心とカラダを整える食事メンテナンス【栄養のプロに聞いた】

ベストコンディションで試合期を制す!

ダメージの大きい試合期は疲労を溜めない食事を徹底

肉体的なダメージが大きく、心身に大きなプレッシャーがかかるこの時期は、エネルギーをしっかり蓄え、いろんな栄養素を効率よくカラダに吸収することがとても大切です。ケガや病気などカラダにちょっとした違和感もない状態で本番に臨むために、自分にとって必要な食事を見極めることも、ベストコンディションを保つカギとなります。

疲労回復に役立つ!栄養補給の3大ポイント

試合期は心身ともにオーバーワーク状態。食事からメンテナンスする場合、さまざまな角度から「何をどのように食べるか」を考え、ダメージからの回復に努めよう。

自律神経

試合本番の緊張によって、交感神経が高まっています。すると、胃腸がうまく働かなくなり、消化・吸収の機能がダウン。通常期よりも消化に時間がかかり、食べ物の栄養素をうまく吸収できなくなります。この点を自覚して、カラダへの負担を減らす食事や生活のリズムを考えましょう。

カラダ

試合後のカラダは、エネルギーが消耗して、まさに空っぽの状態。また、筋肉や靭帯にも負荷がかかり、炎症などダメージを起こしています。これらの状態から回復するために「必要なものを補充する」ことが大事!

試合期は「脱水」にも注意!

実は試合期は、脱水症状も起こしやすいのです。理由は高い運動強度と緊張感による
発汗の増加、そして試合に集中するあまり水分補給を忘れてしまうから。意識して水
分を摂りつつ、汁物や果物といった食事から水分を補給することも忘れないこと。

果物は水分が多く、炎症から回復する抗酸化成分やビタミンも豊富。手軽に摂れるみかん、キウイフルーツ、バナナで十分補給できます。特にバナナは発汗で失われるミネラル、たんぱく質を合成するために必要なビタミンB6も多くリカバリーに◎。

腸内環境

筋肉と同じように、内臓も試合後は疲労し、消化・吸収がしにくい状態です。胃腸の負担を出来るだけ抑えつつ、疲れていても消化吸収できる食事を心がけましょう。

食事は「おいしそう」と感じることが大事

意識が高いアスリートだからこそ、効率的な栄養補給に着目しがち。実は食事で大切なことはそれだけではありません。大好きな食べ物を見て、匂いを嗅いで「おいしそう」と感じることで、胃や腸の働きを促すだけでなく、リラックス効果を高め、自律神経を整えることにもつながるのです。

メンタル

本番前の緊張や、試合での気持ちの浮き沈みなど、メンタル面での変化が多くなると、カラダや腸にも影響が出ることがあります。食欲が落ちて、エネルギーが補給できず、疲労感がさらに溜まるといった悪循環になりがち。こうした事態も起こりうることを、あらかじめ知っておくことが重要です。

何をいつ食べる?これって大丈夫?
アスリート食事クイズ

Q1.試合でパワーを発揮するために最適なメニューは?

脂質の少ないたんぱく源&炭水化物でパワーをチャージ

試合前日はしっかり食べて、しっかり寝ることが大事。消化に時間がかかる脂質や繊維質を極力控えて、たんぱく質&炭水化物でエネルギーをチャージ。しゃぶしゃぶは余分な脂が落ちるので◎。締めにうどんや雑炊、餅をトッピング。質のよい睡眠のためにも、内臓への負担を減らしましょう。

答え:③

試合前日にオススメの食材&メニュー

鍋物、豚しゃぶ(バラ肉よりはロース肉がよい)
※うどんもきつねや月見、かきたまなどはOK。天ぷらやカレーうどんは脂質が多いので避ける。

●たんぱく質 :白身魚、鶏むね肉、鶏ささみ肉
●炭水化物 :うどん、白飯、餅

Q2.試合後の最初の食事、食べるならどっち?

