私を応援し続けてくれた人たちを喜ばせたい
【先輩アスリートインタビュー】
 陸上競技・宮園彩恵選手

社会人アスリートとして陸上競技を続けている宮園彩恵選手。現在は週1回の業務をこなしながら練習に励んでいる。仕事を覚えお客様ともやりとりをする経験は、彼女の競技観に大きな影響を与えたそう。そんな先輩が社会人になって気づいたこと、自分の経験から学生アスリートに伝えたいことなど、お話いただきました。

宮園彩恵選手のプロフィール

国士舘大学卒 株式会社染めQテクノロジィ所属 宮園彩恵

みやぞの・さえ 1998年生まれ、北海道出身。札幌藻岩高校時代は混成競技をメインに活躍し、国士舘大学進学後は短距離にシフト。3年時に日本インカレ(日本学生陸上競技個人選手権大会)200mを23秒89で優勝。4年時には日本陸上競技選手権で7位入賞。2021年に株式会社染めQテクノロジィに入社。アスリート奨励社員の一人として業務の他、地域のスポーツ教室なども行う。ケガや故障が続くも、昨年、第21回田島直人記念陸上競技大会で社会人ベストとなる24秒15をマークして復調した。

会社が新たな気づきを与えてくれた

言われたことをただやるだけではなく
考えて取り組むことで結果を出す

―社会人アスリートとして5年目を迎えました。学生時代と今と比べて、変わったことはありますか?
「学生時代はただただ勢いだけで走っていました。流れを掴んで勢いに乗れることは学生時代の自分の強みではありました。社会人になってから結果が出ず、自分に向き合い『じゃあ、どうする?』と考えたときに、一つ一つの『技術』を大切にするようになり、深く掘り下げ、『つなげること』を意識するようになりました」

―何かきっかけがあったのですか?
「染めQテクノロジィでは毎月1回、社長研修があります。その時に『何事にも失敗を恐れないでチャレンジすることの大事さ』を学びました。たくさんの製品がすべて最初からうまくできたわけではなく、中には大赤字になったものもあり、そこから考えチャレンジし続けてきた会社の軌跡に、励まされ考えさせられました。それとその挑戦を楽しむこと。物事に対してポジティブに取り組まないと、ポジティブな結果にならないことを教わりました。今では学生時代より深く考えた陸上ができていると思いますし、自分の成長を楽しんで練習することができています」

応援してくれる人のために走る
それがいちばんのモチベーション

―練習は、大学時代のコーチに師事されていると伺いました。
「当時は『言われた通りにカラダを動かしていれば速くなる』と頼りっきりでした。意見の食い違いから疎遠になっていたのですが、自分と向き合い考えた結果、コーチの考えや指導をしっかり咀嚼して自分のものにしたいと、『もう一度、学ばせてください』と頭を下げにいきました」

―昨年は社会人ベストを更新できました。
「家族とコーチ、そして自分を信じて応援し続けてくれている会社にも『宮園彩恵はこんなもんじゃない!』というところを見せたい、伝えたいという気持ちですね。染めQテクノロジィは、すごくお客様を大切にしている会社です。今まで陸上をやってきて、いかに自分が自分のことしか考えてこなかったのかが、入社してよく分かりました。業務ひとつとっても、どうやったらお客様を惹きつけられるのか、どうやったら一緒に働く社員に応援してもらえるのかを自然と考えるようになりました。それがとても新鮮で面白くて、今では陸上競技をするうえでも、人に喜んでもらいたい、支えてくださる人たちを喜ばせたい、楽しませたいという気持ちが本当に強くなりました。だからこそ、今自分を支えてくれている人たちに、『宮園を応援し続けて正解だった』と証明できる結果を残したい。それが大きなモチベーションになっています」

 

食事と睡眠の質を高め
理想とする弾力のある筋肉と柔軟なカラダを作る

―コンディショニングの面で学生時代と変わったことはありますか?
「カラダの状態と食べた物のつながりを考えるようになりました。たんぱく質は鶏肉ばかりに偏らないようにしたり、魚は三食のうち1回必ず食べるようにしたり。自分の体感ですが同じたんぱく質でも魚で摂ったほうが、筋肉がしなやかになるというか、弾力のある良い筋肉になるような気がしています」

―面白いですね。ほかに気をつけていることはありますか。
「夜寝る前のストレッチは、疲労回復のためにも欠かせません。入浴中のカッサマッサージにもハマっています。全身をリラックスできるのでおすすめです! 睡眠時間は、7〜8時間はとるようにしています。昨年から睡眠、食事、ケア、コンディショニングといった当たり前と言われていることを、すごく大切にするようになりました」

仲間と過ごす時間を大切にして
今を全力で取り組んでほしい

―徐々に復調されてきて迎える2025年シーズンの目標を聞かせてください。
「やはりメイン種目は200mですね。今は特にゴールから逆算した『走りの展開』を考えて走っています。まずは7月の日本選手権での上位争い、そして9月に日本で開催される世界陸上に出場することが目標です。今年は昨年できなかった『試合を重ねて、技術を積み上げていくこと』に取り組み、自分と世界に挑戦していきたいです」

―最後に、先輩として、学生アスリートたちへメッセージをお願いします。
「大切にしてほしいことが3つあります。1つは、仲間と過ごす時間。もし自分が学生時代に戻れるとしたら、仲間と過ごす時間をもっと大切にしたいと思うくらいです。たったひとりで競技をしている人って、ほとんどいないと思います。いろんな人が支えてくれたり、たくさんの仲間が一緒にいてくれたりするから、日々の練習も頑張れる。仲間と一緒に練習するのは当たり前かもしれませんが、実はそれはすごく幸せなことなんだ、ということを伝えたいですね」

―2つ目は?
「自分がアスリートとして過ごす時間を大事にすることです。もしかしたら、明日大きなケガをして突然アスリート人生が終わってしまうかもしれない。明日も同じように練習できる、競技を続けられるとは限らないんです。だからこそ、練習ができている時間、コンディショニングをしている時間、仲間と頑張っている時間。そういった当たり前のものを大切にしてほしいです」

―では最後の3つ目を教えてください。
「目標に向けて、全力を出すことですね。全力を出してみてはじめて、自分が全力を出せているのか、それとも出せていないのかに気づくことができます。だからこそ、ぜひ目の前のことに全力を出して取り組むこと。これらを大切に頑張ってほしいと思います」

「大学時代に表紙を飾ったアスリート・ビジョンは多くの方に
興味を持ってもらうきっかけにもなりました」(宮園選手)

※2025年4月15日発行「アスリート・ビジョン#37」掲載/この記事は取材時点での情報です。

最新情報をチェックしよう!