どんなスポーツをやるにしても、パフォーマンスやポテンシャルを引き出すために必要なカラダの動きがあります。効率的にカラダを鍛えられるトレーニングを帝京平成大学の西山朋さんに紹介してもらいます。
第3回 肩甲骨の可動性と安定性
肩甲骨は上腕を動かす土台です。また上肢と体幹の連結器であり、下肢から体幹へ伝わってきた力を、上肢に伝える重要な役割を担います。
肩甲骨を上手に使えると、特に上肢を挙上して行う運動(投げる、打つ、スイングする、など)の機能を高めることができます。
各メニューの条件付けの中で、肩甲骨を意識してトレーニングします。動かしにくい方向に注意度を高め、カラダのアンバランスも解消しましょう。
MENU01
スキャプラ・プッシュアップ
[回数目安:左右15~20回]
スタートポジションは腕立て伏せの姿勢。頭から足までを一直線の状態にします。カラダを下げるときに、肘は曲げずに肩甲骨だけを動かして寄せます。肩の高さを変えないことがポイントです。
手をつく位置は肩の真下が理想ですが、少し下の位置でもOKです。手をつく位置が上になると、動かす際に肩がすくみやすくなってしまうからです。肩甲骨を下から絞り上げるイメージで押すと前鋸筋を使うことができます。
上腕の動きには肩甲骨と前鋸筋が相互に関係しています。このメニューでは、重力に対して肩甲骨を前にスライドさせることで、前鋸筋の活動性を上げます。前鋸筋は、肩甲骨を胸郭にフィットさせる役割を果たす筋肉です。肩甲骨の安定性の低下は、力の伝達効率の低下に繋がります。肩甲骨を前鋸筋で安定させると、体幹から上肢への力の伝達効率が高まります。
NG
肘が曲がる・肩がすくむ
あくまでも動かすのは肩甲骨のみです。肘が曲がってしまうと、肩甲骨をうまく寄せられません。この運動で肩甲骨が動く方向は前後です。肩がすくむという動きが、肩甲骨の動きを制限するので注意しましょう。
MENU02
サジタル・スキャプラローテーション
[回数目安: 前後左右5~8回 ]
足を腰幅くらいに開き、真っすぐに立ち、肩甲骨を矢状面(サジタル)で、回旋させます。
立ち姿勢から肩だけを動かします。肩を目一杯前に突き出す→上に上げる→上げたまま後ろに引く→引いたまま下ろして元に戻す。これを繰り返していきます。丁寧かつ滑らかに、できるだけ大きな円を描くように動かしましょう。
カラダの正面から奥にかけての矢状面(サジタル)での肩甲骨の回旋運動は、肩甲骨と複数の筋肉を協調させながら様々な方向に動かすことで、前後上下とすべての方向にまんべんなく肩周りを刺激して、可動性を高めることができます。
NG
反対側の肩が下がる・カラダがねじれる
肩を動かすとき、反対の肩が動かないように注意しましょう。肩は平行を保つのがポイントです。また、カラダは必ず正面を向け、傾いたりねじれたりしないように注意。動かすのはあくまでも肩甲骨だけです。他の部位が動くとトレーニングの効果が低くなってしまいます。動作は速さではなく、大きな動きでスムーズに行うことにフォーカスしてください。
MENU03
コロナル・スキャプラローテーション
[回数目安: 10~15回 ]
カラダを前後に分ける前額面(コロナル)で、肩甲骨を動かします。うつ伏せに寝て、胸と額を床につけた状態で、両手は腰の後ろにおきます。ここから頭へ向かって、できるだけ大きな円を描くように腕を回していきます。肘は浮かせて高い位置をキープしましょう。
上からボールを投げる競技などは、肩甲骨をうまく寄せられないと肘にストレスがかかり、故障の原因になります。腕を頭へ動かす時に、肩甲骨を寄せることを意識しましょう。
ポイント
重力に抗して肩甲骨で上肢を支え、より強く筋力を働かせながら、可動域をつくります。うつ伏せ寝で負荷は上肢だけにかかるので、肩甲骨により意識を集中することができます。動かすときに上体が起きて胸が上がると、肩甲骨以外の場所も動いてしまうので、頭は上げないようにしましょう。
レベルアップ!
三点支持で体幹にも負荷をかける
ベアのスタートポジションから片手を離して反対側の肩にタッチ(左右)。四点支持が一つ減ると重心が移動を実感しやすくなります。そうしたなかでバランスが崩れないようにカラダをコントロールしましょう。
肩甲骨は自在に動かすことができて、その上で安定させることが大事です。紹介したエクササイズで肩甲骨の可動性と安定性を高めていきましょう。次回は、股関節のトレーニングを紹介します。