よりよい競技生活を目指して!学生アスリートのための心のコンディショニング【メンタルのプロに聞いた】

春は新入生が加入し、新たにチームづくりをスタートする季節です。選手個人がよりよい状態で競技を行い、なおかつチーム力を向上させるために必要な心のコンディショニングについて、スポーツメンタルコーチの鈴木颯人さんに聞きました。

スポーツ競技とメンタルの関係

競技に取り組むことで得られる心理的メリットとは?

まず目標(=ゴール)に向かい、頭の中でプロセスを描いて練習に取り組み、フィードバックをしながら改善していく力、「目標達成力」が身につきます。そして、その過程では、常に頭で考え、冷静沈着であることも必要なため、客観的な「判断力」も養われます。さらに競技活動においては、先輩や後輩、仲間、監督、コーチとの意思疎通が求められるので、「コミュニケーション能力」も高まるでしょう。

アスリートがメンタルを整えるために必要なことは?

「健全な精神は健全な肉体に宿る」という格言の通り、まずは健康状態を保つことが先決です。動けるフィジカルと身につけた技術がメンタルを安定させ、不安や悩みを消す。それが好成績につながるのです。一人暮らしや寮生活の場合、環境が整わない場合もあります。たとえば、補食を活用する、寝具を変えてみるなど、自分で調整できる部分に目を向け、日々の 食事・睡眠など健康管理を意識していきましょう。

思うような結果を引き出せる人は、何が違うのか?

思うような結果を引き出せない人ほど、過去の失敗や未来の不安に囚われてしまいがちです。過去の失敗も未来の不安も、自分ではコントロールできないもの。抗えないものには見切りをつけて、今(現在)に集中する。できていることにフォーカスできる人は自然とうまく行くのです。

メンタルを安定させる考え方や習慣は?

認知的再評価(リアプレザイル)という方法を用いて自分の心と対話することです。認知的再評価は、文字通り、物事の見方を変え同じ身体反応を認知的に再評価することで状況をポジティブに変化させる効果があります。たとえば、不安の感情に対して、「もう少し準備をしたほうがいいというサインかも」と自分の言葉にしてみると、不安も自分にとって意味のある感情なのだと納得できます。

始めよう!心のコンディショニング

心のコンディションの整え方、メンタルを安定させるためのちょっとしたコツやポイントをまとめてみました。シンプルなものばかりなので、今すぐ始めてみませんか。

1.チーム力向上

メンバー同士の関係の質を高めるとチーム力もアップする

根本的に心理的安全性を高めることが、チーム力向上につながります。心理的安全性とは、自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態を指します。まずお互いに尊重し、一緒に考えることから始めて、心理的安全性を高めていきましょう。そこで紹介したいのが「組織の成功循環モデル」です。心理的安全性を高めるために「関係の質」を意識的に向上させる必要性を強調しています。これによりグッドサイクルが生まれ、チーム力向上にもつながるのです。

組織の成長循環モデル

2.練習後の振り返り

一日一行、その日に気づいたことをノートに書きだす

練習後、その日の気づきをノートに書くと、ポジティブな気持ちで振り返ることができます。ただし、スマホのメモ機能などはNG。ノートに文字を書くという作業が、思考の質を高めメンタルに好影響を及ぼします。翌日は同じことを書けないのがルール。一日一行からでも構わないので、毎日書くことを習慣にしましょう。

3.マインドセット

遊びも取り入れ脳全体をうまく使えるようにする

真面目にそればかりになっている人は、偏った脳の使い方しかできていません。脳全体をうまく使えるようになる最たる例が、遊ぶことです。練習に取り組む一方で、アップ時にレクリエーションを行うなどうまく遊びを取り入れると、脳の色々な部位が刺激され、巡り巡ってメンタルの維持につながります。

4.気持ちの切り替え

やや速いペースでの散歩はリフレッシュやリセットに効果的

気持ちの切り替えにおすすめなのが散歩です。散歩のリズム運動が、メンタルの維持に効果があることは広く知られています。行き詰まったなと思ったら、5分でも10分でもいいので、スマホは置いて外に出ましょう。できれば、普段よりも速いペースで歩くとより効果が得られます。

5.集中するための目印

心が揺らいだときに見るフォーカルポイントを見る

心が揺らいだとき、フォーカルポイントを決めておくと、気持ちが切り替わり集中しなおすことができます。人は、遠くを見ると交感神経が優位になりやすく、近くを見ると副交感神経が優位になりやすいといわれています。自分の気持ちを落ち着かせるために、見るべき場所を予 め決めておくのもよいでしょう。

鈴木颯人さん
一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会代表。「心から競技を楽しめる人を増やすこと」を信条に言葉を大切にするスポーツメンタルコーチとして活動中。教え子には世界大会優勝、プロ野球ドラフト会議指名、オリピック出場選手も。『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』(KADOKAWA)など著書多数。

※2025年4月15日発行「アスリート・ビジョン#37」掲載/この記事は取材時点での情報です。

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