ポテンシャルを引き出す パフォーマンスアップのためのトレーニング ④股関節の可動性と稼働性

どんなスポーツをやるにしても、パフォーマンスやポテンシャルを引き出すために必要なカラダの動きがあります。効率的にカラダを鍛えられるトレーニングを帝京平成大学の西山朋さんに紹介してもらいます。

第4回 股関節の可動性と稼働性

局所的なアプローチは、今回の股関節で最後です。股関節は可動性が広く、多方向に可動する関節です。大臀筋や大腿四頭筋、ハムストリングなど下肢の大きい筋肉が、生み出した力を体幹に伝える上でも、とても大切な部位です。

今回のメニューでは股関節の基本的な前後の方向の動き、屈曲(腿を上げる動作)、伸展(足を後ろ側に引く動作)、そして、回旋(ねじり)を入れた複合的な動きをします。

MENU01
シッティング・ヒップフレクション
[回数目安:左右10~15回]

長座の姿勢から片脚を曲げて、膝をできるだけ胸に引き寄せて体幹を固定します。伸ばした足のつま先は上に向けます。このスタートポジションから伸ばした脚を上げていきます。上げた脚をすぐに下ろすと反動を使ってしまうので、上げた後は一呼吸、二呼吸おいてからゆっくり下ろすようにしましょう。

ポイント
このトレーニングは股関節の屈曲、脚が前に上がるように動かすことを目的としています。ターゲットは大腿四頭筋と腸腰筋です。他の部分が動きの代償をしないように固定し、股関節とターゲットの筋肉だけで動かすように意識しましょう。

 

NG
カラダが傾く

座骨の上に重心を乗せて、伸ばした脚を上げる時もカラダが後ろに傾かないようにします。上体は床と垂直をキープすることが大事です。カラダが傾くと股関節以外の部位も動いてしまい、トレーニングの効果が薄れてしまうので気をつけてください。

 

MENU02
プローン・ヒップエクステンション
[回数目安:
左右8~10回

うつ伏せで前後に足をずらし、床をガイドラインにしてカラダを預けて、背筋を伸ばした状態がスタートポジション。この姿勢を維持したまま、伸ばしたほうの脚だけを上げていきます。動きは大きくないですが、トレーニングの難易度は高く効果も大きいのでチャレンジしてみてください。

ポイント

このトレーニングは大臀筋がターゲットになります。床に上半身を預けることで、他の部位で動きを代償させないのがポイント。重力に逆らって脚だけを上げることで、後ろに蹴る力や片脚立ちでカラダを支える力につながります。

 

EASY
うつ伏せに寝た状態で行う

片脚を曲げた姿勢から行うのは負荷が大きいため難しいという方は、難易度を下げて完全にうつ伏せに寝た状態からトライしてみましょう。曲げたほうの足の裏を天井に近づけるようにして上げます。この時、膝の角度を変えないようにして、しっかり大臀筋とハムストリングの力を使いましょう。

MENU03
シンボックス・アップダウン
[回数目安:
10~15回

片脚はあぐらのように膝を曲げて、もう一方の脚は横座りのようにして座った状態がスタートポジション。

このとき、あぐら側の足の裏をもう一方の太腿につけるようにします。上半身に力を入れたいので、握りこぶしで手に力を入れるのがポイント。お尻に力を入れながら骨盤を押し出すように重心移動してカラダを起こします。

元のポジションに戻るときは、筋力を使ってできるだけ股関節を動かしたいので、重力に任せてドスンと座らずに、お尻を引きながらカラダを前傾させて、できるだけゆっくり座るようにしましょう。

 

ポイント

MENU01では前側、MENU02では裏側の筋力を使いました。MENU03のシンボックス・アップダウンは、捻じれが加わった回旋の動きになります。MENU01&02で使った筋肉を複合的に共調させて大臀筋を使うのがポイントです。多方向に可動する股関節を上手に動かせるようになりましょう。

 

レベルアップ!
シンボックス・アップダウン・ハーフニーリング

上体を起こしたところから、足を一歩踏み出して膝立ちになるところまで動かします。足を踏み出すと片脚で支持する場面が出てくるため、下肢の筋力を使った状態での安定性を強化することができます。片膝立ちが不安定になってしまう人もいるので、上半身に力を入れてカラダを安定させることが大事です。

股関節がうまく動かせないと、骨盤や腰椎周りでその動作を代償してしまうケースが出てきて、ケガにつながる恐れがあります。理想的な運動連鎖(最終的にパフォーマンスを出したい部位が動くまでの、関節や筋肉の動きの順序、連動性のメカニズム)のサイクルを生むためにも、股関節の分離した動きができるようにしていきましょう。今回で局所的にアプローチは最後です。次回からは、体重を支えた状態での統合的なトレーニングを紹介します。

西山 朋 さん
帝京平成大学健康医療スポーツ学部助教。これまで東京ヤクルトスワローズのアスレティックトレーナー、男子ソフトボール日本代表、7 人制ラグビー日本代表、オール三菱ライオンズなどのトレーナーを歴任。

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