心の準備が結果を引き出す!試合に勝つためのスポーツメンタル【メンタルのプロに聞いた】

重要な試合や大会が開催される秋。最高のパフォーマンスを発揮するためには、技術や体力はもちろん、メンタルの準備も大切になります。本番直前になって起こり得るメンタルの課題とその解消法を、スポーツメンタルコーチの鈴木颯人さんに教えていただきました。

自分たちの強みを明確にし、
何を準備すべきかを整理する

本番まであと2~3週間。個人、チーム、学年や役割によってメンタルの状態は異なりますが、共通していえるのは気負ってしまう人が多いということです。とくに最終学年の選手は「今年こそやってやろう!」という気持ちが強すぎて空回りしがち。それがチームワークを乱し、メンバー同士の衝突の原因になることも。ここまできたら、できていないことに目を向けるのではなく、自分たちの強みを明確にしてチーム内で共通認識を持つようにしましょう。そして、その強みをどうすれば発揮できるのか話し合うことが、最高の準備につながります。

継続ポイント:毎日1つ、小さな成長を記録する

常に自己最高を達成している自分になることはスポーツの醍醐味のひとつです。日々の成長を実感できる方法として、毎日1つ、小さな成長をノートに書き出してみましょう。前より上手くできたこと、前進したと思うこと、どんな些細なことでも構いません。前日と同じ内容を書くのをNGにすることで徐々に書き出す成長度合いは小さくなっていきますが、毎日の成長体験で自信がつきポジティブになれます。こうした日々の積み重ねは安定したメンタル維持にもつながります。

Q1.試合を意識しすぎて緊張してしまいます。どうすればいいですか?

A.実力以上のものを出そうと背伸びしないこと

すべての緊張がダメなわけではありません。適度な緊張は、集中力が高まりパフォーマンスの向上につながります。ダメなのは悪い緊張といわれる「過緊張の状態」になることです。緊張には自律神経のバランスが関係しており、普段は交感神経(活動を司る)と副交感神経(リラックスを司る)が適度なバランスで働いていますが、不安を感じると交感神経が過剰に優位になって過緊張を引き起こします。過緊張を防ぐには、まずは実力以上のものを出そうとしないこと。そして、試合中に最低限自分がやるべきことは何か、コントロールできる範囲以内のことを考えるようにしましょう。

Q2.気持ちに浮き沈みがあります。メンタルを安定させる方法を教えてください

A.感情を吐き出すワークとお手玉で気持ちを切り替える

メンタルの安定には気持ちの切り替えが重要です。チームの場合、試合前の感情を吐き出すワークを試してみてください。3~5人のグループに分かれ、今どんな気持ちなのか、1人約10分間、話をします。話を 聞いたメンバーは、励ましたり感想を伝えたりして、メンバー同士の気持ちを共有すると、気持ちが切り替わります。

また、お手玉もおすすめです。お手玉をするとき、人はお手玉の動きを目で追いながら手を動かします。目と手の動きを連動させることをハンドアイコーディネーションといい、認知能力を高めて脳を活性化する効果があり、気持ちが切り替わります。

Q3.周りの期待に応えたいと思うと、それがプレッシャーに感じてしまいます

A.プレッシャーに感じるのではなく期待されていることに感謝する

アスリートのほとんどが「期待通りの結果を残さなければ」とプレッシャーを感じています。その心理は、過剰な承認欲求にとらわれているせいかもしれません。承認欲求の呪縛は(認知された期待-自己効力感)×問題の大きさ という公式に当てはめることができます。たとえば、自分に集まっている期待をチーム内や他者とシェアすることができれば、認知された期待は下がり、プレッシャーを緩和することができます。

そもそも期待されていることはとても尊いこと。逆に期待されなければ寂しいと思いませんか? 期待をプレッシャーに感じるのではなく感謝できるとよいでしょう。

どれだけ準備をしても準備に終わりはない

どれだけ準備をしても不測の事態は起きるもの。つまり、どこまでいっても準備に終わりはないのです。よく敗因を準備不足という人がいますが、準備には終わりがないのだから仕方ありません。試合2~3週間前であれば、準備不足を心配するのはやめて、「自分たちのできることはやり切った」といい意味で開き直り、気持ちを切り替えることも大切でしょう。
鈴木颯人さん
Re-Departure 合同会社代表。「心から競技を楽しめる人を増やすこと」を信条に言葉を大切にするスポーツメンタルコーチとして活動中。教え子には世界大会優勝、プロ野球ドラフト会議指名、オリピック出場選手も。『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(KADOKAWA)など著書多数。

※2024年10月11日発行「アスリート・ビジョン#35」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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