
昨年は北信越大学サッカーリーグ優勝、総理大臣杯とインカレで準優勝と、近年大きな旋風を巻き起こしている新潟医療福祉大学男子サッカー部。選手の個性を見逃さず、細かな指導でメキメキと成長してきました。地方の新鋭チームがなぜここまで強くなったのか。その秘密を探ります。
競技力と人間力の向上を通じて、全国制覇を目指す
新潟医療福祉大学男子サッカー部

2005年創部。北信越大学サッカーリーグでは2017年より連覇を継続。2024年に総理大臣杯で準優勝。2022、2024年に全日本サッカー選手権大会(インカレ)で準優勝を果たした。セカンドチームは北信越フットボールリーグ1部、サードチームは同2部に所属。多数のJリーグを輩出している。
競技を通じて人間力を育む

昨年のインカレで準優勝しましたが、選手もスタッフもまだ満足はしていません。大学日本一を目指して必要なところは改善し、積極的にブラッシュアップしていきたいと考えています。個人の競技力やスキルはもちろん、チームとしての規律や礼儀など、人間力を養っていく上で最終的にサッカーのベクトルを合わせていくことが大切だと考え、指導しています。

佐熊裕和 監督 /日本体育大学出身。2013年まで27年間桐光学園で監督を務めた後、中国の梅縣客家足球倶楽部の指揮を執った。2014年に帰国し、新潟医療福祉大学男子サッカー部の監督に就任した。
今度こそ、得点王そして大学日本一を

入学当初は1つ年上の先輩にフィジカルで潰されることも多く苦しみましたが、フィジカルが追いついたことで互角に戦えるようになりましたし、切り替えのスピードや強度も高くなったという手応えもあります。今年は昨年に続き北信越リーグでの得点王、そして何としても日本一を実現させたいです。

吉田晃盛さん 4年生/九州国際大学付属高校出身。ポジションはFW。昨年の北信越リーグでは18得点で得点王に輝いた。今年は「全国大会で得点王になる」のが目標。プロ入りも視野に入れている。
自分が得た経験を周り仲間と共有していく

トップチーム30人をかけた生き残りはまさに自分との戦いです。1年生からトップに関われたのは大きな財産になりましたが、今年も先輩たちの姿を見ながら、その経験を周りの選手に還元していくことも大切な役割の一つだと思っています。

白石蓮さん 2年生 /尚志高校出身。ポジションはDF。精度の高い左足のキックでゴールを演出するサイドバック。昨年は1年生ながらも多くの試合に出場し、守備の要としてチームに貢献した。
選手のコンディショニングを注視する

ウォーミングアップとクーリングダウンや、ケガを予防するためのテーピング、ストレッチの指導、ケガをしている選手の復帰までのプログラム構成、リハビリやコンディション調整に付き添うことが私たちトレーナーの主な業務になります。

村椿侑哉さん 4年生(学生トレーナー)/水橋高校出身。高校まではプレイヤーとして活躍。アスレティックトレーナーの夢実現のため大学では学生トレーナーに。主な仕事はケガのケア、ストレッチの指導、リハビリプログラムを組むことなど。
選手がサッカーに集中できる環境を整える

日ごろから意識しているのは、選手がサッカーに集中できる環境作りと選手たちの自主性を促すため、必要以上は手を出さないことです。それが個の成長、チームの強化につながると思っています。今年は大学最後の年。悔いなく終えられるよう、全力で取り組んでいきます。

栃澤風香さん 4年生(主務)/新潟商業高校出身。高校では硬式テニス部に所属。新潟のサッカーを盛り上げたい、いずれは新潟でサッカーの仕事に関わりたいと新潟医療福祉大学に。「選手から信頼される主務」を目指す。
CLOSE UP/ 栄養
寮生活をする1、2年時で意識を高め
一人暮らしになってもしっかり自己管理
寮生活の1、2年生はトレーニング後、30分以内に食事が摂れるのが大きなメリット。3年生からは一人暮らしとなるため自己管理能力も身につけておきたい。寮生も土日や昼食は自炊することも。「寮で食事が出ないときは、スマホでレシピを調べながら作っています」(白石選手)。吉田選手は三食のバランスを重視しつつ、「体重が増えにくいので4~5食摂っています」と分食で工夫している。特にシーズンの始めは体重の増減が大きいため、「トレーニングがきつくてもしっかりと食事を摂るようにしています」(白石選手)。試合前日は緊張感も高まりストレスがかかりやすい。食べ慣れていないものや、消化吸収に時間がかかる脂肪分は控えるなど徹底。「今後は複数回の栄養講習会の開催も検討している」と佐熊監督は話す。

一人暮らしの吉田選手はバランスよく栄養摂取するために主菜、汁物、副菜を必ず食べることを意識。

ある日の夕食。ご飯、みそ汁、アジフライ、メンチカツ、肉じゃが、とろろ。寮では朝と夕食が提供される。
CLOSE UP/ トレーニング
GPSを利用したデータ分析で
選手の課題克服やパフォーマンス向上に活かす
専門スタッフによる指導でトップ、セカンド、サード、1年生中心のフォースの4つチーム編成で、大学サッカー、社会人リーグを戦っている。1週間、1カ月、3カ月でメニューが組まれ、曜日ごとにフィジカル、戦術、ゲームなどを実施。選手の疲労度やケガの状態を見ながらメニューを調整する。「コンスタントに試合に出ている今はケガのリスクが怖いので、筋トレは週に2、3度に抑え、トレーナーに相談しながらストレッチなどケアを重視しています」という吉田選手は、主に懸垂と体幹で腕や肩を鍛えるトレーニングをしている。昨季は試合時に選手がGPSを装着し、心拍数、最大速度、スプリント回数など、プレー中の推移を計測した。今冬の強化期間でも採用し、可視化することで各選手の課題克服やパフォーマンス向上に活かす。

敷地内にあるトレーニングジム。

敷地内にあるトレーGPSをつけ、タブレットからリアルタイムで数値を確認、数値を集計してデータ化する。
CLOSE UP/ チームづくり
医療系総合大学のメリットを
最大限に活かした充実のサポート
看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ医療系総合大学というメリットを最大限に活かし、各学科と連携。ケガをしたときはフィジオセラピストの指導をあおいだり、2023年に新設された鍼灸健康学科の先生から針の治療を受けたり、疲労回復に活用している。健康栄養学科の先生たちからは食事のアドバイスをもらうことも。食事の写真を撮って送り、栄養士の指導を受ける選手も。学内には様々な研究室が揃い、選手たちは授業の合間などに検査や相談することができる。昨年春には大学構内に新グラウンドが完成。クラブハウス、寮なども徒歩数分圏内と、サッカーに集中できる環境が整っている。

積極的なコミュニケーションは欠かさない。

練ケガ予防のテーピングやストレッチの指導なども、トレーナーの大事な仕事のひとつ。

5~6人いる主務とマネージャー。広報業務では主にSNSを担当。撮影や試合結果の更新、ハイライト映像の動画編集などを行う。
※2025年4月15日発行「アスリート・ビジョン#37」掲載/この記事は取材時点での情報です。
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・vol.61中央大学 バレーボール部(男子部)
・vol.62専修大学 男子バスケットボール部