どんなスポーツをやるにしても、パフォーマンスやポテンシャルを引き出すために必要なカラダの動きがあります。効率的にカラダを鍛えられるトレーニングを帝京平成大学の西山朋さんに紹介してもらいます。
第5回 荷重時の安定性と稼働性
~スクワットのプログレッションメニュー~
今回からは、自分の体重を支えながら連動してカラダを動かしていくためのトレーニングを紹介します。
前回までは部位にフォーカスした局所的なトレーニングでしたが、実際に走る、跳ぶ、投げる、蹴るなど運動するときは、体重を支えた状態でカラダを動かす必要があります。
紹介するスクワットで、あらゆるスポーツの場面で主となる片足立ちでの動作の安定性や可動性、出力発揮を高めましょう。
【スクワットのプログレッションメニュー】
競技場面でのトレーニング効果の一例
☑走動作の安定
☑スプリントのスタート
☑跳躍動作時の筋力発揮
☑対人競技での方向転換時
☑コンタクト時のボディーバランスの向上
MENU01
プログレッション・オーバーヘッド・スクワット
[回数目安:10~15回]
足を腰幅に開いた状態で座り、手を床につけるようにします。背中を丸めず胸を張って腰を落とすことで、足首と股関節の柔軟性を高めます。
座った姿勢のまま、足をロックした状態で手を上げることで、胸椎が伸展されて肩甲骨を寄せる動きが入ってきます。こうして固定した状態からオーバーヘッドスクワットで立ち上がります。
立ち上がったところから、前屈をします。そのまましゃがむのではなく前屈で腰や下肢背面を伸ばしてから、しゃがんでスタートポジションに戻ります。
ポイント
MENU02
スプリット・スクワット
[回数目安:左右10~15回]
足は腰幅くらいで、前後に約一歩分足を開きます。この姿勢から、下げたほうの脚の膝が床に近づくように、カラダを下ろしていきます。ここから前足の力を使って、スタートポジションに戻るように立ち上がります。
膝とつま先は前を向けて、カラダを真っすぐ下ろしていきます。下ろすときも上げるときも、できるだけ上体は前傾しすぎずに、起こした状態で行いましょう。
ポイント
NG
膝が内側に入る、膝が前に出過ぎる
膝を曲げるとき、内側に入ってしまうと膝を痛めやすいので注意してください。また、曲げた膝がつま先よりも前に出過ぎてしまうのもNGです。大腿四頭筋に強い負荷がかかり過ぎて、膝の故障につながりかねません。膝の曲げ方には気をつけるようにしましょう。
レベルアップ!
ブルガリアンスクワット
[回数目安:左右10~15回]
スプリット・スクワットよりも負荷を大きくしたい場合は、台を使用したブルガリアンスクワットがオススメです。やり方や注意点は基本的にスプリット・スクワットと同じですが、後ろ脚が地面についていない分、負荷が大きくなります。少し負荷がきついという方は、台に乗せた足をつま先立ちにすると強度を下げることができます。
ポイント
MENU03
シングルスクワット
[回数目安: 8~10回 ]
その名の通り、片脚でスクワットを行います。MENU02では片脚にかかる比重を変えているだけでしたが、シングルスクワットは完全に片脚に負荷がかかります。片脚で体重を支える筋力に加えて、バランスをとる力も必要になります。脚を後ろに上げているため、カウンターバランスで上体は前に傾けます。それに伴い、お尻やハムストリングの筋肉にも刺激が入ります。
レベルアップ!
ピストルスクワット
[回数目安:左右3~8回]
手を前出して上体はしっかり起こした姿勢で脚を前に伸ばして片脚でスクワットを行います。大腿四頭筋や体幹に強い負荷がかかります。重心の位置が動くトレーニングのなかで、垂直方向に重心を保つことで体幹の安定性が増します。
ポイント
MENU01では両脚でのスクワット、MENU02では支えがあるなかでの片脚スクワット、MENU03では完全に片脚でのスクワットと、順序立てて負荷を上げています。
トレーナーからのアドバイス
スポーツでは相手とのコンタクトやいろいろな要因で、自分の意図しない方向に重心をコントロールされることがあります。そうしたときにもカラダをうまくコントロールできる力は必要です。
また、片脚で自体重を支えられない、もしくは効率的に筋力発揮ができないという状態は、パフォーマンスの低下だけでなく、急性、慢性問わずケガに繋がりかねません。
今回紹介したトレーニングで、体重を支えた状態での安定性と稼働性を強化し、カラダが連動して動ける状態にしていきましょう。