どんなスポーツをやるにしても、パフォーマンスやポテンシャルを引き出すために必要なカラダの動きがあります。効率的にカラダを鍛えられるトレーニングを帝京平成大学の西山朋さんに紹介してもらいます。
第8回 横方向への力発揮
~横に動くためのビルドアップトレーニング~
スポーツでは横方向への動きは多くの場面で必要とされます。サッカー、ラグビー、バスケットボールの1対1の場面、あるいはテニス、バドミントンのレシーブでの一歩目の動きやサイドステップなどのリアクションの動作には横方向への力発揮は不可欠です。前方向への直線的な動きとはカラダの使い方が変わってくるので、今回紹介するトレーニングで横方向への力発揮を習得していきましょう。
【横に動くためのビルドアップトレーニング】
競技場面でのトレーニング効果の一例
☑横方向への出力アップ
☑横方向への移動、切り返し動作の向上
☑対人競技での1対1の場面でのパフォーマンスアップ
☑リアクション動作の効率化
☑横方向からの、または横方向へのコンタクトプレーの強化
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サイドブリッジウィズアブダクター
[回数目安:30秒×2~3セット]
カラダごと横向きになって右肘、右膝を床につき、右前腕と右下腿を支点にしてカラダを持ち上げ、左脚を開くようにして頭の高さくらいまで上げます。このとき、肘と肩は床と垂直になるようにして、左足のつま先は正面を向くようにしましょう。
ありがちなNG例
■上体が前後に傾く
■左脚が上がらない
■左足のつま先が外を向く
ありがちなNG例として、まずは一番多いのは体幹を垂直に維持できずに、カラダが前後に傾いてしまうこと。また、上げる脚(左脚)で注意したいのは、なるべく大きく開くようにすることと、つま先が外側を向かないことです。肩甲骨から股関節周囲の力を使って正しい姿勢を維持します。特に腹斜筋、外側の中殿筋を意識しておこないましょう。
レベルアップ
肘を床から離す/肘と膝を床から離す
このトレーニングは上体の位置が高くなればなるほど重心のブレが出やすくなるので、難易度が高くなります。通常バージョンができるようになったら、肘を床から離す、肘と膝を床から離すというようにレベルを上げていきましょう。不安定な状態でも姿勢をキープできるようにすると体幹の力が高まります。
ポイント
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サイドウォールスクワット
[回数目安:10~15回×2~3セット]
壁を横にして立ち、片手を壁について押す状態をつくり、壁側の脚を上げて片脚立ちの状態をつくります。横の壁を押しながら起き上がるので、壁に一番力が伝わる角度にカラダを預けるようにします。この姿勢から片脚スクワットを行います。スクワット中も壁を押し続け、力の発揮の方向が横以外に抜けないよう姿勢を保つのがポイントです。
ありがちなNG例
■カラダ開いてしまう
■膝が内側に入る
■カラダが前傾してしまう
ありがちなNGは横の壁に力を伝えらずにカラダが開いてしまうこと。また、外側の踏ん張る脚の膝が内側に入ると、力が発揮できないだけでなく、膝を痛める恐れがあるので注意しましょう。壁を押して起き上がるときは立っているときと姿勢を変えないことが重要なので、前傾姿勢にならないように気をつけてください。
ポイント
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サイドランジ&クロスオーバーランジ
[回数目安:それぞれ10回×2~3セット]
サイドランジ
行きたい方向の足から踏み出して、膝を曲げてしっかり止まり、スタートポジションに戻る。これを繰り返します。踏み出したほうの脚で止まることを意識してください。姿勢としては上体がブレず、踏み出した脚の足首、膝、股関節が一直線上に並ぶようにすること。踏み出した脚で全部の重心を受け止めるようにします。
クロスランジ
スポーツの場面で2~3mの動きならば、進行方向の足からのステップでよいのですが、テニスで相手のショットを追いかけるときなど、それ以上の動きが必要になる場合はクロスステップが必要となります。実際の動きを想定すると、踏み出す脚を後ろで交差する場面は少ないので、踏み出す脚は前で交差します。この交差した脚でしっかり止まり、真っすぐの姿勢を維持します。サイドランジ・クロスオーバーランジと続けておこないましょう。
ありがちなNG例
■膝が内側に入る
■カラダが流れる
よくあるNGとしては、踏み出した脚の膝が内側に入ってしまうこと。重心を受け止めることになるため、膝が内側に入るとケガにつながりやすいので注意してください。また、上体が流れて脚のラインよりも外にいってしまうのは、しっかり止まれていないということです。横に動いてしっかり止まることが次の動作につながります。
ポイント
トレーナーからのアドバイス
サッカーやバスケットボールの1対1の場面で相手を抜いていくとき、あるいはディフェンスの場面では横方向の動きが不可欠です。踏み出した後で止まって、次の動きへつなげる動作を今回紹介したトレーニングで身につけていきましょう。前方向への力発揮よりも難しい動きになりますが、チャレンジしてみてください。次回はよりスポーツの場面に近い動きとなる、「投げる」「回旋」につながるトレーニングを紹介します。
西山 朋 さん
帝京平成大学健康医療スポーツ学部助教。これまで東京ヤクルトスワローズのアスレティックトレーナー、男子ソフトボール日本代表、7 人制ラグビー日本代表、オール三菱ライオンズなどのトレーナーを歴任。
前回の記事はこちら
ポテンシャルを引き出す パフォーマンスアップのためのトレーニング
⑦前方向への力発揮 ~走るためのビルドアップトレーニング~