2019年、関東リーグ1部で準優勝を果たした。同年の全日本大学サッカー選手権大会(インカレ) に初出場すると、抜群の守備と切り替えの速さを武器に決勝進出。惜しくも明治大学に敗れたが、 準優勝と躍進を遂げた。2020年は新型コロナウイルスの影響で多くの大会が中止になったが、 大学サッカー界のトップランナーであることは論をまたない。強さの秘訣を安武監督や選手に聞いた。
選手がやりやすい環境を作り、選手が判断する
桐蔭横浜大学サッカー部
1998 年、風間八宏氏が監督に就任して、本格的に活動を開始する。2004年に八城修氏が監督に就任。2012年、関東リーグ2部で準優勝し、1部昇格を果たした。2018年、安武亨氏が監督に就任。橘田健人、松本幹太など多くのJ リーガーを輩出している。
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安武亨監督「選手のやりやすい環境づくりこそ監督の仕事」
選手がやりやすい環境を作ることが私の仕事です。大事にしているのは、選手自身の判断。自分から成長しようとしなければ、成長はしません。私は、成長しようとする選手を応援するだけ。そういう意味では、うちは選手と監督との距離が近いチームかもしれませんね。
4 年生(キャプテン)遠藤 凌さん「下半身に重点を置いたトレーニング」
浦和レッズユース出身。最終ラインから前線へ正確なパスを送るなど、ビルドアップの起点として活躍する。DF。
関東リーグ1 部でプレーしたいと思い、桐蔭横浜大学に入りました。4 年間でもっとも成長したのはフィジカルです。はじめは「ここでやっていけるのか」という不安もありましたが、年々、強くなりました。サッカーは切り返しの動きが多く、下半身に重点を置いてトレーニングしています。
4年生(副キャプテン)上田駿斗さん「ハードワークできるチーム環境」
ヴィッセル神戸U-18出身。難病指定の潰瘍性大腸炎を患ったが、11月の早稲田戦で先発出場。仲間から祝福された。DF。
チーム環境は、ハードワークできることと、いい意味で上下関係がないこと。学年に関係なく何でも話し合えるし、監督やスタッフとの距離も近い。高校までは他人に頼ることが多かったけど、安武監督からの信頼も得られ、何かを任されることが多くなり、人としても成長できました。
4年生 橘田健人さん「将来は日本を代表する選手に」
神村学園高校(鹿児島県)出身。運動量を生かしたボール奪取と、スピードあふれるドリブル突破が持ち味。MF。
思い出に残っているのは、2019年のインカレ決勝です。チームを勝たせることができず、とても 悔しかった。大学の4 年間で、守備の意識が高くなりました。プロに行ったら少しでも早く試合に 絡み、そこからスタメンに定着していきたい。将来は日本を代表する選手になりたいと思います。
4年生 神垣 陸さん「戦術に縛られず考えるサッカーが武器」
尚志高校(福島県)出身。ボール奪取と安定したパスの供給に優れたボランチ。大学でフィジカルも向上した。MF。
戦術に縛られず、自分たちで考えながらサッカーができるのが最大の強み。パスをつなぐサッカーは自分のプレースタイルにも合っています。筋トレや走り込むことで、当たり負けしなくなりました。今シーズンもみんなで笑って終わりたいです。
チームの取り組み(栄養・トレーニング)
選手の多くが一人暮らし、それぞれが意識して栄養を摂る
寮がなく、ほとんどの選手が一人暮らし。そのため、夕食は行きつけの定食屋を利用する選手も多い。「そこがうちの課題」と安武監督。新型コロナウイルスの影響で部の活動ができないときは、馴染みの割烹料理屋さんで作ってもらった大盛り弁当を選手に配った。基本的に栄養の摂り方は選手次第。「練習が夕方からなので、自炊をするのは時間的に難しい。定食屋に行って、栄養バランスが取れたものを食べることが多いです。朝食は自分で作るので、卵や納豆、豆腐を意識して食べています」(遠藤選手)。
生命線のハードワークは選手一人ひとりの努力から生まれている
安武監督はボールを使ったトレーニングが中心。走るのも、休み明けの練習で行う2 0 分間走だけ。ウェイトトレーニングは、大学のキャンパス内にあるトレーニングルームで選手それぞれが行なっている。中には都内のジムに通っている選手も。「低酸素トレーニングに通っていて、そこで強度の高いトレーニングができています。スプリントしても息切れしなくなり、持久力がついたと実感しています」(上田選手)。桐蔭横浜大の生命線でもあるハードワークは、選手一人ひとりのたゆまぬ努力から生まれている。
4年間、試合に出続ける 全員がチャレンジできる環境づくり
部員は総勢80人。20人ずつ4 つのチームに分かれて練習を行なっている。「全員が4 年間、試合に出場し続けることを意識しています。トップチームに加えて、1 年生がI リーグ(インディペンデンスリーグ)に出場したり、2、3 年生で社会人リーグを戦ったりする。普段の練習は夕方の6 時半から2 ~ 3 時間。だから、うちは工夫して、休憩時間をできるだけ少なくするようにしています。2時間なら2 時間で、全員がビシッとハードにトレーニングしています」と安武監督。目指しているのは、全員がチャレンジできる環境づくりだ。
誰よりも大きな声でムードを盛り上げる安武監督。特に意識しているのが守備とトランジション(攻守の切り替え)だ。「攻撃はセンスや技術が必要だけど、守備は誰でもできること。自分がボールを取るんだ、取り返すんだという気持ちがあるかないかで、守備の迫力が違ってきます」と話す。
※2021年1月15日発行「アスリート・ビジョン#20」掲載。/この記事は取材時点での情報です。