関東大学サッカーリーグでは過去9度の優勝を誇るなど、多くのプロサッカー選手を輩出している国士舘大学。「相手より一歩でも多く、一歩でも速く」をスローガンに掲げ、90分戦い抜くサッカーを信条にタイトル獲得を目指しています。今回は監督、選手それぞれにチーム作りやトレーニングについて伺いました。
10度目のリーグタイトル、3冠達成へ向け、チーム一丸で進む
国士舘大学 サッカー部
1956年創部。部員数192名。過去に全日本大学選手権4回、総理大臣杯2回、関東大学サッカーリーグ9回の優勝を誇る。OBには元日本代表の柱谷哲二を始め、現役選手では塩谷司、新井章太など、多くのJリーガーを輩出している。
部活動を通じて人間として成長してほしい/細田三二 監督
選手であると同時に、部活動を通じて社会性を身に付け、人間として成長してほしいという想いから選手たちの自主性を尊重しています。競技面においては、90分戦い抜く「強さ」と「速さ」を軸にしていますが、今年のチームは動けて走れて、計算のできるチーム。タイトル獲得を目指す今年はリーグ戦でまずどこまで戦えるかがカギになるでしょう。
自主性がチームの力になっている
国士舘大学は体育の教職免許の取得とサッカーに集中できる環境が整っているなと感じ入学しました。自主性が尊重されているのも魅力的なところで、臨機応変な対応が求められる試合にもつながっている。それは代々受け継がれているものだと思います。
飯田雅浩さん 4年 (GK)主将/青森山田高校(青森)出身。2018年度全国高校サッカー選手権で優勝。各年代でキャプテンを経験し、「試合で自分の調子が悪い時も、チームにマイナスにならないよう切り替えている」。全日本選抜、関東選抜Aにも選出
仲間と話し合ってチーム力を高める
チームとしては今、失点は抑えられていますが、得点が取れていない状態。そこは攻撃的な選手である自分を中心に、仲間と話し合っていく必要があると思いますし、個人としても得点力をアップしていきたい。やり続けていけば必ず結果が出るチームだと信じています。
髙橋尚紀さん 4年(MF)副主将/前橋育英高校(群馬)出身。2017年度全国高校サッカー選手権で優勝。国士舘大学では2年生の頃から試合に出場している。副キャプテンを務めるのは大学が初めての経験。
積み重ねが結果と自信につながった
大学で一番成長したと感じるのはメンタル面です。1年時は先輩たちのうまさや強さに圧倒されサッカーをやるのが嫌になったこともありました。でも、食事や筋トレも含めて改善するなかで、徐々に通用するところや“自分”を出せるようになりました。自信につながったと思います。
布施谷 翔さん 4年(MF)副寮長/駿台学園高校(東京)出身。ピッチ上ではもちろん、副寮長として寮生と積極的にコミュニケーションを取ることを心掛け、部員が過ごしやすい環境を整えている。
目標を見据え、課題をクリアしていく
大学では対人などがメインのハードなトレーニングで、課題だったフィジカル面も徐々に克服できています。将来はプロ1年目から活躍し、遅くとも26歳までには渡欧し、最終的に欧州5大リーグでプレーするのが夢。そこに近づけるよう、日々頑張っています。
綱島悠斗さん 4年(MF/DF)副主将/東京ヴェルディユース出身。高校まではセンターバックでプレーしていたが、大学では主にボランチでプレー。副キャプテンとしても積極的に意見を出し、チームを牽引。2021年に全日本選抜、今年も関東選抜Aに選出されている。
CLOSE UP/ 栄養
選手の多くが寮暮らし。練習強度に合わせ工夫も
部員の大半が寮で暮らし、朝食と夕食をきちんと食べているかチェックされている。食事の提供がない昼は学食を利用する。「毎日が勝負なので3食しっかり取ることを心掛けています」(飯田選手)。18時30分からの練習までは時間が空いてしまうため、バナナなどを補給して空腹で練習に参加しないよう補食を摂る選手も。大学1年時に講習を受け、栄養への意識が高い部員たち。「食事と練習の強度が合わせるために、1日5食、たんぱく質と炭水化物を多めに摂り、サプリメントやプロテインも活用している」(綱島選手)。食事によって、カラダの線が細かった選手やケガをしがちな選手は徐々に改善され、戦えるカラダづくりが成功している。
バイキング形式の朝食。大学生アスリートに見合ったカロリーが摂取できるように考えられている。様々なアスリートが暮らす寮の食事は、たんぱく質の量が多めの設定。肉だけでなく、魚もメニューにあり、栄養バランスは抜群だ。トレーニングでの免疫力低下にも配慮された献立になっている。
綱島選手はトレーニング前の補食にお餅を食べる。
CLOSE UP/ トレーニング
課題克服、目標達成のため。綿密なトレーニング計画とケア
「入学当初は大学サッカーのレベルの高さに驚いた」(飯田選手)というトレーニングは、「1対1の対人プレーの練習量が多い」(髙橋選手)メニューを中心に、週5日2時間程度、専用グラウンド内で行われる。また、それ以外にも必要に応じて筋トレも。「週に5日、カラダの部位ごとに分けて行っています」(綱島選手)、「下半身の強化は大事だと思い、めちゃくちゃやりましたね」(布施谷選手)。また、長期間ケガをしていた綱島選手はそれに加えて「自分のカラダの使い方を変えるという意味で」と補強トレーニングも実施。「カラダが疲れているときは入浴後、30分ぐらい行う」(髙橋選手)と、練習前後のストレッチや交代浴などのケア、万全の状態で臨めるよう十分な睡眠も欠かさない。豊富な運動量が必要とされる国士舘大学のサッカーは、選手一人ひとりの努力から生まれている。
綱島選手のトレーニングの様子。選手たちは寮の近くのトレーニングルームや体育学部内にある専門的なスペースで、必要に応じた筋トレを行っている。
CLOSE UP/チーム運営
部員だけで行う自主的なミーティングで。課題と改善点を明確に
チームの良さは「雰囲気が良くて、仲がいいこと」と選手たちは口を揃える。しかし、そこに甘えや惰性はない。部員全員が、“自分がチームを引っ張る”という意識を持ち、ピッチ上では厳しさを持つ。試合翌日には、スタッフを入れず部員たちだけで自主的にミーティングを行っていて、上級生、下級生関係なく本音で反省や改善点を話し合うという。それが実現できるのも、普段からチームの雰囲気がいいからだ。現在のチームの課題は攻撃面。「練習の意味を解釈しながら、自分なりに工夫してやっている」(布施谷選手)、「シュートやパス、クロスなどの最後の1本のクオリティが低い。1日ですぐに改善されるものではありませんが、練習から常に意識を張り巡らせて、1本1本丁寧にやっていきたいと思っています」(飯田選手)と、課題克服に余念がない。
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・vol.42学習院大学 輔仁会アーチェリー部
※2022年7月15日発行「アスリート・ビジョン#26」掲載/この記事は取材時点での情報です。