2021年夏のインカレロードで、首位と0秒差の2位。トラックでは個人パシュートで2位、オムニア ムで3位と、自転車界のホープとして注目が集まる石田唯選手。寮生活では効率的に時間を使い、競 技と学業をうまく両立しています。自転車のどんなところに心が惹きつけられるのか。大会を目前にし た秋晴れの中、研鑽を積む姿に迫りました。
プロフィール
早稲田大学 自転車部 石田唯
2002 年4 月27 日生まれ。小学校2 年で初めてロードバイクに乗り、京都の北桑田高校に進学。頭角を現すと、高校3 年時「2020JCSPAジュニアサイクルスポーツ大会」の個人パシュートで優勝。インターハイ2連覇を達成した。早稲田大学進学後もJCX 第2 戦シクロクロス幕張大会で優勝するなど、成長を続けている。2021年女子U23 強化指定選手。
スピード感が楽しくて自転車に夢中になる
自転車競技を始めたきっかけ
―自転車競技を始めたきっかけを教えてください。
「小学2 年の頃に、初めてロードバイクに乗りました。地元で小学生の自転車スクールがあり、親に誘われてそこに行ったことがきっかけです。普通の自転車と違って、スピードが出て楽しかったことを覚えています。競争心も生まれて、周りの子と競い合っていました。ただ、当時はソフトボールもやっていて、自転車は習い事というより趣味のような感覚。サイクリングを楽しんでいました」
―本格的に競技として取り組もうと思ったのはいつからですか?
「中学の時は、ソフトテニス部と駅伝部に入っていたんです。ただ、自転車のシクロクロスという種目で優勝できたので、高校に入ったら本格的にロードバイクをやろうと思うようになりました。シクロクロスはオフロードで行われるのですが、難しいコースだとテクニックが必要になり、そこで勝負が分かれるので面白いですね。ロードレースの魅力は、他の競技では出せないスピード感。また、センスは関係なくて、努力した分だけ結果がついてくるのも魅力だと思います」
―北桑田高校3 年の時は、インターハイの代替大会で優勝(2km 個人パシュート)、2連覇を果たしました。
「高校の自転車部は男子選手が多く、全国から強い人が集まっていました。練習から頑張って男子についていく感じだったので、それで強くなれたんだと思います」
少数精鋭の早稲田大学を選択個人練習がメインに
石田選手の練習スケジュール
―早稲田大学を進学先に選んだ理由は何ですか? また、大学に進学して高校までと練習環境は変わりましたか?
「早稲田大学は少数精鋭で、部活だけでなく勉強も頑張っているところが、進学を決めた理由です。練習環境で変わったのは、高校まではみんなで練習していたけど、大学では個人練習がメインになったこと。ウエイトトレーニングは高校でもやっていましたが、大学では学生のトレーナーがついて細かく指導してくださいます。そこがパフォーマンスにもつながっているのだと思います」
―練習はどれくらいやっているのですか?
「月曜日がオフで、それ以外は練習です。火曜日と金曜日にウエイトトレーニングをしています。教職の授業も取っているので、春学期は特に忙しかったですね。先輩からアドバイスをいただいたり、朝起きて勉強することで効率的に時間を使っていました。秋学期は1 か月の契約でアルバイトもしていたのですが、なかなか時間のやりくりに苦労しました」
全力で漕ぐために必要な背中を中心に強化する
石田選手のカラダづくり
―自転車競技の選手にとって、カラダづくりで大切なことは何ですか?
「私のようなロードの選手は、距離を乗り込むことが基本になります。また、強度を上げるためにインターバルトレーニングをするなど、レースに向けて調子を上げていくことも重要です。中長距離の選手はスタミナが重要ですが、最後のスプリント勝負はパワーも必要になるので、瞬発力を高めるためのウエイトトレーニングも欠かせません。例えば、ワットバイクやパワーマックスというトレーニング機材を使って「6 秒、思い切りもがく(全力でペダルを漕ぐ)」といったトレーニングをします。特に強化しているのは、体幹、太もも、背中です。いろいろな要素が大切ですが、背中はもがくときに使うのでよくトレーニングします」
―栄養面で気をつけていることはありますか?
「カロリーに関しては、距離を乗れば消費されるので、それほど神経質にはなっていません。でも、揚げ物は控えめに、夕飯のお米は活動量に応じて調整しています。寮生活なので、バランスが取れた食事はできていると思います」
―エネルギーを消費するロードレースは補給食も欠かせないと思います。石田選手はどういうものを選んでいますか?
「基本的に、食べやすくて吸収が早いゼリータイプを選んでいます」
目標とする大会を設定して、そこに調子を合わせていく
年間の目標と卒業までに達成したいこと
―年間の目標はどのように設定していますか? また、大学4 年間で達成したい目標があれば教えてください。
「人によって大事にしたい大会は違いますが、多くの大学生がインカレを重要視していると思います。私自身、目標とする一つの大会を設定して、そこに調子を合わせていく感じで取り組んでいます。卒業までの目標としては、教員免許を取得すること。自転車では、インカレで優勝したいですね。競技をいつまで続けるかはわかりませんが、将来は体育の先生を目指しています。大学4 年のときにパリ大会があるので、出場できるように頑張ります」
学生アスリートにメッセージ
―学生アスリートにエールをお願いします。
「学生アスリートだからといって、スポーツだけをしていればいいわけではありません。勉強もしなければいけないし、アルバイトをしている人も多いと思います。だけど、限られた時間の中で自ら考え、トレーニングをすることで、その先の結果につながってくる。私自身も時間を大切にして、考えながら取り組んでいきたいと思います」
※「アスリート・ビジョン#24」掲載/この記事は取材を行った2021年11月時点での情報です