2021年の全日本学生柔道優勝大会で5連覇を達成、大会通算最多優勝回数を25回に更新した東海大学体育会男子柔道部。しかし、コロナ禍で様々な制限がかかる中、偉業達成までの道のりは簡単ではありませんでした。選手一人ひとりに自覚が芽生え、苦難を乗り越えた強さに迫りました。
伝統は“形”ではなく、“精神”を受け継ぐもの
東海大学体育会 柔道部
1955年創設。1960年に大学の「体育会」として組織化された。1977年、全日本学生柔道優勝大会で初優勝。以来、2021年まで同大会で25回の優勝を飾る。山下泰裕、井上康生、ウルフ・アロンなど多数の金メダリストを輩出。
「進化し続けるために、常に流れを作る」
「進化しなければ、その集団は腐る」と私は思っています。伝統は形ではなく、精神を受け継ぐもの。どんな綺麗な水でもそこに溜まっているとだんだん濁ってくるのと同じで、常に流れを作っていかなければいけません。
上水研一朗 監督/東海大学出身。2008年に東海大学の男子監督に就任すると、全日本学生優勝大会で前人未到の7連覇を達成。「固定概念を振り払う」がポリシー。
「意識の高い環境で鍛え上げ、頂点を目指す」
強くなれると本能的に思い、東海大学への進学を選びました。一人ひとりの意識が高く、緊張感のある引き締まった雰囲気の中で、いい練習ができています。目標は、2024年のパリで金メダルを獲ること。
村尾三四郎さん 4年 90㎏級/ 2021年グランドスラム・カザン、22年グランドスラム・パリで優勝するなど、日本期待の星。得意技は内股、大外刈で、手足の長さを生かした技が特徴。
「自分自身と向き合ったカラダづくり」
高校の頃から東海大学の練習に参加させていただき、レベルの高さを実感していました。入学した頃は自分が非力だと感じていましたが、ウエイトトレーニングなどを週2〜3回取り入れることで、ケガをしにくいカラダを作ることができました。
内村秀資さん 4年 73kg級/駆け引きが得意で、試合の終盤に勝負を仕掛けてポイントを取り、残り時間をしのぎ切って勝利をつかむ。目標はパリ大会に出場して優勝すること。
「学生とシニア、そして世界で勝てる選手に」
高校生の時にテレビで全日本学生柔道優勝大会を見て、自分も団体戦で日本一になりたいと思いました。学生の試合とシニアの大会で成績を残し、世界大会で優勝できる選手になれるように頑張ります。
鈴木直登さん 3年 100kg超/2021年の全日本ジュニア体重別選手権で優勝。体幹の強さを生かした接近戦を得意とし、優秀選手に選ばれるなど全日本学生柔道優勝大会5連覇の原動力となった。
「 全員がライバルで、絶対に負けられない 」
小学生の頃から東海大学で柔道をするのが憧れでした。全員がライバルで、絶対に負けられないという気持ちで1年生の時から頑張ってきました。日の丸を背負って戦える選手に成長したいと思います。
中村雄太さん 2年 100kg超級/ 2021年の全日本ジュニア体重別選手権は、持ち味のしぶとい柔道でゴールデンスコアに持ち込んで勝ち切った。1月のグランプリ大会(ポルトガル)で準優勝。
「練習も主務の仕事も全力を尽くす意識」
練習中は選手と同じ立場である一方で、裏方の仕事にも全力を尽くす。主務は全員がそうした自覚を持って取り組んでいます。心がけているのは、何ごとも後回しにせず、先に終わらせることです。( 吉田岳さん 4年 主務 66kg級)
CLOSE UP/ 栄養
知識を得た上で、食事は自己管理。献立は同じ階級の選手と情報を交換
階級制度がある柔道において、食事はトレーニングと同じくらい大切なもの。選手は一人ひとりが自覚を持ち、自分自身で食事を管理している。「軽量級だと減量が必要な選手もいるので、全員が同じものを食べればいいというわけではありません。同じ階級の選手と情報を交換しながら、高い意識を持って取り組んでいます」(吉田主務)。
ある日の寮の朝食(カレー)と夕食、吉田さんの自炊料理。選手は栄養の講習会で学び、自分にあった方法を考え工夫する。
CLOSE UP/ トレーニング
柔道着を使って懸垂のトレーニング。大事なのは柔道の動きを取り入れること
柔道の動きをトレーニングに取り入れている。「たとえば、柔道着を使って懸垂のトレーニングをすることがあります。柔道は脇を締める動作が多いので、持ち幅を狭くしたりして、より柔道に近い動きをしています」(村尾選手)。「高重量で少ない回数をやる筋肥大のトレーニングと、10回くらいできる重さでセットを組む筋力を上げるトレーニングの2種類をカラダの部位ごとに分けて行っています」(鈴木選手)と話し、カラダの質が上がったことを実感している。
柔道部専用のトレーニング施設。カラダづくりの講習やトレーナーのサポートを受け、各自が考えてトレーニングに励む。
CLOSE UP/チーム運営
指導において大切なのは、観察すること。「中心なき組織は機能しない」の言葉を胸に
部員141人の大所帯でありながら、一人ひとりにしっかりと目が行き届いている。「指導において、大事なのは観察することです。その上で、チームをまとめるために必要なのは中心を作ること。中心が大きければ大きいほどチームは強くなり、中心が不安定であればそれだけチームは弱くなります。いかに中心の自覚を芽生えさせ、育てていくか。それが指導の中で一番大切なことです」(上水監督)。
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・vol.40白鷗大学 女子バスケットボール部
※2022年4月15日発行「アスリート・ビジョン#25」掲載/この記事は取材時点での情報です。