ウインターカップ2023では、大会記録となる27本の3Pシュートを決めるなど、勝負強さで大きなインパクトを残し、準優勝への立役者となった絈野夏海選手。そんな彼女が目指しているのが大学での日本一。高校生で唯一、日本代表候補にも選出されるなど、今後の活躍がますます期待されている中、さらなるレベルアップに余念がない絈野選手にじっくりとお話を伺いました。
絈野夏海選手のプロフィール
東京医療保健大学 女子バスケットボール部 絈野夏海
かせの・なつみ/2005年5月20日長野県生まれ。小学1年生でバスケットボールを始める。岐阜女子高等学校3年時のウインターカップでは、全6試合で3Pシュートを27本成功させ歴代最多記録を更新。今年1月には日本代表候補に初選出された。東京医療保健大学に進学後、関東大学女子バスケットボール選手権にて新人賞を受賞。
「おごらず謙虚にひたむきなプレーを」
人間性を学んだ高校時代
各カテゴリーで目指し続ける全国の舞台
―バスケットボールを始めたきっかけを教えてください。
「姉のミニバスの練習についていくうちに楽しくなって小学1年の時に始めたんですが、最初の頃は遊んでいるような感覚でした。所属したミニバスでもその後の中学部活も全国大会出場という目標を掲げていたので、自然と真剣に取り組むようになっていました」
―バスケの強豪、岐阜女子高等学校への進学を決めた理由は。
「中学2年のときにウインターカップを現地観戦し、シンプルにここでバスケがしたいなと思ったんです。ミニバスの頃から憧れていた藤澤夢叶さんが進学していたので、先輩を追いかけるような想いもありました」
―強豪校での3年間で成長した点はどんな部分ですか。
「部員全員が3年間寮生活でしたが、アスリート以前に、人間として成長できた部分が大きかったと感じています。安江(満夫)先生から創部当初は体育館が使えず、校庭で練習することもあったと聞きました。私たちが素晴らしい環境でプレーできるのは、歴代の先輩たちが功績を残し、たくさんの方々の協力があったからで、当たり前ではない特別なことなんだと感じました。先生の指導の下、おごらず謙虚にひたむきなプレーをすることの大切さや人間性を学ぶことができました。プレーヤーとしても、得意だったドライブやディフェンスに磨きをかけることはもちろん、中学まではあまり打ってこなかった3Pシュートを武器にすることができたと思います」
―東京医療保健大学への進学を決めた理由は。
「高校時代は日本一を達成することができませんでした。だからこそ次のステップではその目標をどうしても実現させたいと思いました。OGである先輩方もたくさん入学されていた実績もあり、スキルアップにもつながると思って決めました」
自由になったからこそ、これまで以上に
よく考えて行動しなければいけない
―高校までの生活と違いを感じることはありますか。
「プレーでも私生活でも自由度が増した気がします。大学では、何かを選択するにしても自分自身に任されることが多くなり、責任も大きくなりました。すべては自分次第。自由になったからこそ、これまで以上によく考えて行動しなければいけない場面も多くなったと感じています」
日本代表を目指しトップレベルで挑戦する
―今年は日本代表候補にも選出されていますね。
「日本トップレベルでのプレーは一瞬の判断が重要です。私にはそこがまだ足りていないので、ミスが多くなってしまったり、やりたいプレーが出せない場面もありました。そういった点はもっと意識的に改善していかなければと痛感しています」
―代表候補が集まった強化合宿はどうでしたか。
「楽しかったのですが、実はそんなにメンタルが強くないので、心が折れそうな時がありました。でも、応援し支えてくださる方がいますし、このような場所で経験を積めるのは、同年代では今、自分にしかできないこと。その自覚を持つことが必要だと考えながらプレーしていますし、いろいろ挑戦できることはすごくありがたいと感じています」
栄養士さんとこまめに連絡
アプリを使ったコンディション管理
―代表候補としての活動に大学での競技生活と、多忙なスケジュールの中でコンディショニングではどんなことに気をつけていますか。
「食事と睡眠と休息は大切だと思っているので日ごろから意識しています。動くための栄養をしっかりと摂取しないといけないですし、睡眠時間も7~8時間は確保するようにしています。また、高校時代に教えていただいたケアを続けていて、寮の部屋でもカラダの可動域を広げるストレッチを行っています」
絈野選手のコンディショニング
―食事面ではどんなことを意識していますか。
「朝と夜は寮食、昼は基本的には学食です。私は動くと体重がすぐに減ってしまうタイプなので、そうならないようにご飯を少し多めにして調整しています。練習前にはおにぎりを食べたり。たんぱく質や野菜などのビタミン類もしっかり摂ってバランスのいい食事を心がけています」
―栄養士さんに相談することもありますか?
「気になったことは、チームの栄養士さんに聞いています。私の場合はやっぱり体重コントロールに欠かせないご飯の量に関することが多いですね。どれぐらいの量が必要か、この量で足りているかどうかなど。夜食でおにぎりを食べたときは『夜にお腹が空くのであれば、夕食のご飯の量を増やしてみて』などアドバイスをいただいたこともありました。都度、自分の食事内容が適切かどうかを判断してくださいます。体重は毎日こまめに測っていて、チームでは毎日朝晩とアプリ入力して、コンディション管理するようにしています」
―オフはどんなふうに過ごしていますか。
「完全なインドアタイプなんです(笑)。疲れているときは睡眠を多めにとっています。計画は立てずに何をするかそのとき決めますが、家事など身の回りのことをしているうちに時間が過ぎてしまいますね」
今後の目標と同世代アスリートへメッセージ
―今後の目標を聞かせてください。
「チームとして日本一を実現するため、何が必要なのかを継続して追求していきたい。そして、チームを勝利へ導くために努力して、選手としても日々成長したいと思います」
―最後に、頑張る同世代のアスリートたちへメッセージをお願いします。
「競技を続けられるのは若いうちにしかできないことで、ずっと続けられるわけじゃない。だからこそこの一瞬を大切に、自分ができる最大限のことを悔いなくやり切りたいですね」
※「アスリート・ビジョン#34」掲載/この記事は取材を行った2024年5月時点での情報です