2020年に関東大学サッカーリーグ1部に復帰し、3シーズン、大学サッカーのトップカテゴリーで戦っている拓殖大学サッカー部。自主性や個性、積極性などを重んじるからこそ、選手の意識も高い。学生主体のトレーニング計画やコンディショニングについて選手に聞きました。
選手一人ひとりの主体性を重んじ、社会で活躍できる人間性を育む
拓殖大学麗澤会体育局サッカー部
1930年に創部。2009年に関東大学リーグ1部初昇格。翌年、2部に降格したが、2020年に11年ぶりに1部への復帰。OBに小林悠(川崎フロンターレ)ら。約300名の部員数を誇る。チームカラーは「オレンジ」。
自ら弛まず努力を続ける人に/玉井朗 監督
選手である以前に、学生としての本分である学業を疎かにしないこと、また、新しい知識を得ることを大切にして欲しいと思っています。もちろん試合では勝利を目指しますが、「自彊不息(じきょうやまず)」の言葉のように、自分を戒めながらも高いレベルでサッカーを楽しみ、そして立派な社会人になって欲しいと願っています。
玉井朗 監督/筑波大学大学院出身。拓殖大学政経学部教授。大学院卒業後は教員として大宮高校に赴任。その後、拓殖大学サッカー部の体育教員となり、サッカー部の監督に就任。
自分は何ができるか常に考える
心がけているのは「チームのために自分は何ができるか」常に考えることです。怪我でつらい時期も過ごしましたが、リハビリ期間に人のために働くことや支える喜びも知りました。成長につながる経験を継続していきたいです。
梅澤亘さん 4年生 副主将/横浜創英高校出身。2023年4月に肘の靭帯を負傷し、リハビリ生活が続いたが、11月の東海大学戦で関東リーグ初スタメン出場と果たした。夢は消防士になること。
ドリブルを磨き仕掛けていく
テクニックや一つ一つのプレーの発想という部分では他の大学にも負けていないと考えています。自分の特徴はドリブル突破や仕掛けるプレーなんですが、大学で敏捷性を強化し、さらに技術を伸ばすことができたと思います。
加藤悠馬さん4年生(MF)ヴィッセル神戸U18、須磨翔風高校出身。164㎝と小柄だが、切れ味鋭くスピード溢れるドリブルが魅力。2024シーズンからいわきFCへの加入が内定している。
より強い相手と戦えるさらなる力を
Jリーグ内定選手として、大学の試合では違いを見せないといけないと考えています。上には上がいるので、常に向上心を持って。フィジカルやスピード面はまだ足りないと痛感する部分もあるので、一人で打開できる能力もさらに養っていきたいです。
関根大輝さん 3年生(DF) /静岡学園高校出身。高さに加え、足もとの技術があり、ドリブル突破も得意とする万能DF。U-22日本代表としてアジア大会にも出場。2025シーズンからの柏レイソル加入が内定している。
チームの魅力を発信していきたい
チームとしての決まりごとや強制などはなく、その中でも伸び伸びとサッカーを楽しめる環境が整っている。選手たちが自主的に動けるのがうちのいいところ。広報活動にも力を入れSNSを通して、よりチームの魅力を伝えていきたいと思っています。
角田渉さん 3年生 主務/拓殖大学紅陵高校出身。高校まではプレイヤーとして活躍したが、大学入学と同時にマネージャーに。指導にも興味があり、現在はクラブチームで中学生の指導も行っている。
CLOSE UP/ 栄養
1日3回の食事は各自が工夫し、
パフォーマンス向上につなげる
栄養を意識した食事摂取の周知などはしているが、基本的には選手個々に一任されていて、コンディション維持とパフォーマンス向上のため、各自が工夫している。1日5食に分け、朝から量を取ることを意識している関根選手は、高校時代にお世話になった栄養士のアドバイスもあり、「鉄を多く含む、しらすご飯と味噌汁、納豆、ヨーグルト、キウイ」が朝の定番メニュー。夕食も朝練に備えて18時半には済ませる徹底ぶり。昨季冬には肉体改造の一環として脂肪過多にならない食事を心がけた。梅澤選手も常にバランスを考え、たんぱく質が足りないときは豆腐や鶏むね肉やささみを積極的に摂ったり、疲労が溜まっているときは豚肉を食べている。「体重がすぐに落ちてしまう体質なので昼と夜の間におにぎりなど補食を摂るようにしている」と話す。
以前、メディカルチェックで鉄不足を指摘され、積極的に取り入れるようになったという関根選手の朝食。
常にストックしている鶏むね肉を主菜にした梅澤選手のある日の夕食。コスパを考えながら、時間があるときに生姜焼きやハンバーグなども作り置き(冷凍)している。
CLOSE UP/ トレーニング
週5回の練習+自主トレ
筋トレは必要に応じて各自で行う
週5日の練習は1回が1時間半から2時間程度。そこに筋トレの時間は含まれていないため、自重トレーニングなどで各自カラダを鍛えている。「シーズンが終盤になると怪我が増えるので、そういった部分を意識しながらトレーニングをしている。トレーナーの指導を仰ぎながら、ストレッチをいろいろ試したり。合う、合わないがあるので、実際にやってみて必要なものを取り入れている」(加藤選手)。ジムでバイトをしている梅澤選手は空いている時間を利用して、GKに大切な瞬発系の動き、ステップの速さを鍛えるトレーニングをしている。起床後ストレッチでカラダを整える関根選手は「体幹トレーニングでお腹に刺激をいれるとカラダが動く感覚がある」と毎朝のルーティンに。メンタル面でも専門のトレーナーからアドバイスを仰ぐことができる。
アジリティ強化を意識した自主練。「小柄なので、カラダづくりで周囲と差をつけられるようトレーニング内容や食事は意識している」(加藤選手)。週1~2回筋トレを行いベストな筋肉量をキープ。
すぐに痩せてしまう体質の梅澤選手。体脂肪率は「8~9%」を維持できるよう、バイト先のジムでこまめに体組成をチェックしコンディションを整えている。
CLOSE UP/ チームづくり
ピッチの外でも選手が主体に
チーム全員で運営に携わる
チームでは、選手の自主性が重んじられている。「やらされているというよりは、自分たちが主体となってやるのがうちの特徴」(梅澤選手)だという。主将、副将はいるものの、それ以外は練習前後の準備や試合運営、スケジュール調整、チームの広報的な活動も担う主務とマネージャーのみで特に役割は与えられていない。「試合の分析などは試合映像を見て選手自身が話し合ったり、コーチも交えたり、必要に応じてアプリなども利用して自分たちの課題や次の試合への対策を練っている」(角田主務)。それ以外にも、選手たちはリーグ戦のボールボーイや公式記録係、試合の審判、小学校でのふれあい活動など、主体的にチームの運営に携わっている。
※2024年1月15日発行「アスリート・ビジョン#32」掲載/この記事は取材時点での情報です。
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