試合後のエネルギー源は油分や繊維質の少ないものを

試合期の場合、エネルギーの回復が重要。そのためには、エネルギー源の炭水化物、そして枯渇した水分をしっかり補給しましょう。試合後は胃腸も疲労困憊しているため、脂質や繊維質が少ない、消化吸収のよいものを最優先で選ぶべし。疲労感が強く食欲がわかない、食事の準備をするのも辛い人は、鍋焼きうどんや餅を入れた鍋物のように、炭水化物、たんぱく質、ビタミン類とすべての栄養素を一品で摂れるメニューがオススメです。

●OK食材&メニュー :白飯、うどん、そば
●NG食材&メニュー:玄米・雑穀米、オートミール、パスタ料理、チャーハン、ラーメン、焼肉

答え:①

試合後すぐに食事が摂れない人は…

試合から食事まで3時間以上空いてしまう人は、脂質が少なく消化のよいおにぎりやバナナ、エネルギーゼリーなどの補食でエネルギー補給をしましょう。これを摂るか摂らないかでも、疲労からの回復度合いは異なります。

Q3.ダメージを回復したいとき、効率的なたんぱく質の摂り方は?

試合のあとでも、朝・昼・晩にできるだけ偏らない量のたんぱく質を摂る

「プロテインは運動後30分以内に摂ったほうがいい」と言われるが、筋合成は、24〜48時間持続します。交感神経が高まり、胃腸が上手く働かない試合後を狙うより、朝・ 昼・晩とできるだけ量が偏らないようたんぱく質を摂る ほうが筋肉のダメージの回復はうまくいきます。

答え:①

Q4.試合期の疲労回復をサポートしてくれるのは?

発汗で失った水分やビタミン、ミネラルを温かい汁物で補給、野菜やたんぱく質も追加

試合期は生ものを避けるのが鉄則。生の魚介類や生野菜は消化が悪いうえ、特に魚介類は下痢や食中毒のリスクもあります。一方、温かい汁物は発汗によって失われた水分、ビタミン、ミネラルを補給できます。ハムを入れたミネストローネなら、疲労回復に必要な野菜とたんぱく質が一品で摂れます。コンビニエンストアなどで売られている即席の豚汁など具だくさんのスープでもOK です。

答え:②

Q5.試合後、積極的に摂るとよい野菜は?

抗酸化成分の多い野菜を選ぼう。ポリフェノールほかβ-カロテンやビタミンCも◎

筋肉の炎症を抑え、損傷からの回復を考えた時、積極的に摂りたいのがポリフェノールなどの抗酸化成分です。色の濃い野菜に含まれ、色の違う野菜には種類の異なるポリフェノールが含まれるので、赤、緑、黄色と色とりどりの野菜を摂れると良いでしょう。もちろんキャベツやもやしも栄養はありますが、少しでも早くリカバリーしたい時は、色の濃い野菜を優先しましょう。

答え:①

Q6.試合翌日の食習慣で素早い回復のために守りたいことは?

オフの日でも生活のリズムや食事のバランスを大きく変えない。朝食もしっかり食べる

試合翌日はオフになることが多く、授業がないと昼まで寝てしまう人も。睡眠時間の確保も必要ですが、2時間以上の朝寝坊はリカバリー的にはNG。オフの日に生活のリズムが乱れたり、食事のバランスが崩れたりすると、リカバリー不十分でケガのリスクが高まります。朝食は自律神経を整え、体内時計を正常にする役割もあります。欠食をなくし、生活のリズムを大きく変えないようにしましょう。

答え:①

柴崎真木さん(管理栄養士)柴崎真木さん【管理栄養士】
アトランタ五輪を目指す競泳選手への食事アドバイスをきっかけにスポーツ栄養士へ。現在はジュニアからトップアスリートまで、さまざまなスポーツの栄養サポートに携わる。ロンドンでは競泳、男子柔道の日本代表チームの栄養サポートを担当。

※2022年10月15日発行「アスリート・ビジョン#27」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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