」

―補食は摂りますか?
「合宿中はめちゃくちゃ体重が落ちるんです。だから、合宿中は補食を摂らないとカラダが持ちません。去年の夏は、団子や羊羹、カステラが多かったですね。消化のいいゼリー飲料も飲みました。ただ、普段は補食を摂らず、三食をしっかり食べることを心がけています」

―オフの日のリラックス法は?
「日曜日がオフなのですが、寝られる時はとにかく寝ています。暖かい季節になると、寮の屋上に敷いたマットに寝転んで、好きなラジオを聴きながらウトウト。小説を読むのも好きで、コーヒーを飲みながらそこでゆっくり過ごすことが多いですね。競技をしている時は競ってばかりなので、平穏を求めたくなるんです(笑)」

平林選手のある1日のスケジュール

「箱根が通過点」と言える選手になりたい

競技生活について、今後の抱負

―大学での競技生活もあと3年残っています。抱負を聞かせてください。
「区間賞は絶対に狙っていきたい。あとは、いずれ『箱根駅伝が通過点』と言える選手になりたいです。もちろん『箱根駅伝が最終目標』というのも考え方の一つですが、僕にとっては箱根駅伝で何かを学び、次につなげることも大事。それは世界かもしれないし、ハーフの枠を超えてマラソンを狙える選手になることかもしれません。どこに指標を置くかまだわかりませんが、いずれは世界で戦いたいと思います」

※「アスリート・ビジョン#25」掲載/この記事は取材を行った2022年2月時点での情報です

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